(チルクサンダー×ミチル)「おもちゃにしたらメッ!」
チルクサンダーは十数年ミチルの全てを覗き見してきた。
そんな彼がミチルについて知らないものはない。そう思われていた。
だが、それは驕りなのかもしれない……
「むむー」
ミチルが何やら唸っている。チルクサンダーは小さな背中に話しかけた。
「どうしたミチル」
その手元を覗くと、ミチルは白い布のようなものを握りしめていた。
「パンツなど握って、困っているのか?」
白くて小さい布。イコール、パンツ♡
それはラブラブ生活の中では、ごくありふれた思考だった。
「パンツじゃないよ! これはマスク!」
ミチルは即座に否定する。耳まで赤くして焦りながら。まったく可愛い、とチルクサンダーは思った。
「マスク……?」
しかし、それはそれ。チルクサンダーにはミチルの持っている白い布が何なのかわからない。
マスクと言われてもさっぱりだった。
「うーんとね、風邪引いたりした時に使うんだよ」
「ミチル! 病気なのかっ!?」
「違う。埃とか花粉から守ったり……」
「ミチルには『鉄壁カレピ♡』の我がおるぞっ!」
「うん、そうだね。後は単にオシャレに使ったり……」
「……?」
悲しいかな、真っ黒異空間育ち(?)のチルクサンダーには、マスクでオシャレをするという思考が備わっていない。
「ほら、こうやって口元を隠すんだよ」
試しに着けて見せても、チルクサンダーは首を傾げて不思議がっていた。
「何故、そんな事を……?」
「だから……いや、やめた。繰り返すだけだから」
ミチルはマスクをしながら、目を細めている。その顔をしげしげと見つめながらチルクサンダーは呟いた。
「ふむ、一種の防具か。しかしやわ過ぎるな……」
「チルくんも着けてみる?」
「良いのか!」
「うん、もうひとつあるから」
そうしてミチルが新品のマスクを取り出すと、チルクサンダーの期待に満ちた声音が一気に冷めてトーンダウン。
「ミチルの着けているのが良いのに……」
「マスクは貸し借りしないの!」
「ミチルの使用済みが良いのに……」
「どこで覚えた、そんな言葉!」
チルクサンダーへの悪影響を憂いたミチルだったが、とりあえずそれは置いといて。
魔族風イケメンのチルクサンダーがマスクをしたら、どんな風にイケているのか。ミチルはそんな好奇心に負けた。
「はいっ、チルくん、着けてみてえ♡」
「ミチルが言うなら……」
上目遣いの猫撫で声でお願いされたら、チルクサンダーには抗える術はない。新品のマスクをその麗しい口元へ装着する。
「きゃあああ……!」
ミチル、大歓声&大歓喜。
「ええー、ちょっとぉ、お忍び芸能人みたいじゃーん♡」
魔族風改め、爆イケスーパーモデル風の姿が爆誕。ミチルはキャッキャうふふとはしゃいで跳ねる。
「ゲーノージン、とは?」
世間知らずで首を傾げる様も可愛くてギャップ萌えである。
ミチルはウヒョウヒョと興奮していた。
「あっ! チルくん、ちょっと屈んでえ」
「うむ」
爆イケマスクメンを目の前に、ミチルが取り出したのは黄色いカラーペン。
マスクの上からキュッキュッキューの、キュー。
「出来たああ♡ チルくんにアヒル口ぃい♡ 可愛すぎて滅するぅうう!」
完全にマスクをおもちゃにしています。良い子は真似しないでくださいね。
「なるほど、そういう遊びか。ではミチルにも描いてやろう」
「ええー♡ そうー?」
チルクサンダーが握ったのはピンクのカラーペン。
「ミチルはやはり、にゃんこ♡だな」
キュ、キュッ、キュ……
「うふっ、ふふ、ん……っ」
だがしかし。
「うふん……」
ミチルは極度のくすぐったがりです。
「あふん、くすぐったい♡」
無意識にそういう声が出ます。
「ふうん……♡」
チルクサンダーの〇〇〇がムラァ!!
「マスクなど、邪魔だあァア!!」
マスク剥ぎー!
ついでに〇〇〇も剥ぎー!!
「にゃあああー!」
この後のミチルがどうなったかは省略しますが。
教訓。
医療用具はおもちゃにしたらダメですよ。




