(アニー×ミチル)「おかゆは闇のあじわい」
季節の変わり目にご注意ください……
さらに「世界」の変わり目にもご注意ください……
「ゲエッホ、えっほ、ゴッホ!」
いつもは可愛らしく「ハックション」とかやっているのに、今日はダミ声で盛大な咳き込み。
だって、ホンチャンなんだもん。
本当に風邪引いちゃったんだもん!
「ばーくっしょん!!」
ミチルの盛大なセキのようなクシャミのような叫びが部屋中に轟いた。
転移しちゃう!? とかの心配はご無用。
ミチルは無意識のうちに、転移する「くしゃみ」と生理現象の「クシャミ」を使い分けている。
「ぱーかっしょんッ!!」
珍妙なクシャミを連発するミチル。だがそれに応えてくれる者がいない。
だからミチルは寂しくてクシャミがますます珍妙化する。
「こんぐらっちゅれーしょんッッ!!」
ずずず……(←鼻水の音)
寂しいよお、寒いよお、辛いよお……
「ただいま、ミチル!」
「バビー!(注 アニー)」
買い物袋を引っ提げて、やっとアニーが帰って来た。
ミチルは人恋しすぎて涙が出そうになっている。
「具合はどう?」
真っ先にミチルの寝ているベッドに来てくれるアニー。スパダリ、尊い。
「はぐ、ふぁのね、ぼぼいたひ……(注 喉痛い)」
喉が痛いのは当たり前。盛大なクシャミとセキを繰り返したからだ。
「ああ、可哀想に。ミチルの可愛い声♡がカスカスだねえ」
「ふぁにー……(注 アニー)」
「ちょっと待ってて。まずはあったかいハニーミルク、作ってあげる」
「ふぅん……♡」
ミチルの熱っぽいおでこを撫で撫でした後、アニーはキッチンへ向かう。
牛乳を温めて、そこにたっぷりのハチミツ。念入りにかき混ぜて、ミチルに持って来てくれた。
「はい、美味しいよ」
「うん……あ、っつ♡」
はふはふ、ふうふうと冷ましながら、ミチルはマグカップから少しずつハニーミルクを飲んだ。
あまくて、あったかくて、やさしい……
アニーみたいなハニーミルクをミチルが全部飲み干す頃、新たに食事が運ばれてきた。
「ミチル、おかゆ? っていうの、作ってみたんだけど」
「ま、マジ!?」
アニーが持って来てくれたのは、ザ・病人食のスター、おかゆ様だ。
ミチルは風邪なんか吹き飛びそうなくらいの勢いで、その手元を凝視した。
「そう。奇跡的にコメが買えてね、ショーユは買えなかったから、塩味なんだけど、ネギと卵は入ってるよ」
アニーの腕の中からほかほかのおかゆ様が湯気をくゆらせて、ミチルに微笑んでいるようだった。
「たまごのおかゆ(ネギ入り)!? 一番好きなやつぅう!」
アニーと暮らしていると年に数回しか米は食べられない。ルブルムでは流通していないからだ。
これを手に入れるために、アニーは街中を駆けずり回ったに違いない。
それなのに、オレときたら。
アニーが帰ってこない寂しさでわざと咳き込んで、クシャミして心配かけて。
「あああ、にいぃい……」
ずずず……(←涙を堪える音)
ワガママでごめんなさい……
「ミチル、泣くほど辛いの?」
アニーがますます心配そうな顔をして覗き込んだ。
ミチルは首をぶんぶん振って、出来るだけ元気に笑おうとする。
「違うよぉ、嬉しくてぇ、嬉しいんだよぉ……」
「良かった。おコメ、大好きだもんね♡」
「そうだけど、そうじゃないよぉ……」
アニーがオレのことだけ考えてくれる。
一生懸命甘えさせてくれる。
それが、嬉しいんだよ。
「ささ、たくさん食べて早く元気になろ」
「うん」
「はい、あーん♡」
「ああーん♡♡♡」
アニーが食べさせてくれるおかゆ、世界一美味しい。
どんな米料理も敵わない。
ミチルは心も体もほっかほかになっていた。
「うふふ」
お腹いっぱい食べた後、ミチルを寝かしつけながらアニーは笑う。
「どしたの、アニー?」
「うん、あのね、ミチルがオレなしじゃ生きられない状態って……いいよね」
「お、おお……」
おや? 何かあやしいぞ。
「ミチルが風邪引いて動けない間、いーっぱい甘やかしてあげるねえ♡」
「う、うん……」
ちょっと、言動があやしいぞ。
「ああ〜、今、この時! 生きてるって興奮するなあ!」
早く元気にならなきゃ!
アニーが闇堕ちする前に!!
ミチルはわざとセキをするのをやめて、大人しく寝まくった。
明日の朝には絶対平熱にしてやんぞ!




