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【BL】くしゃみのラブラブSS集め  作者: 城山リツ
06 風邪ひいちゃったミチル

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27/30

(ジン×ミチル)「添い寝で耐えろ」

「ぽやーん……」


 ミチルがさっきからぼおっとしている。


「ぽややーん……」


 頬を赤らめて、興奮しているのか。否……


「シウレン、熱があるのではないか?」


「ぽや?」


 ミチルの体調を寸分違わず見通す変態、もとい毒舌師範・ジンは心配とともにその額に手を当てた。


「なんと、三十八度五分もあるではないか!」


 相変わらず指先が変態。正確に体温を測れる人差し指である。


「ぽえ〜……どおりでえ、クラクラするとおもったあぁ」


「全く、具合が悪いなら早く言いなさい!」


 ジンはすぐにミチルを抱き上げた。

 体が熱い。高熱ゆえだが、こちらも思わず興奮する……とかは言わずに。


「えへへえ……抱っこぉ……わあーい♡」


「仕様のない甘えん坊さんめ」


 熱い体ですりすりされる。シウレンは熱に浮かされているので無意識。

 だけど思わず興奮する!……とかも言わずに、ジンは耐えた。


「さあ、シウレン。休みなさい。ちゃんと着替えるんだぞ」


「んんー……」


 寝室まで運んでもらったミチルは、高熱のために羞恥心がゼロになっている。

 その場で、あろうことかジンの目の前で、シャツのボタンを外し始めた。


「──! な、なまきがえ……ッ!?」


 とてつもないチャンス到来。

 ああ、だけど。シウレンは病のために意識が覚束ないだけ。

 そんな機会に乗じて、待望のお着替え♡を堪能しようなどと……


「んんー?」


 シャツをゆっくり脱いでいくミチルの肌から、ジンは断腸の思いで目を逸らした!


「わわわ、儂は薬を持ってくるからな! 良い子で着替えておくんだぞ!」


「はあーい……」


 脱兎の如く、寝室から逃げ出す毒舌師範は泣いた。


「おのれえ……! いつか正気のシウレンが自ら脱ぐように仕向けてやるのだ……ッ」


 薬を探しながら、毒舌師範は大いに泣いた!




「……シウレン、よいか?」


 いつもなら断りもせずにズバンと扉を開けてラッキースケベを狙うのに。

 ジンはノックをして声をかけるという偉業を成し遂げた。


「ふあ〜……」


 なんとも頼りないミチルの声。

 きっと高熱が辛いのだろう、ジンは急いで扉を開けて中に入った。


「よしよし、ちゃんと着替えられたな。偉いぞシウレン」


 ちょっとくらい失敗していても良かったのに。

 毒舌師範の未練が止まらない。


「さあ、熱冷ましの薬を飲みなさい。飲みやすいように丸薬にしてやったぞ、糖衣付きだ」


 ちょっとした団子くらいの大きさの薬になってしまったが、ミチルは喜んでそれを飲んだ。


「あーん、んん……甘いねえ♡」


「ゆっくり寝れば明日の朝には熱も下がろう」


 ジンはミチルをベッドに寝かせて、布団をかけてやる。

 トロンとした瞳で、ミチルはジンの袖口を掴んでいた。


「せんせ……ここにいてよぉ……」


「もちろんだ、シウレンが眠るまでおるぞ」


 優しく頭を撫でながら言うと、ミチルはむずがる子どものように、顔をしかめていた。


「やだあ、ずっと側にいてよぉ……」


「わかったわかった、朝まで側に居てやろうな♡」


「うふふぅ……」


 満足げなシウレン、尊い! と叫びたくなるのを我慢して、ジンはミチルのベッドに腰掛ける。




「せんせ、ちょっと寒い……」


「ん、そうか。布団をもう一枚……」


 と、思ったが、ミチルはジンの袖口をずっと掴んで離さなかった。

 困った。これでは動けない。


「……では、仕方ないな」


 ジンは己に言い訳して、ミチルの布団の中に潜り込んだ。


「儂自らシウレンを温めてやろう……♡」


「ああん、あったかぁ……い」


 ジンの温もりを感じ取ったミチルは、ジンに擦り寄ってそのまま眠りについた。


「ああ、シウレン♡ 早く元気におなり」


 ぎゅうっと抱きしめる、熱い体。

 シウレンを蝕む風邪菌など全て儂が吸い取ってくれる! ……ジンはそう決意して、さらにミチルを抱きしめた。


 ものすごく興奮するけれど。

 病のミチルに無体を働いたら、嫌われてしまう。

 ジンは血反吐を吐く思いで一晩を耐えた。


 耐えて、耐えて、疲れ果てて……

 空が白くなる頃には、ジンも眠ってしまっていた。




「……にゃ?」


 朝日が眩しくてミチルは目を覚ます。

 ああ、そういえば、昨日は高熱が出たんだっけ。

 確か先生が薬を飲ませてくれた。今はとても楽だ。


 ……そのはずなのに、体が動かない。


「うにゃあ!」


 それもそのはず、ミチルはジンにがっちり抱きしめホールドされている。


「ああ、シウレン……」


 ジンは少しか細い声で寝言を言っていた。

 先生、俺の事が心配で添い寝してくれたんだね……

 ミチルがうっかり感動しそうになった時。


「ああ、良いのか、そんな? ああ、最後まで脱いでしまうなんて、あああ……」


 なんの夢を見ているんだ、ドスケベ師範はぁ!!


「オラアァア!」


 はい、どーん!

 ミチルは思いっきりキックして、夢見る変態師範をベッドから落とした。


「一瞬でも感動した、オレがバカだったあああ!」


「ふぁっ、シウレン!? 熱が下がったのか?」


 床に転がりながら、ジンはミチルの快癒を喜んだ。


「おかげさまじゃああああ!!」




 元気になって何よりです。

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― 新着の感想 ―
ジン先生も流石に病人相手には興奮するけど我慢するんですねw いつもより甘えた様子なミチルにやばかったけど、なんとか理性を保ったのは偉すぎる!! そんな偉すぎるジン先生でしたが、寝言でヘンタイな夢を見て…
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