(ジン×ミチル)「ご利益過多?」
【日本式神社が出てくるので、多分、現代地球設定です】
手を繋ぐという行為にはどんな意味があるんだろう。
ミチルはジンと並んで歩きながら、そんな事を考えていた。
先生の、細くてかっこいい手に触れながら歩いている。
ぎゅっと握ってくれるのが、温かくて安心する。
握った手から、先生の体温が自分にも移ってくるよう。逆もそうだろうか?
だとすると、今、オレと先生の体温は混ざり合っている……
「うひゃああ……」
我ながら恥ずかしい妄想をしてしまった。
ミチルは思わず小さく悲鳴を上げる。
「どうした、シウレン?」
覗き込んでくる顔は極上にイケていて、サラッと流れる銀色の長髪に興奮します。
「ん、ううん、何でも!?」
体温が混ざり合って、のあたりで良からぬ妄想をしてしまった。
まだお日様が昇っているのに恥ずかし過ぎる。
でもさ、オレがこんな思考になっちゃったのって、先生の「教育」のせいなんじゃない!?
「じいー……」
このド〇〇べ師範のせいなんだ、全ては。
そう考えるとミチルはジンをジトっと睨んでしまう。
「なっ、なんだ、どうしたのだ、シウレン?」
「……せんせのせいなんだからね」
「何がだ!?」
全くの心あたりがない、という顔でジンは慌てていた。
が、すぐに。
「臍を曲げたシウレンもかわゆいなあ♡」
……などと言って頬を緩ませる。
ミチルが何に臍を曲げているのかは気にならないのか。
オトナの余裕なのか、それとも単にス〇べなだけなのか。
「ハア、もういいデス……」
ミチルにしても是が非でもわからせたい訳ではない。
つまりはここまでが二人のじゃれ合いのひとつである。
「あれ、神社がある」
「ん?」
少し歩いていると、二人は小さな神社を発見した。
いつもの散歩コースにこんな神社あっただろうか。ミチルは首を捻って、こじんまりした鳥居を見上げる。
「何の神様かな?」
「ふむ……奥の幟に縁結びと書いてあるな」
「へえー! そうなんだあ、恋愛成就かあ。ちょっとお参りしていこうよ!」
ミチルは軽い気持ちでジンの手を引いた。だが、ジンはピタリと止まって訝しむ。
「何故だ? 恋愛なら儂と成就しているではないか、縁結びだって手を繋いでいれば似たようなものだろう」
「いいの! 行こうよ、ね」
「……はっ、まさかシウレン、儂のオジさに嫌気がさして若い男と!?」
狼狽えたあまりに、普段は出さない隠れた不安が露呈してしまった。
ミチルはムッとなって、ジロリと睨む。
「二度はねえぞ」
なんでそんな思考になるの!?
オレはただ先生ともーっとラブラブになりたいだけなのにっ!
「ふあぁん、怒ったシウレン、オニかわゆす♡」
悶えながら死語を繰り出す毒舌師範の気持ち悪さよ。
ミチルはジンが萌え萌えしている隙をついて境内まで引っ張っていった。
ぺこぺこ、パンパン、ぺっこり。
二人は誰もいない小さな神社でお参りを済ませた。
するとあら不思議。なんだか隣にいる人物がとても恋しくなってくる。
「あ、先生……」
ミチルは熱に浮かされたような瞳でジンを見た。
「シウレン……なんてかわゆい……♡」
うるうると愛に震える愛弟子に、ジンもうっかりメロメロになる。
ミチルはジンの腕に縋りついて甘えた声を出す。
「早く帰ろ……♡」
「ああ、もちろんだ」
なんだかいつもより、ジンの声も渋くてカッコよくなっていた。
「ねえ、せんせ」
「なんだ?」
「帰って……しよ?」
ど・直球!
ミチルがこんな事を言うなんて、今日は大安で一粒万倍日に違いない!
ジンがこの好機をもちろん逃すはずもない。
「ふふふ、シウレン。儂がずーっと繋がっててやるぞ……♡」
「うん♡」
今夜は超大安で、超一粒万倍日ッ!!
大変ご利益があった神社だったが、その後、二度と辿り着くことは出来なかった……




