(ジェイ×ミチル)「花粉症……?」
うららかな春の日差し。
ぽかぽかと心もあたたかくなる好日。
「ああ、ミチル、良い天気だ……」
ジェイは振り返って恋しい相手に笑いかけた。
が、ミチルの心は晴れていないようだった。
「ふがぁ……」
「ミチル? どうしたマスクなどして」
ジェイの欲目かもしれないが、ミチルはその愛らしい顔の下半分をマスクをかけて隠している。
そしてこれもジェイの欲目かもしれないが、ミチルはその可愛らしい大きな瞳を潤ませていた。
「うん、最近鼻がムズムズするから花粉症かなあって」
「そうか。ミチルがくしゃみをしたら大変だからな」
「まあ、転移するくしゃみか、ただのくしゃみかはなんとなくわかるけどねえ」
顔が半分隠れているが、ミチルの目元から苦笑しているのがわかる。
ミチルはそう言うけれど、ジェイは少し不安だった。自分の知らない所でミチルがもしくしゃみをしてどこかに消えたら、今度こそジェイは生きていられない。
「よし、わかった。ミチル」
「……うん?」
ジェイは途端に真面目な顔で背中の大剣を引き抜いた。
「ミチルを襲う花粉を、私がこの剣で振り払おう」
「ふえぇっ!?」
ミチルが驚いている間に、ジェイは蒼い大剣をぶんぶん振り回した。ミチルの周りを剣の描く軌跡が乱れ飛ぶ。
「ギャー! 怖いコワイこわい!」
「私はミチルの盾! 花粉からも守り抜いてみせるっ!」
幅広の大剣は意外と大きな風を巻き起こす。ミチルの周りは乱気流が生まれて逆に砂埃が舞い始めた。
「フガー! 別のものが飛んでるぅう!」
「何!? おのれ、今度は土煙がミチルを襲うのか、何てことだ!」
ジェイはますます大剣を振り回した。一直線に突き進み、融通がきかないのがぽんこつナイトの欠点だ。
「わかった、わーかった! ムズムズ止まったァ! とりあえず剣はしまってぇ!」
その後、折衷案としてミチルはジェイを『風除け』として一日中密着♡することになった……