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三題噺もどき3

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくごじゅうご。

 


 雨粒が窓を叩く。


 今日は朝から雨が降っており、その雨音に起こされた。

 誰か外からシャワーでも窓にかけているのかというくらいのささやかな雨音だったけど、それが続くと騒音でしかなく……あまりの喧しさと煩わしさにイライラしながら起きてしまった。おかげで朝から気分が最悪だ。

「……」

 そろそろ体力の衰えを感じてきたので、散歩にでも行こうと思っていたのだけど。

 この雨ではそうもいくまい。散歩なら晴れた日にいつでもできる。今日じゃないと言うことが分かればそれでいいだろう。今度行こう。

 もうそれよりも朝からイライラしてしまっているから、頭の中やら胸のあたりがズキズキしている。

「……」

 口に出しはしないけど、頭の中でああだこうだと文句を言うのが常なところが若干あるので、脳内の文句が止まりもしない。

 これでも寝起きよりは多少治まっている方だと思うんだが、留まることを知らない怒りは過去の怒りも引きずり出して、アレは私は悪くないのにとか言い出す。

 全く面倒な奴だと自分でも思う。

「……」

 その状態が続くと、頭が痛くなったり、心臓のあたりがズキズキしたりしだすのに。やめられもしない。頭痛は雨が原因かもしれないけど。

 心臓のあたりがズキズキするのはなんなんだろうな。ストレスか何かだと思っているけど、そんなことで痛くなることがあるんだろうか。でも過去に痛いと思った時は大抵何かにストレスを抱えている時だった。

「……」

 いやまぁ、もうそんなことはどうでもいいのだ。

 とにかく何かで気を紛らわせでもしないと。

 これ以上イライラしていては頭痛が酷くなるばかりな気がする。

「……」

 しかし何でという感じなんだが。

 とりあえずベッドの上に寝転がり、スマホをいじってみたりするものの。

 たいした気分転換にもなれない。

「……」

 短い動画を何本も見たりしているけど。

 最近は犬や猫もみるが、たまにハリネズミの動画とかも見かけけるな。手の中に納まるほどの大きさのハリネズミが、されるがままになっているもの。あれはあれで可愛いが、針に刺されそうで自分で飼おうとは思わない。

 そうでなくても、私が私以外の命を預かるのは無理なんだけど。

「……」

 時折止まってみては、眺めて。またスクロールして。飛ばして。

 まぁ、でも。中身を見て居なくても。

 こうして、延々と同じような行動をしていると落ち着いてくるものはある。

 後、脳内の事ではなくて、目の前の行動に意識を移動させられるから、怒りを忘れられる。

「……」

 常に脳内BGMは流れているんだけど、それはまぁ、今に始まったことじゃないし。怒りでなければ何でもいい。今日はリズムゲームの曲が延々流れている。

 ……そういえば今日はログインしたっけ。

「……」

 そんなことを思いながらも、動画を飛ばしたり眺めたりする作業をやめない。

 とりあえず、多少怒りは落ち着いているので、もうやめてもいいんだけど。

 この作業はこの作業で、ぼうっとできるのでいい。

「……」

 画面の中では。

 動物たちが人間に振り回されていたり、その逆だったり。

 おしゃれな生活をしている人たちの日常だったり。

 縁側で……いやこれはサンルームというのか。外に面した、クリアな天井と壁に囲まれた温室見たいな場所で、うたた寝をしている赤子の動画だったり。

「……」

 世の中にはこんな幸せに溢れている人たちがいるのに。

 どうして私はこんな1人で部屋にこもっているんだろう。

「……」

 だからといって、何をどうできるわけでもないんだが。

 羨むだけで終わる。隣の芝生は青く見えるのは誰だってそうだろう。

 自分に持っていないものを持っている人間は誰だって羨ましく見える。

 ペットなんていないし、こんなおしゃれな生活できないし。

 自分を大切にできるような生き方をしてこなかったんだから。

 たまに耳にする自己肯定感なんて、全く意味が分からないもの。

「……」

 まぁ。

 朝から続いた怒りも治まったし。

 外は雨も降っているし。

「……」

 今日もこうして。

 引きこもってみるとしよう。

 誰にも助けを求められないんだから。

 1人で抱えてこうしているしかないんだから。

「……」

 わたしなんて。

 こぼれないように。

 引きこもっていればいいんだから。

 他人を羨むだけ、羨めばいいんだ。












 お題:サンルーム・ハリネズミ・散歩

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