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 ひかるが、オフィスの会議室ではしゃいでいる。


 「いいですか、南里さん、ログインしますよぉ!」


 「まあまあ青海さん、会社にゲーム機を持ち込んだとはいえ、一応これも仕事ですから……。そんなに大きな声を出さずに。」


 南里は、困った顔をして青海ひかるをたしなめると、VRゴーグルを調節して、ヴァーチャル画面をのぞきこんだ。


 「キャラクターが、見事に私の顔になってますね。ここで、名前を入力すればいいんですか?」


 「その名前が、南里主任のゲーム内での通称になると思います。何か考えて入れて下さい!」


 「青海さん、体型はいじりました?」


 「私はそのままです。ふふふ。」


 「へえ、服装も選べるのか……。」


 南里は、最新のVRゲームの作りに感心していた。


 最後にこの手のゲームをしたのは、五年以上前だ。そのときは、無機質な二次元のキャラクターを選択して、それを動かして遊ぶだけだった。


 しかし、話題の新興IT企業であるメタブックが、今年に入って開発したゲーム「トーキョー・ギャング」では、まずキャラクターに、五方向から撮影した自分の顔を使う。さらに身長や体重も入力し、キャラクターをヴァーチャル空間に創りだすから、自分の姿かたちを忠実にコピーした三次元キャラを使ってプレイするわけだ。体型は、自分の理想にあわせ、少し痩せさせたり、太らせたりすることも可能だ。


 VR用のゴーグルは、少し重たいが、気になるほどではない。かぶると額のまわりに密着する感じがあって、視界がすべて、サイバーなヴァーチャル世界となる。これはきっと、若者にしたら楽しいだろう、と思った。


 「じゃあお先にログインします。『カブキチョーサーバ』に来てくださいねー。それでは!」


 青海ひかるの明るい声を聞きながら、南里も慌てて、コントローラーで名前を入力する。ひとまず、主任ということで「シュニン」でいいだろうか。 名前を決定し、スタートボタンをクリックする。


 次の瞬間、目の前に輝く光のトンネルが現れ――自分の体が浮かび上がって、それをくぐっていく光景が展開される。単純な視覚情報による錯覚なのだが、本当に、空を飛んでいるような気分になるから不思議だ。耳に装着したイヤホンから、無機質な機械の声で「LOG INロォグ・イン」と声がする。


 トンネルを抜けると、画面が光の洪水で真っ白になり、そこからゆっくりと現実の街並みが見えてきた。あたりには新宿の繁華街である、歌舞伎町の街並みが広がっている。


 「へえ、本当に歌舞伎町にいるみたいだ。大したもんだな……。」


 南里はきょろきょろと、あたりを見渡した。ヴァーチャル空間ではあるが、ビルの並びから、そこに掛けられている看板まで、かなり忠実に風景を再現している。おそらく、衛星から撮影した画像データをゲーム内にとりこんでいるのだろう。


 いまは昼時とあって、プレイヤーの数は比較的少ないはずだが、それでも南里の周囲、視界に入るだけで二十人程度がうろついていた。なかなか盛況のようだ。


 「ギャング」がコンセプトのゲームと聞くが、プレイヤーの衣装は様々だ。西部劇のような格好をしたプレイヤーもいれば、鉄仮面をつけた、怖そうな風貌のプレイヤーもいる。ちなみに、南里は初期設定の、スカジャンに黒のパンツといういでたちだった。


 「さて、青海さんを探して合流しないと……。」


 南里がその場に立ち止まり、周囲を伺っていると、一人の大胆な衣装を着た美女が近づいてくるのに気がついた。体にぴったりフィットする、黒のライダースーツを着ている。注目すべきはその胸元で、ばっくりと大きくジッパーが開き、豊満な胸の谷間が強調されていた。名前は「シャイニング★ガール」と表示されている。こちらを見て、ニコニコと微笑んでいるようだ。


 それが、ヴァーチャル空間上で衣装を変えた青海ひかるだと気がつくには、しばらくの時間が必要だった。


 「南里主任ですよね! どうですか、私のこのカッコ?」


 「あわわ……なんというか……。」


 南里はゴクリ、と生つばを飲み込んだ。

 

 「体型は、いじらないという話でしたが……」


 「もー、やだ主任ったら♪ みとれちゃいました? これが、私のもともとの体型ですよー。特に変更していないです!」


 どこまでが、本当だろうか。南里はあえて興味なさそうに、ななめ上へと視線をそらす。


 いまどきの若い子は、ハロウィンパーティなどで肌を露出させることがあると聞く。つまりは、非日常の空間にいると、大胆な衣装を着ても問題ないのだろう。ましてここはゲーム内だから、なおさら抵抗感がないのかもしれない。


 「さて主任! 雁野さんを探さなきゃですよね。かなりレベルの高いプレイヤーだと思いますから、まずは、レベルの高い人を探せばいいと思いますが……。」


 「レベルの高い人って、すぐ見分けがつきますかねえ。」


 「うーん、どこかで戦ってくれたりすると、分かりやすいんですけどねー。」


 その時だった。キャア、という悲鳴が聞こえ、向こうの広場で二人の人影が争っているのが見えた。


 「なんですかね? 南里主任、行って見ましょう!」

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