本当の言葉
「あの中を突破して、会いに来てくれたんですね……。」
静久が、目を細めて、喜んでいるような、泣いているような表情で言った。
「信じられない……。」
「でも、僕は弱い男です。」
雁野の口調が、いつもと違うことに静久は気づいた。しかし、それに対して何も言わなかった。いつもと違って、これは彼の心から出てきた本当の言葉なのだと感じた。
「途中、僕はくじけそうになりました……。みんなの助けがなかったら、僕はまた、諦めていたでしょう。あの時のように。」
雁野が、少しうつむくと、また静久に視線を戻して、言った。
「初めて会った時、いじめられていた、同級生の話をしました。……僕は、嘘をつきました。あれは、大して仲が良くない友達なんかじゃない。僕の親友だったんです。僕はその時、いじめられていた親友を、見殺しにしたのです……。」
「でも今夜、私のことは、助けにきてくれました。」
静久が、黒目がちの目を少し潤ませながら、覇王に語りかけた。
「覇王さんは、とても強い人だと思います。私のことを、励ましてくれました。」
「今日ここに来たのも……怖かったからです。」
雁野が、少し、照れ隠しに笑った。
「あなたがいなくなってしまうのが、怖かった。青海さんから聞きました。入院されると……。あなたと短い間でも、話せなくなると思うと……。励ましにきたとか、そんな格好いいものでは、ないのです……。」
「――私は、このゲームをして良かったと思っているんです。」
静久は、ふとまわりの景色に目を移して言った。
「ゲームの中では、全然強くなれなかったけど、少し積極的になれた。覇王さんとお友達になれて、本当に色々な景色が見れたし……心も、ちょっとだけ、強くなれたかもしれない。」
「静久さん。」




