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邪気眼の佐藤

 広場には、おびただしい数のモヒカン達が折り重なって倒れていた。皆だらしなく手足を広げ、地面に伸びている。地面や建物など、あちこちに入ったヒビが、激闘のあとを物語っていた。


 そこから少し離れた、六本木ヒルズの展望台入り口近くで、覇王はボロボロになって地面に倒れ臥していた。視界がかすみ、前に立っている男の足元しか見えない。うつぶせのまま、必死にひじをついて体を起こそうとする。


 「……くっ……!」


 覇王の前に立っている男は、まるまると太った巨漢だった。体重百キロをゆうに超え、ひょっとしたら百五十キロ位までいっているのではないかと思われた。ゆっくりと体を揺すり、言葉を吐き出す。


 「しかし、驚いたでぇ。まさか、ここまで来るとはな。」


 目を細め、満足そうにあごの下をさすった。


 「だが残念ながら、ここまでやったな。明日からはトーギャンで、この『邪気眼の佐藤』様の名が知れ渡るわけや。――覇王を倒した男、としてな。」


 邪気眼の佐藤の強さは、覇王も認めざるを得なかった。防御力が高く、打たれ強い。こうした集団での消耗戦では、最後まで生き残りやすいタイプだ。


 もちろん、体力さえ万全なら普通に勝てる相手だが……。覇王は、自らのステータスを確認した。もう、すべてのパラメータが本来の一割程度しかない。回復アイテムも、さっきからとうに底をついていた。


 ――やはり、無理なのか?


 「覇王、ワレが弱かったわけやないで。ただ俺が、強すぎたんや。」


 邪気眼の佐藤が、ゆっくりと近づいてきた。フンと気合を入れると、腕を振り回して攻撃モーションに入る。いつもの素早さがあれば、なんなく避けられる動作だが――ドガン、という効果音がして、覇王はなすすべもなく吹き飛ばされた。視界が大きくグラつき、石畳の上に転がる。


 覇王は両手を地面につき、必死に起き上がろうとした。だがもう、体の自由がきかない。邪気眼の佐藤が追撃とばかりに、躍りかかってきた。ガン、ガン、と続けざまに殴られて、顔を右に、左に振られる。さらにとどめの、渾身の力を込めたアッパーがもろに腹部に決まった。覇王はそのまま、スローモーションのように仰向けに宙を舞った後、石で出来た柱に激突する。そこから動くだけの力は、残っていなかった。


 ――ここまでか? 俺はシズクを、救えないのか。

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