レアアイテム
また、三人が飛びかかってきた。一人の攻撃を腕でブロックし、直後にグーパンチではじき飛ばす。だが、今度は二人の攻撃を腹と、頭部に喰らった。グラ、と視界が揺れる。ザン、と両足を踏ん張り、覇王はモヒカン二人をまとめてグーで突き飛ばした。二人が驚いた顔で、折り重なって飛んでいく。
「今だ! 全員でかかれ! 秘技『熱殺蜂球』(ねっさつほうきゅう)!」
号令を聞いたモヒカンが、一斉にとびかかった。覇王を360度、さらに上からも取り囲んで、まるで球のように二重三重に人が折り重なっている。中心部にいる覇王が、必死に一人ずつ吹き飛ばすが、とても間に合わない。やがて攻撃音だけが聞こえ、モヒカンで形成された球体の中で、少しずつ覇王が体力を削られているのが見えた。
「ククク……! 『熱殺蜂球』、それは自然界で、ミツバチがスズメバチに対抗するための秘策だ! ミツバチは、個々の戦闘力では、スズメバチにかなわない。だが全員で、スズメバチに取り付き、一斉に筋肉や羽を震わせ体温をあげることで、スズメバチを蒸し殺すことがある……。」
モヒカンの指導者のような男が、分かりやすく、親切丁寧な解説を始めた。
「要するに……全員で飛びかかって、タコ殴りにする技だあっ! ここまでだ、覇王、殺ったり(とったり)!」
球の中心で、少しずつ覇王の反応が弱まっているのが分かった。トーギャンでは、体力を削られたプレイヤーは各種ステータスが低下する。さしもの覇王も、低下したステータスでは、この局面を打開することは難しいように思われた。
ところが次の瞬間、異変が起こった。
球の中心部から、強烈な光が放たれた。モヒカン達の隙間から、光がもれて四方八方に飛散する。
「な、なんだ……うわっ!」
光がドーム上に膨れ上がり、ついに全方向にはじけた。同時に、覇王に覆いかぶさっていたモヒカン達が、全員吹っ飛ばされた。光が収まり――中心部には、覇王が立っていた。体力が、全回復している。
「体力回復アイテムだ! 檄レアアイテムの、『帝王のブルゴーニュ』で全回復しやがった!」
「さすが廃課金!」
「そんなアイテムを、レアなボスキャラを倒すわけでもないのに使うとは! そんな、アホなあー!」




