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決戦の水曜日

 ひかるは思った。桐谷静久さんは、外見もいいし、内面も人に配慮する心をもった、素敵な方だ。でも、一つ間違っている。


 「その話は……静久さんが、覇王さんに直接、言うべきだと思うんです。」


 「でも……。私なんかの話をしても、覇王さんは……。」


 「覇王さんは、それを聞かずに静久さんが入院しちゃったら、悲しいと思うんです。自分は、そういうことを言ってもらえるだけの人間じゃ、なかったんだって。」


 「……。」


 「それに、静久さんはどうなんですか?」


 青海ひかるは、願うように言葉をつないだ。


 「しばらく、会えなくなるかもしれない。そんな手術に行く前に、せっかく仲良くなった覇王さんに一言、励ましてもらうと、嬉しかったりしませんか?」


 青海ひかるは、静久を見つめた。少し驚いたような、困ったような顔をしている。


 「静久さんは、とてもいい人だと思います。でも、いい人過ぎると思うんです。もっと普通に、自分の気持ちを出しても、いいと思います。」


 「ひかるさんは、思ったことを素直に言える方なんですね。……ちょっと、うらやましいです。」


 静久は、微笑みながら言った。ただ、まだ何か考えているようだった。青海ひかるは、これが最後の提案だと思いながら、勇気をもって言った。


 「あの、顔合わせの件ですけど、お話を聞いているとあまりに急なので、これはなしにしたいと思います。でも、トーギャンの中でいいですから、今のこと、覇王さんときちんとお話する時間は、とっていただけませんか? ――それが、覇王さんをクライアントに持つ当結婚相談所としての、お願いになります。」


 よろしくお願いします、と青海ひかるは頭を下げた。そんな、顔を上げてくださいという静久の声を聞いて、そーっと目線を上げる。


 「ひかるさんには、負けました。木曜の朝には、入院しないといけないので、水曜の夜ですね。水曜の夜に、覇王さんと、少しお話がしたいです……。」


 「分かりました!」


 青海ひかるは、嬉しくなって弾んだ声で答えた。桐谷静久だって、本当はきっと、覇王と会って話したいのだ。それはつまり、脈があるということでもある。


 こんないい人、本当に雁野さんにはもったいないくらいだぞ、とひかるは思った。

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