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ひかるの思い

 青海ひかるは、すぐにしまったと思った。彼女には、彼女なりの事情があるらしいことが、だんだん分かってきた。シュンとしおれて、話を聞いていた。


 「トーキョー・ギャングは、そんな私でも、激しく動き回る気分を体験できるかな、強くなれるかなと思って始めたんです。……だから、ゲーム内で本当に強い覇王さんが、うらやましかった。言動も優しくて、色々お話を伺いたくて……だから私からお願いして、そばに居させてもらっているんです。」


 「でも、覇王さんも静久さんのこと、そばにいてほしいと思っています。」


 「それが、ありがたいことに、本当だったとしても。」


 静久の目に、ふと寂しそうな光が宿った。


 「私には時間がないかもしれない。実は最近、発作が起きる頻度が多くなってきたので、大学病院で手術をするんです。それが――四日後の、金曜日なんですよ。まだ、覇王さんには言っていないですけど。」


 「えっ?」


 青海ひかるは、慌てた。これは、婚活どころではないかもしれない。私は、のん気にとんでもない提案をしたのだろうか。


 「手術っていっても、そんなに、物凄い大手術ではなないです。ただ……もちろん入院はしますし、成功率も半々ぐらいみたいです。上手く行けばいいですが……。上手くいかないと、長期間入院になるかもしれません。」


 そうなると、もうトーギャンでお会いする機会も減るかもしれないですから……と言う静久の声が、青海ひかるには小さく聞こえた。静久さんは、自分の将来と、相手の将来がすりあうかまで考えて、交際を考えている。そういう真剣な気持ちを、私は何も理解していなかったんだ。


 「熱心に提案してくれたひかるさんに、一つお願いがあるんですよ。」


 静久は、努めて明るい声を出しながら、意気消沈してしまった青海ひかるに言った。


 「もし、私が、トーギャンに顔を出さなくなったら、覇王さんが少し不思議に思うかもしれません。その時は、今のことを教えてあげて下さいね。」


 「……いやです。」


 青海ひかるは、きっと顔をあげた。

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