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恋に落ちた覇王

 「こ、恋に落ちたぁ!?」


 ひかるが、中腰になって大きな声をあげた。それから、少しマナーが悪かったかと思い、慌ててソファにすわり直した。


 「あ、すいません! つい驚いて、大きな声を出してしまいました。」


 「いえ……。自分でも、こういう状況は初めてで、どうしたらいいか分からないのです……。」


 雁野は、いつものように小さく縮こまっていった。例のヘルメット・ヘアーのせいでどんな表情をしているか読み取りにくいが、言葉の端々に、どこか幸せのオーラらしきものが、にじみ出ている印象を受ける。


 二人がいるのは、ネットキューピッドの応接室だ。プレミアム会員の、状況ヒアリング会だった。最初のうちは、たいてい南里と青海ひかるの二人で面会していたが、今回から初めて、ひかるが一人で対応することを許されていた。


 そんな矢先に、衝撃の発言が出た、とひかるは思った。


 「そ、それで、整理するとですね。」


 ひかるは、後で社内報告できるように、ノートパソコンに文字を打ち込みながら言った。


 「お相手は、トーギャンの女性プレイヤーで、しずくさんでしたっけ? しずくさんと、このところ毎日のように、一緒にプレイしている。先方も、どうやら一緒にいることを楽しんでいるように見える。そういうことですね?」


 「はい……あの、青海さんも一度会ったことがある方です……。南里さんと二人でログインしたときに、男性プレイヤーに絡まれていた女性なんですが……。」


 「あー! あの時の! えー、雁野さんすごいじゃないですか、あれがきっかけで知り合ったのですか?」


 「向こうから、声をかけてくれたのです……。」


 これはチャンスだ、青海ひかるは考えた。

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