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VRは別の顔

 「――そーいうことじゃ、なかったんですよねー……。」


 ここはネットキューピッドの応接室だ。南里主任がソファに座った雁野に向かって、にがりきった顔で話しかける。


 「すいません、うまく話せなくて……。」


 雁野が、小さく縮こまって返事をする。小さくなりすぎて、この世から、はかなく消えてしまいそうだ。


 「……確かに、顔合わせでは、覇王としての自信を持っていきましょう、とお伝えしましたよ。ただ、服の話題になって、最近買ったのは、『ブラック・ドラゴンの鎧』だ、と自信を持って言及したあたりから、雲行きがあやしくなりましたよね……。」


 「やっぱり、まずかったでしょうか……。」


 「そうですね……。その後、キリッとして『僕は500万ゴールドぐらいの服なら、悩まずに買ってしまいますから』と言ったのも、ちょっとアピールになっていないというか、逆効果というか……。だいたい、500万ゴールドが多いか、少ないかも、よく分からないですし……。」


 雁野がうつむいて、しょんぼりする。南里も、かわいそうになって、これ以上の追求は避けた方がよいかと判断した。


 「私は、やっぱり婚活には向いていないかもと思うのです……。」


 雁野が、思いつめたように話し出した。


 「実はここに来る前、婚活パーティなどにも色々と出席してみたのです……。でも、上手くアピールできなくて、10連敗して、結婚相談所に駆け込んできたのです……。いくらゲーム内のデュエルで356連勝していても、婚活で10連敗していたら、意味がないです……。」


 「そ、それはともかく、我々も全力でサポートします。上手な自己ピーアールを一緒に考えながら、また顔合わせの機会をもうけていきましょう。」


◇◇◇


 雁野が何度もおじぎをしながら、神保町のオフィスを去った後、青海ひかるが雁野の席を訪ねてきた。南里が座席に戻るタイミングを、はかっていたようだ。


 「南里主任、どうでしたか? 雁野さんとの1on1の面接は?」


 「ええ、ちょっと落ち込んでいましたが、励ましておきましたから、大丈夫だと思いますよ。」


 「雁野さん、ゲーム内ではあんなにイケメンキャラなのに、現実世界だとなかなかしゃべれないですよね……。二重人格みたい。」


 「確かに……。でも、人間誰しも、そんなものかもしれないですよ。」


 南里は、相談員としての過去の経験を思い出しながら、オフィスの斜め上の空間をぼんやりとながめた。


 「誰だって、得意な分野では、生き生きできるんです。」

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