act1 勇者召喚 02
主人公視点です
魔法陣の光に捕まって、しまった!と思った時には遅かった。
俺は見覚えのある広間の中にいた。
ここはレムリア王国の王都にある神殿の広間だ。
前世の俺はこの神殿で生まれ育ったから見間違える筈がない。
魔法陣の中には俺を含めて三人。
一人は白い軍服を着た外国人男性。金髪碧眼で190cmはありそうな体格のいい美丈夫。
もう一人は大正時代の書生のような格好をした麗人。背は170あるかないかで痩せ型、黒髪に瑠璃色の瞳。
どちらも二十代後半位に見える。
二人に視線を走らせた次に魔法陣の外側をぐるりとサッと見まわした。
枢機卿が七人、ということは勇者召喚の神託で呼び戻されたということなのだろう。
召喚された他の二人はこの状態を受け入れて落ち着いた雰囲気なので召喚の前にきちんと意思疎通がとれて納得して貰った上での召喚のようだ。
俺は違うけど!
「召喚に応じて下さり有難う御座います。私はリカルド・フォン・グロッケンバウム。皆様の祖先の血族に連なる者です。今後、私が皆様の身元引受人としてお世話させていただきます。どうぞよろしくお願い致します。」
そう言って和やかに微笑むリカルドを俺は睨むように見つめた。
それに気づいたリカルドは 「仕方ないじゃないか。見つかってしまった己の運の悪さを嘆くがいいさ。」 と俺にだけ聞こえるようにそう呟いた。
俺は小さなため息をついてリカルド-前世の俺の兄から目を逸らした。
逸らした先で視線が合ったのはレムリア王族特有の金色の瞳をした青年だった。