第七話 『執着の一』VS『鈍天の美香』
美香は、疑問一杯に汐に尋ね返した。
「……そうだったな。お前はそういう奴だった……」
汐はため息をついた。
美香のそういったところ、つまり、自身への病みへの鈍感さが四天王に選ばれた所以であるのだから、それは当然なのだろう。
汐は、汐を憎々し気な目で見つめる一を見て、ため息をつく。
そんな一は、大きな声で美香に問いかける。
「なんなんだ、美香!その男は!?」
「何って、先輩ですけど?」
「そんな男に頼って!俺の事なんてどうでもいいってか!?」
「いや、一は幼馴染ってだけですし。そもそもどうでもいいです」
「嘘だろ……」
汐は、少しだけこの男に同情する。
普通、歪んだ愛を向けられた対象は、それに気づき、畏怖し、それがヤンデレには自分を見てもらっていると判断され、より執着が強くなる。
逆に言えば、歪んだ愛情に気づかなければ、ヤンデレは大きな意味をなさないのだ。
それが彼女の四天王たる所以。
「あぁ、私もいい感じの男の子を見つけたいです……」
「俺は!?」
「一は対象外です」
「ぐっ……」
好きな女の子からの明確な拒絶に、がっくり首をうなだれる一。
「あの二人はいいですよね、互いに相思相愛で」
「……あぁ、俺もあんな感じになりたい」
「……誰とですか?」
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