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4月10日 その⑥

 

 情報④「親はデスゲームの運営に関係している」という、ここに来て自らで真偽が確かめることのできない情報。


 俺の両親は、俺が幼い頃に失踪してしまった。その後、どこに行ったかも知らずに生きてきた。

 親の場所など、知ろうとも思わなかったし、知りたくもなかった。俺を捨てて逃げたのだから、俺は邪魔だったのだろう。ならば、会いに行っても他人のフリをされるだけ。


 だから、会いにいくこともなかったし、会いに行こうとも思わなかった。しかし、憎んでいたという訳でもない。干渉してこないならば、問題はなかったのだ。


 俺は、浩一おじさんと暮らしていれば幸せだったから。


 ───だが、親がデスゲームの運営に関係していると言うのであれば、話は別だ。


 今、明らかになっている俺の情報は以下の4つだ。


 ①小寺真由美を殺した

 ②村田智恵に恋している

 ③生徒会に所属している

 ④親はデスゲームの運営に関係している


 そして、「情報①」と「情報③」は嘘の情報であり、「情報②」が本当である。残り、真実と嘘は1つずつだ。


「情報④」が嘘かどうか判別するには、「情報⑤」が嘘かどうかわからなければならない。


「情報⑤」が真実であれば、消去法で「情報④」は嘘になるし、「情報⑤」が嘘であれば、消去法で「情報④」は本当───俺の両親は、デスゲームの運営に関係していることとなる。


 ───だが、ここで生まれるのが1つの矛盾。


 マスコット先生と、問答をした際の答えに矛盾が生じてしまうだろう。


 {───デスゲーム、今回が初めてじゃないだろ?}

 {はい、そうです。今回で5回目です}

 {───今回のデスゲームに、前のデスゲームの生き残りの子供が参加しているか?}

 {はい、そうです}

 {───それは、俺か?}

 {違います}


 前のデスゲームの生き残りが参加しているが、それは俺じゃない。いつからデスゲームが行われたかはわからないが、少なくとも俺の血筋の人物は、一度もデスゲームに参加していないこととなる。


 では、どこで「デスゲームの運営に関係する」のか。俺は、思考を逡巡させる。

 だが、該当する人物は見当たらない。


 生徒会は、帝国大学を卒業した後はGMの元で働くことができる。そして、生徒会及びGMはデスゲーム関係者に値するだろう。


 ───もしかして、デスゲームの裏に何かが動いている?


 そんな、結論を出す。デスゲームの裏で、秘密裏に何か───大きなものが動いているのかもしれない。

 一番、ありきたりなものとしては国だろう。


 他にも、大企業や大商人など、裏で動く大きなものとしては、色々な選択肢があるだろう。


 ───その、「大きな物」が、俺の両親と関係しているのであれば。


 そんなことを考える。


「栄...本当か?」

 チラリと、森宮皇斗がこちらを見る。


「ごめん、俺も両親のことはわからない...」

「皆、両親のことを知らないんやな。本当は、知ってるんやろ?」

 津田信夫にそんな事を言われてしまう。


「森愛香と言い、栄と言い親に会ったことがない?そんな訳ないやろう?自分の子供を育てない親なんてどこにいるんや?少なくとも、ワイの親はそうではなかったで」

「俺の親は...俺らの親は、信夫の親とは違うんだ...だから、俺が幼い時にいなくなったんだ...」


「そうなんやな...でも、子供を育てない親なんていないと思うんやが...」

「そんな事無い!」

 そう、声を上げたのは紬だった。


「親は子供を愛するのが当たり前?そんな訳無いでしょう!もし仮に、つむがちゃんと親から愛されていたら、私はこんな学校には来てなかった!」

「───」


 紬の悲痛な叫び。それが、皆の心を打った。


「それはそうだな...オレもその気持ちはわかるぜ。親ガチャ失敗───って言うんだっけか?」

 そう、声を上げたのは窓枠に座っていた右目に眼帯をつけた少女───安土鈴華。


「本当同感。親なんていなければいいのに」

 紬や安土鈴華に同意する少女───三橋明里(みつはしあかり)


「俺もそれには同感できるかも!皆のことは好きだけど、親は好きになれないな」

 岩田時尚も、そんな事を言う。


「僕も同感する...家に戻ろうとは思えない...」

 橘川陽斗も口を挟む。


「それは、癪だが栄に同感する。オレなんか、アレだぜ?溺愛されすぎて電車も一人で乗れなかったんだぜ?」

 裕翔が、そんな事を言う。だが、その「溺愛された」というワードは、親に愛されなかった者たち───虐待されて、無視されて、疎まれ続けた彼ら彼女らにとっての最大の地雷。


「愛されてたなら、まだマシじゃない!つむは...つむ達は...愛さえ貰えなかったんだよ!」

 裕翔は、皆から睨まれる。そして、裕翔は入ってはいけない聖域に入り込んでしまったことを知る。


「───ごめん。言っちゃいけないことを言った。溺愛も、愛だよな...ごめん。皆とは、違うんだ」

 裕翔の謝罪。捉え方によっては、嘲笑とも捉えられる謝罪。


 だが、裕翔は形式的には誠心誠意謝っているので、誰も責めることができない。せめて、最後の「皆とは、違う」と言わなければ、ささくれはできなかっただろう。


 ───だが、そこで余計な一言を、蛇足を付け加えてしまうのが裕翔であった。


 裕翔は、破滅の道に1歩ずつ進んでいっていた。


「ワイもすまんかったな。皆、訳ありでここに来てるはずやな。少し、冷静になれたわ」

 津田信夫も、申し訳無さそうにそう言った。


「いや、大丈夫だよ。今いる状況が幸せって気付くのは、難しいことだからね」

 俺は、そう言って津田信夫を許す。戒めても、何も生まないだろうと思ったから。


「俺が言えることとしては、情報④はまるっきり真偽の判断がつかない。情報⑤を見ないと、何とも言えないかな」

 そう、言った。


「では、情報⑤の開示でも行きますか?」

 若干、暗くなった雰囲気の中、マスコット先生が口を開いた。


「情報⑤───」


 マスコット先生は、どこまで生徒のことを知っているのだろう。この学校に入らず、一般受験をしたって合格できるような人物しかこの学校に集まらないだろう。


 だが、先程の一件で気付くことができた。


 ───皆、何か訳あってこの学校に来ているのだ。


 俺は、金銭的な問題の為だったが、もっと深刻な問題───虐待やいじめなどから、逃げるためにこの学校に来ている人はたくさんいるだろう。


 皆、一概に平和だとは言えない人生を歩んできた事を知る。そして、これからも波乱万丈な人生が待ち受けていることを想像することは容易だった。


 長かったような、だが一瞬にも感じられるような間が空き、また場を混乱させるような「情報⑤」が開示される。


「───細田歌穂と付き合っている」


 池本栄の情報

 ①小寺真由美を殺した

 ②村田智恵に恋している

 ③生徒会に所属している

 ④親はデスゲームの運営に関係している

 ⑤細田歌穂と付き合っている

『スクールダウト』

情報の公開される順番 津田信夫・森宮皇斗・宇佐見蒼・森愛香・池本栄・村田智恵

現在 情報⑤の開示

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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