4月10日 その②
俺が皆に行う忠告。それは「教室に出るな」ということ。
「教室の中が、一番安全だ!全員が全員見張っているこの状況が一番安全!」
人混みの中で行われる犯罪は、スリなどの物を盗む系統だ。人混みの中で、殺人を行えば途端にバレてしまう。
「え、じゃあ...他の皆は!」
「教室から出ていった人物を調べてくれ!裏で、きっとマスコット先生の手先───生徒会が暗躍している!」
「───ッ!」
「な、なんやと?そんな根拠はあるんか?」
「これは、自分の知られたくない情報を強制的に晒されるゲーム!人数が減って、有利になるのは俺達本戦参加者の方なんだ!全員の前で情報を晒された津田信夫達と、人数が減った状態で情報が晒される俺や智恵の、どっちの方が得だと思う?」
「栄や智恵だな」
俺の疑問に、森愛香が答える。
「そうだ!それは、不平等だと思わないか?森愛香が{パーフェクトゲームしたらお前の首を斬る}と言うお互い命を賭けるという平等なゲームを行っているゲーム運営が、こんなところで不平等にする訳がない!なら、裏で何かが───生徒会が暗躍してるとは思わないか?」
「それは、一理あるな...」
「だから、ここは教室が一番安全なんだ!皆の命も守れるし、生徒会を暗躍させることもない!」
「面白い推理だな」
康太はそう言って、スマホを取り出す。
「なら、皆を教室に呼び戻したほうがいいだろう!教室がいない人に早急に連絡を取ろう!」
康太がそう言うと、数人の生徒がスマホを取り出して、この場にいない生徒に連絡を取る。
「───と、栄君の名推理には拍手喝采を送るけど森愛香の情報⑤の平塚ここあを殺したという情報は話し合わきゃならないピョン」
宇佐見蒼の提案。
そう、森愛香が話し始める直前に、山本慶太が暴れ始めた。慶太と同じチームGの拓人に言わせると「いつも、夜になると慶太は暴れ出すんだ」だと言う。
───もし、これが拓人を殺す罠だとするならば。
───いや、マスコット先生が「柏木拓人」と名指しで運ばせた。
これでは、是が非でも拓人は死ぬことになってしまう。先生の命令に従って死ぬのだ。
───いや、違う。
誰が拓人は生徒会じゃないと断定した?
拓人が生徒会で、慶太を殺すようにわざと仕向けたのかもしれない。先生に運べと言われて、あたかも自分は殺人犯ではないかのように。
きっと、「ドアが開かなかった」と理由を付けてリビングに拓人は寝かせるだろう。
もし、拓人が生徒会ならば、そこを殺す。
───拓人が生徒会じゃなければ、本当の生徒会の誰かが慶太を殺し、拓人を犯人に見立てる。
俺の頭の中では3つの仮説が並んでできていた。
1.慶太が生徒会説。
2.拓人が生徒会説。
3.2人以外の誰かが生徒会説。
そして、どの説も肯定できないが否定もできないのだ。友達となった、拓人を生徒会だとは疑いたくなかったし、拓人の爽やかさからは「殺人」を行えるような感覚はしなかった。
俺は、祈るように自らの両手を握る。拓人と慶太の安全を祈った。罠じゃありませんように、と。
「妾は平塚ここあなど殺していない。第一、わざわざ殺す必要が無いだろう。デスゲームなら人を殺してもいいと思っている訳でもあるまいし」
「それを言われるとボクは何も言い返せないピョン」
宇佐見蒼は、先程「◯」だと公開された「デスゲームならば、人を殺してもいいと思っている」と言うところを突っつかれて舌を出す。
「だが、妾を殺人犯と疑うのなら情報⑤に投票すればいい。妾は、お前らにポイントを与えずに平塚ここあの殺人犯でもないと証明されて一挙両得で困るところは無いからな」
その、堂々たる言葉に一同は黙り込んでしまう。
───さて、誰に投票しようか。現在、俺は2ポイントを手に入れており森愛香の情報④「暗所恐怖症だ」は、俺の右手を握り、バレないように震えていたあたり真実だとも言えるだろう。
───だが、平塚ここあを殺した犯人が誰かも知りたくはある。
津田信夫の情報④「平塚ここあを殺した犯人を知っている」が嘘であることがわかり、津田信夫に犯人だと名指しされた中村康太は犯人ではないことがわかった。
ここで、森愛香も「犯人じゃない」と言うことが分かれば犯人候補から合計で2人抜けることとなる。
ここでポイントを稼ぐか、平塚ここあを殺した犯人じゃないと証明するべきか。
───皆は、どこに入れるだろうか。
俺は、それを考えた。あげられている情報は以下の5つ。
森愛香の情報
①両親は仕事をする上で、政治家に根回ししている
②親はデスゲームの運営に関係している
③デスゲームに参加する以前に人を殺したことがある
④暗所恐怖症だ
⑤平塚ここあを殺した
先程の、暗闇でも森愛香は怖がっていないと皆は錯覚するだろう。だから、きっと情報④には入れないはず。
なら、皆は他の情報にいれるはずだ。なら、情報④に入れてポイントを稼いでも問題は無いだろうか。
───よし、決めた情報④に入れよう。
「では、投票に移りましょう。5人は目の前にあるタブレットで投票してください。もちろん、どれにいれるか話し合ってもらってもいいですよ!」
マスコット先生の声とともに、皆が何かブツブツと呟きつつも投票に入れる。智恵は、今回は何も聞いてこなかった。そして───
森愛香の情報
①1票
②0票
③0票
④2票
⑤2票
「な───」
俺の、右側からフツフツと殺意が漲って来ていた。
「では情報④と情報⑤のどちらの真偽を発表するか、ルーレットで決定します!」
白板に、webルーレットが映される。そして、「情報④」と「情報⑤」の2択でルーレットは回りだす。
情報⑤になってくれと、切に願う自分がいた。情報④になったら、俺は右にいる森愛香に殺されてしまう。
「結果は、④!」
マスコット先生の声と共に、森愛香の視線が、俺の体を穿つ。俺の額には、冷や汗が出ていた。
『スクールダウト』
情報の公開される順番 津田信夫・森宮皇斗・宇佐見蒼・森愛香・池本栄・村田智恵
現在 森愛香 情報の公開
栄、ピンチ!





