4月10日 その①
前回までのあらすじ。
どんどん話が進展していく、激動の第2ゲーム『スクールダウト』は、佳境に突入しようとしていた。
今の時刻は、4月10日午前0時21分。
何故、こんな深夜まで『スクールダウト』を行っているのかというと、マスコット先生が───いや、マスコット先生達が持つ謎の能力───言うなれば、GM権限によって4月9日の朝9時ほどだったはずが一気に時間が過ぎていった。時間が、変わる時に俺達は尿意や空腹を覚え、それらもGM権限によって消してしまった。
何が起こっているのかわからず、戸惑っている今。森愛香の最後の情報でもある「情報⑤」が開示されて、森愛香には真偽がわからなくも「平塚ここあを殺した」と言う容疑がかけられている。
***
「───ほう、妾が平塚ここあを殺したとでも言いたいのか?」
森愛香が、足を組みながらそう述べる。すね毛一つ生えていないキレイなふくらはぎが、俺のところからはよく見えた。
「でも、森愛香は会議に出ていなかったし...」
「話し合って、答えがわかったのか?殺した時間に部屋に出ていたか否かさえわからなかったあの時で」
「でも、集合に応じていたら、最低限の信用は───」
「あ!」
中村康太が、意見を言おうとした途端、柏木拓人が声を上げる。柏木拓人が指を指した方向にいたのは、一人の男子生徒───山本慶太であった。
「分解してやる、この慶太が!」
「───ッ!」
山本慶太が、康太に迫る。
「皆、避けて!」
そう声を上げるのは、拓人。だが、声をかけるのは遅かった。
”ダンッ”
「───ッ!」
康太に当たるのは、山本慶太が放った強めの1発のパンチ。俺は、何がなんだかわからなかった突如として、山本慶太が暴れ始めたのだ。
「分解してやる!」
山本慶太はそう言って、康太に迫る。
「慶太を寝かせて!そうしないと、暴れ続ける!」
慶太と同じチームGである拓人がそう説明する。他にも同じチームGである東堂真胡は、焦ったような顔をして、成瀬蓮也はビクついていた。
「何が起こってるんだ...」
わからない。理解が追いつかない。突如として暴れ始めた。本当に理解ができない。
夜になり「情報⑤」の議論が開始されると思いきや、山本慶太が暴走しだす。想像の範疇を超えている。理解させようとしていない。
「───とりあえず、話は落ち着かせてからだ!」
俺も、山本慶太をを抑えるのに協力しようと思ったが、今座っている椅子から降りてしまうと、退場とみなされ「死亡」してしまうので降りることはできなかった。
拓人の活躍があり、慶太は取り押さえられた。そして、そのまま眠りについた。
「いつも、夜になると慶太は暴れ出すんだ。申し訳ない...」
「眠ってしまったようですね。もう0時ですし、帰りたい人は帰ってもらって構いませんよ。ゲームを最後まで見たい人は見ていってもらっても構いません。あ、それと柏木拓人君は申し訳ないですが、山本慶太君を背負って寮に戻ってもらいませんか?」
マスコット先生は、そう述べる。すると、教室を出ていく人がチラホラと見えた。
「わかりました。では、慶太を運んできます」
拓人は、慶太を背負う。そして、教室を出ていった。裕翔が、康太によって背負われ保健室に運ばれる姿を重ねていた。
凱旋をした英雄の裏では、踏み躙られた人がいることを思い出した。このゲームは、その逆だ。
凱旋すればするほどに、恥を晒してしまう。例えるならば、魔王を倒してきた勇者が全裸で凱旋するようなもの。見られれば見られるほどに、知られたくないものが知られてしまう。
「───あ」
ここで、退場するのはマスコット先生からの優しさだろうか。津田信夫は、全員の前で「デスゲームに参加する以前に人を殺したことがある」と言われてしまった。
───だが、残っている俺や智恵は、少なくとも全員ではなくなる。何せ、慶太が眠りについたのだから。
少なくとも、一人は減るのだ。
「───でも、何故...」
何故、減らしたのか理解ができない。運営ならば、平等にしなければならないはずだ。なのに、どうして───
───あ。
俺にやってくるのは気付き。何が起ころうとしているのか、俺は気付いた。
今日のメインは、あくまで俺達がいまやっている『スクールダウト』だ。先程の時間まで、スクールダウトは全員が見ていた。
だが、全員見ていないのならばどうなる。
大半が『スクールダウト』の観戦をしている今、どこかで殺人が起こっても誰も気付かない。
「死になくたい奴らは皆、教室に残ってくれ!」
俺は、皆に忠告するように大きな声を出す。
「おい、栄。うるさいぞ!妾がたたっ斬ってやろうか?」
「ここは一度黙っててくれ」
俺はそう言って、森愛香に右手を翻す。これは「暗所恐怖症だと話すぞ」という脅しだ。
「───しょうがない...一度だけ、騒ぐチャンスをやろう。貴様の茶々も悪くないだろう」
「ありがとう!」
傍観者達は「栄が森愛香を飼い慣らしている」などと思いつつも、栄の言葉に耳を傾ける。
俺は、こう言い放った。
「教室の外に出るな!一人で行動するときっと、どこかで殺人事件が起こる!」
『スクールダウト』
情報の公開される順番 津田信夫・森宮皇斗・宇佐見蒼・森愛香・池本栄・村田智恵
現在 森愛香 情報⑤の開示





