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4月9日 その⑦

 

 森宮皇斗の3つ目の情報。


 それは、「生徒会に所属している」と言うものだった。


「生徒会って...おい、要するに俺らの敵って...」

「どうせ、否定しても無駄だ。もっとも、余は生徒会なんかではないため肯定もしないがな」

 森宮皇斗は、まるで予想していたかのように眉一つ動かさない。


「生徒会...なのか?」

 俺は問う。優秀な彼が、生徒会ならばこれほどまでに強大な敵はいない。


「是か否か問われるならば、否だ。余は生徒会ではない。証明は───できないな。生徒会ではないと証明するのができないのと同時に、生徒会であるという証明も不可能だ」

 森宮皇斗が続けて述べる。


「だが、本戦は限られた人数───6人しか出場できない。ならば、何故生徒会かもしれないという疑いをかけられる可能性もあるのに生徒会はわざわざ本戦に出場するのだ?自らの身を危険に晒すだけであり、出る意味がないだろう?」

「それはそうだけど...」


「もしかしたら、生徒会は『生徒会に所属している』という文言がまず、選択肢には出ない可能性もある。それならば、生徒会と疑われはしないからな」

 森宮皇斗は、饒舌に解説してくれる。これは、疑われたことへの焦りだろうか。


 ───否、きっとこれは皆へヒントを与えているのだ。


 真偽を見極める方法を暗に教えてくれているのだ。少なくとも、俺はそう捉えた。


 周りに、ざわめきはない。傍観者も妙に落ち着いていた。


 ───森宮皇斗に丸く収められたのだ。


「───ええと、つまり...どういうこと?」

 この場で理解していないのは智恵のみだろうか。智恵が、俺の耳元で聞いてくる。


「皇斗は、生徒会なら危険を冒してまで本戦に参加する理由はないから、俺は生徒会じゃないぞって言ってるの」

「───でも、わからなくない?6割は嘘かもしれないけど、4割は本当なんだよ?」


 智恵が持ってくるのは、根本の話。どれだけ、嘘を並べて真実を嘘に見せようとしたって「4割は本当」なのだ。


 この「4割は本当」で「6割は嘘」という事実は変わらない。森宮皇斗が生徒会であるという可能性は「4割」なのだ。


「そ...そうや!騙されんな!皇斗は4割の確立で生徒会なんや!」

「『生徒会である』と選択肢に出ていないお前が生徒会かどうかの確率は、yesかnoかの2択だから単純計算で5割だな。余よりも確率は高い」

「な、なんやと!」


 単純計算だと、情報が提示されるよりされない方が高くなる。ここも、スクールダウトの恐ろしい部分だ。

 単純計算において、参加していない皆の方が「生徒会である」という確率は50%であり、参加し「生徒会である」という真偽のわからぬ情報が提示された場合、本当に「生徒会である」という確率は40%となる。


 だが、疑われるのは確率が40%である本戦に参加し「生徒会である」と情報が提示された者たちだ。



 ───これは、計算が間違っているのか。それとも、人間の心理が矛盾しているのか。



 俺にはわからない。でも、智恵の発言で「森宮皇斗は生徒会ではない」と信じ込んでいた皆が再度、疑いの目を持った。


「別に、余をいくら疑っても構わない。いくら、余を調べたって生徒会である証拠は出てこないからな。もっとも、生徒会であったとしてもボロなど出さないし墓穴も掘らないが」

 そして、やってくる無言の重圧。皆、思考を回しているのだ。


 ───だが、そんな時に出てくる素っ頓狂な声。


「静かになりましたね。では、情報④を開示します!」

 マスコット先生が、沈黙したのを確認して声を出したのだ。一つ一つに、脳内で議論をさせないというのも、このゲームで混乱しやすい───人を疑い深くなる理由だろう。


 もっとも、深くまで考察できたとするのならば、余計な疑いの目を向ける必要もないし、向けられることもない。だが、ひっきりなしに嘘か真かわからない情報を流し込むことによって無駄な疑いを生み出しているのだ。


「情報④精神病院に通っていたことがある」


 次いで、明らかになる情報④。これまでに比べると、驚くべき内容ではないのは確かだ。


 だが、前に出てきた情報のほとんどが内容が濃いのもあったからだ。


 この情報を友達同士で話している時に単体で出されたらきっと驚いてしまうだろう。


「精神病院?」

「あぁ...そういえばそんな事もあったな」

 森宮皇斗は、昔を思い返すようにしている。郷愁に浸っている───は、少し違うだろうか。


「本当なのか?」

「まぁ、嘘ではないな。信じるか信じないかはあなた次第───と言うやつだな」


 森宮皇斗はそう言うと、少し口角を上げる。


「別に、余の過去を話してやってもいいが特に楽しい内容ではない。それに、今はスクールダウトを行っているから、『全ては作り話だ』と笑い飛ばされてしまう可能性もあるしな」


 そう、これが作り話であたかも本当のように聞こえる話をするだけかもしれない。


「───それでもいいのなら、話してやってもいいぞ?」

 森宮皇斗は少し上から目線で皆に問う。


「妾は貴様の昔話など興味がない。それとも、此奴の乳飲み子の頃からの話に興味があるのか?自慢話など、聞くだけで反吐が出そうだ」

 森愛香が、そう酷評する。そして、椅子に深く座り直した。


「───だが、聞いてやってもいいぞ。妾から、話す許可を得たことに感謝するのだな」

 これは森愛香なりの優しさなのか。それとも、いわゆる()()()()という奴なのか。


 森愛香本人に「ツンデレなの?」などと聞いたら首が飛ぶ未来が見えたような気がしたので、何も言わないでおく。


「では、話そうではないか余の昔話を───」



 森宮皇斗の情報

 ①8分ほどなら息を止められる

 ②過去にもデスゲームに参加したことがある

 ③生徒会に所属している

 ④精神病院に通っていたことがある

 ⑤???

『スクールダウト』

情報の公開される順番 津田信夫・森宮皇斗・宇佐見蒼・森愛香・池本栄・村田智恵

現在 森宮皇斗 情報④の開示



森宮皇斗の口から語られるのは───

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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