RPG 〜剣と魔法と古龍の世界〜 その②
勇者一行vs『古龍の王』。
ゲームのラスボス戦であり、王国戦争の一大決戦とも言えるその戦場の最前線を上から覗くのは人質の栄であった。
「健吾と純介、それに紬も合流した!」
栄は、少しずつだが着実に揃っていく仲間を見ながら喜ぶような声をあげる。
栄のイツメンと呼べるメンバーは栄を含めて8人だが、下にいるのはそのうちの6人。
まだ来ていないのは──
「──でも、まだ智恵がいないな」
『閃光』に続き『魔帝』の相手をしていた智恵は、百鬼夜行との戦場に参戦するのが他より遅れていた。
恋人の智恵の到着が遅いのは、栄にしても心配だろう。
栄は、しばらく智恵のことを考えていたけれども、我に返ってはプラム姫の方へ振り向きこう口にした。
「プラム姫、もうちょっとの辛抱です。俺の友達が、必ず『古龍の王』を倒してくれます。そうすれば、俺達はここから出られます」
栄はプラム姫にそう話しかけるけれども、彼女は神妙な表情をしながら檻の外を眺めていた。
「──プラム姫?」
反応がないことに不安に思い栄がプラム姫の名前を呼ぶと、彼女の眼は少しだけ大きく開かれて栄の方に向けられる。
「あぁ、申し訳ございません。下での戦いに目が離せなくて。申し訳ないのですが、もう一度仰っていただいても?」
「別にそこまで大切なことじゃないんですけど。俺の仲間たちが『古龍の王』を必ず倒すから安心してくださいって話です」
「──そうですね。ここまで辿り着くことのできた勇者様達であれば、『古龍の王』を倒すことさえ夢ではないのかもしれません」
プラム姫は百鬼夜行を倒すということを信じられていないのか、曖昧な返事をする。
だが、何千年と倒されていない『古龍の王』が倒されることなど想像もできないのだろう。
そこのところの常識が栄とは違うのだ。栄にとって百鬼夜行は「倒すことのできるゲームのラスボス」なのだが、プラム姫にとっては「何があっても倒すことのできない天変地異のようなもの」なのだ。
栄の勝利の願いは、下で戦っている6人に届くのか──。
「──掴めるような物体を魔法で生み出しても逆に武器にされちゃう。なら、炎魔法とかの方が正解かな」
こちらは、百鬼夜行からは多少の距離がある魔法使い3人組。
現在は、健吾がヒットアンドアウェイで攻撃しつつ稜が盾で防御に徹している。2本の大剣の相手は大変だったが、彼らの尽力があることでこうして作戦会議ができている状況だった。
「そうだ、炎魔法で思い出したんだけどSランクの炎魔法を共工を倒した時に使えるようになったよ」
純介の考察に対して梨央がそう答える。そして、純介に大体の効果を説明する。
「──うん。それなら百鬼夜行にも通用しそうだ」
「本当?」
「うん。使ってみる価値はありそうだね」
「わかった、じゃあ使ってみる!」
そう口にして、梨央は魔法杖を百鬼夜行の方へと向かう。そして──
「〈崩壊する獄炎〉!」
梨央がそう口にして、強力な炎魔法を放つ。
刹那、百鬼夜行の体から発火して瞬く間に全身に火が回っていく。
「炎こ
魔ん
法な
かも
、の
小す
賢ぐ
し消
いせ
。る」
百鬼夜行はそう口にして、2本の大剣で風を生み出す。
「──凄い風だ!」
攻撃を受け止めていた稜が吹き飛ばされそうになるのを必死に耐える。人一人を容易に飛ばすことだってできる風が起こっても、百鬼夜行の体に点いた火は消えそうにない。
「残念、〈崩壊する獄炎〉は狙った対象を燃やし尽くすまで消えないの!」
遠くから、自信ありげに梨央の自慢げな声が聴こえてくる。
狙った対象──今回の場合は、百鬼夜行を燃やし尽くすまで子の炎は消えることはない。
「面
倒
だ」
百鬼夜行は火だるまになりながらそう口にする。幸か不幸か、彼は最初からパンツ一枚だったので炎を付けて燃やされる服はない。
「俺だ燃
にかえ
はらよ
今、う
、俺と
再の、
生身死
能体ぬ
力がこ
がどと
あれは
るだな
。けい」
百鬼夜行は『古龍の王』の権能を行使して、龍種の一体である鳳凰を吸収し、鳳凰の持つ再生能力を不完全ながらも会得した。だから、〈崩壊する獄炎〉で燃やし尽くされることもない。
だから、〈崩壊する獄炎〉はただ少し熱いだけお飾りになったが──
「こ死使
のぬっ
炎だた
をけ魔
消じ法
すゃ使
方ない
法いが
は。死
、こね
何のば
も魔消
俺法え
がをる」
「──梨央ッ!」
百鬼夜行の発言の意図を理解した稜が、梨央の名前を呼ぶ。そして、稜が盾と剣を持ち換えて百鬼夜行の後きを止めようと画策するも、失敗。
百鬼夜行は稜の攻撃を華麗な足さばきで回避し、そのまま梨央のいる魔法使い3人組の方へと走っていく。
「させないっ!〈星月夜〉!」
美緒は、百鬼夜行の方へと矢を放つ。その矢は百鬼夜行の体に突き刺さるけれども、動きを止めることはできない。
「──止まらないか」
「じゅんじゅん!あれ使おう!メイちゃんが使ってた!」
「──わかった!」
紬の提案を一早く理解した純介は、強く魔法杖を握って百鬼夜行の方へと向ける。そして、2人の詠唱が重なり──
「「──〈鍾乳洞々〉!」」
地面から触手のように鍾乳洞が生えて来て、百鬼夜行の足に搦まって動きを止める。
これで、百鬼夜行の動きが止まる。そう思った勇者一行だったが──
「邪
魔
だ」
「──マジか」
百鬼夜行は、足に絡まった鋼鉄の触手を簡単に引きちぎって足を止めることなく梨央の方へ接近する。
「──梨央ッ!」
稜も健吾も全力疾走しているが、梨央の救出には間に合わない。純介も紬も最適な魔法を考えるけれども、どれも反撃の材料に使われる未来しか見えない。
そのまま、百鬼夜行のは梨央の方へと大剣を振るい──
「──〈焔天の月〉」
大剣を持つ百鬼夜行の腕が斬られ、空を飛ぶ。そこに現れたのは、7人目の勇者の名を6人と栄が呼ぶ。
その勇者の名は──
「「「──智恵!」」」





