RPG 〜剣と魔法と古龍の世界〜 その①
勇者一行と『古龍の王』の戦闘が行われている城内都市パットゥの第五層の最奥に向けて走る人影は、大きく分けて2つのグループに分けられる。
一方は、『魔帝』討伐を実行した智恵が単独で栄救出に向かい、もう一方では健吾と純介、紬に『剣聖』の4人が『魔帝』探しと並行して栄救出の糸口を探している。
──そして今、後者の4人は『古龍の王』との戦闘が行われている城内都市パットゥ第五層の最奥に辿り着いた。
「如何にも──って雰囲気だね」
「うん」
「まだ『魔帝』は見つかってないけど、どうする?役割を分担するか?」
純介が巨大な扉をゆっくりと撫でながら、この奥にラスボスがいそうなことを察する。
紬もそれに同意し、健吾は美沙を殺した『魔帝』──園田茉裕のことを憂慮していた。
そこで、『剣聖』が3人に向けてこんな提案をする。
「『魔帝』のことについては僕に任せてよ。君達は早く友達を助けたいだろう?」
『剣聖』の粋な計らいを前に、3人は少しも考える素振りを見せず──
「「「お願いします」」」
栄救出を目標にしている3人は、『剣聖』の案を即刻採用する。
茉裕の相手は、高レベルにして猛者オタクの『剣聖』に任せておいて問題ないだろう。きっと、『剣聖』なら3人が対処できない魔法も対処できる。
「──それじゃ、『魔帝』を倒したらすぐにここに戻ってくるから。よろしくね」
『剣聖』はそう口にすると、その部屋の扉の前から走り去っていった。
「茉裕のことは『剣聖』に任せて、オレ達はオレ達のやるべきことをやりますか」
そう口にして、健吾は扉に手をかける。荘厳で巨大な扉だったが、その見た目とは反して少し力をかければ自動で開いて──
「──美緒!」
「稜と梨央も先に来てたのか」
「無事でよかった!」
そこで戦っている3人の姿を見て、新たにやって来た3人が思い思いのことを口にする。
『古龍の王』との栄をかけた最終決戦を、先に稜と梨央・美緒の3人は行っていたのだ。
「正直、一緒にいるのが健吾じゃ不安だったけど3人がいてくれるなら安心だね」
「どういうことだ、それは」
「冗談だよ。行こう」
そう口にして、純介は『古龍の王』との戦闘に乱入する。
「助太刀に来たよ、皆!〈鋼鉄の巨人〉!」
メイとの戦闘の最中で身につけた魔法を純介は使用する。鋼鉄の巨腕が空中に生まれて『古龍の王』を押し潰さんとする。
「──純介!」
「ま
た
来
た
か」
突然の助太刀に稜は顔を明るくする。百鬼夜行の方は、ペストマスクを被っているためその表情までは読めない。
「美緒、合流できてよかった!」
「健吾こそ。大丈夫だった?」
「オレは問題ないけどよ。美沙が死んじまった……」
「美沙が……」
純介と紬にも報告したが、皆同じように悲しそうな顔をするな──そう健吾は思った。
「じゃあ、尚更負けられないね。美沙の犠牲を無駄にはできない」
美緒はそう口にして、弓を引く。〈鋼鉄の巨人〉が百鬼夜行を押しつぶさんとしている以上、迂闊に接近できないが美緒の持つ弓は別物だ。
飛び道具である弓矢は、遠くから攻撃が可能──、
「──〈千射観音〉!」
「面
倒
だ」
百鬼夜行はそう口にして巨大な双剣を床に突き刺す。
上空から降ってくる〈鋼鉄の巨人〉を両手で受け止め、それを掴む。そして──
「矢飛
なば
どし
、て
弾や
きる」
百鬼夜行は、〈鋼鉄の巨人〉を振り回して矢を全て弾こうと企む。
「──マジか!」
「あんな巨大なものを……」
健吾が驚き、遠くで純介が悔しそうに下唇を噛む。
まさか、〈鋼鉄の巨人〉の腕を受け止めてそれを振り回す──だなんてことは考えもしなかった。だって、百鬼夜行だって人間だ。人間が、十トンをゆうに超える鋼鉄を振り回せるだなんていくら生徒会でも考えもしないだろう。
「皇斗君でも同じことできるのかな……」
と、腕が届かない範囲にいる魔法使い3人組の梨央はそんな感想をこぼす。
流石の皇斗でも〈鋼鉄の巨人〉を振り回すのは──目の前で実演している人がいる上、皇斗には絶対無理と断言できないところがもどかしい。
──と、今はその話ではない。
〈鋼鉄の巨人〉の餌食になりそうな、健吾と美緒・稜を助けなければならない。
「〈衝撃吸──ッ!できないっ!」
盾を構えて〈鋼鉄の巨人〉を止めようと画策した稜であったが、百鬼夜行の振り回す〈鋼鉄の巨人〉が間に合わなかったのか、彼も〈鋼鉄の巨人〉の回転に巻き込まれてしまう。
「──じゅんじゅん、どう止めよう!?」
「風魔法で相殺させる。2人も手伝って!」
「「わかった!」」
純介のお願いに、梨央と紬の声が重なる。そして──
「──〈殲滅の風〉!」
「「──〈神出鬼没の花吹雪〉!」」
花弁を伴う暴風が吹き荒れて、髪が3人の視界の端ではためく。目も開けられていられない程の暴風の中で、やっと百鬼夜行の振り回す〈鋼鉄の巨人〉は動きを止める。
「──これで消せる」
純介がそう口にするのとほぼ同時に、〈鋼鉄の巨人〉は霧消してMPに戻っていく。それを確認して、3人は風魔法を解除した。
「皆、ごめん!まさか百鬼夜行に武器を渡すことになるとは思わなかった!」
純介が大きな声で謝罪をする。それを皆は、サムズアップで返事をする。
──問題ない。
戦場にいる勇者一行の気持ちが一つになった瞬間だった。
「何全
人員
い、
よ俺
うが
があ
俺の
に世
はに
何送
もっ
関て
係や
なろ
いう
。!」
百鬼夜行は、そんな勇者一行を前にそう宣言をする。
まだまだ、『古龍の王』との最終決戦は始まったばかりであった。





