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勇魔決戦 その㉔

 

 茉裕の想定以上に苦戦が続いている勇魔決戦。

 その第四幕の中で、茉裕は今後について思案していた。その議題とは──


 ──MP不足。

 第一幕で乱打した魔法の分のMPは魔法杖のなかった第二幕で回復したけれど、第三幕で使用したMPが多すぎた。


 自分でも「MPを使い過ぎた」と思っても、それを「仕方ない」で許容できるくらいには皇斗と愛香のペアは──否、皇斗は強すぎた。

 日進月歩で強くなっている気がするし、彼一人でなんとかなるんじゃないかとも思う。

 皇斗一人のためだけに、〈常識外れの(イッツアスモ)小さな世界(ールワールド)〉と〈喰い改める権能(ガブリエル)〉・〈蛹の死、蝶の生誕(バタフライエフェクト)〉、そして〈月光に揺れる亡人の影(ドッペルゲンガー)〉を使わされた。


 本来であれば、これらの魔法はレベル80の人でも一回使えば他の魔法は使えなくなるような大技だった。

 それもそのはずだ。現実を覆し、人を容赦なく喰い殺し、死をキャンセルし、ドッペルゲンガーを作るそれらの魔法が簡単に使われてしまっては世界の均衡が崩れてしまう。


 皇斗の相手は皇斗のドッペルゲンガーに任せたから、皇斗と愛香の動きは封じ込めることはできた。

 だが、それをするのにできるMPを使い過ぎている。


「そうなると、2人の相手の時はMPを温存しなきゃだなぁ……」

 2人のくだらない作戦会議を見下ろしながら、茉裕はそんなことを呟く。

 ポーションも残っていないし、MPも最大値の3割程度まで減っている。

 そして、回復するMPのほとんどを滞空することに使っているので時間経過によるMP回復も期待できない。


 MPが回復するために、少し身を隠して時間が経つのを待とうと思ったけど智恵に出会ったのが運の尽きだった。

 ここは全力で叩いて、2人を一瞬で殺すしかない──。


 ***


「──智恵の作戦、中々悪くないわね」

「でしょ?」

 梨花から栄の考えてくれた作戦を褒められて、私は嬉しくなる。


「──それじゃ、茉裕に妨害される前に早くやっちゃいましょう。多分今は、魔力の回復を待ってるはずだから」

「わかった」

 強い魔法を連発されると、この逃げ場の少ない廊下では勝ち目が無くなってしまう。


「──じゃあ、せーの!」

 梨花の掛け声に合わせて、私は両手を前に伸ばす。2人の手の向かう先が重なり、そこに私達でも使えるCランクの魔法が出る。


「──〈疾風〉!」

 風魔法のジャンプ台が用意され、梨花が最初にそれに乗る。


「飛、べ──ッ!」

 空中に弾き飛ばされるように上昇していく梨花。茉裕のいる高度を越えて、彼女は天井に衝突しそうになる。


「よいしょッ!」

 梨花は、作戦通り天井に剣を突き刺して懸垂するような形になる。


「剣を刺して何をするつもり?」

「決まってるじゃない。アンタから魔法杖を奪うのよッ!」


 そう宣言した梨花は、大きく体を揺らした後に茉裕の方へと飛ぶ。

 それを見た私も、すぐに〈疾風〉のジャンプ台を踏み込んで天井に突き刺さったままの剣を目指す。


「──二度も同じ手を食らうわけないじゃない。〈貫穿する暴風斬(センターオブジアース)〉」

 そう口にして、茉裕は丸腰の梨花へ向けて風の刃を放つ。


「──ッ!」

 梨花が声にならない声をあげると同時、私は梨花の方へと飛びつく。


 ──作戦変更。

 栄の言う「プランA」はこの時点で終了し、茉裕が梨花に向かって攻撃した場合の「プランB」に移行する。


「──梨花!手を!」

「智恵!」

 私は梨花の方に飛び、梨花は空中で私の方へ体を捻る。風の刃から視線を離すことにどれだけの恐怖があったのだろうか。彼女の目元からは雫がこぼれているような気がした。


「させないッ!」

 私はそう口にして、梨花の手を取る。そしてそのまま、反対方向に投げた。

 これで、梨花が〈貫穿する暴風斬(センターオブジアース)〉で真っ二つになる可能性は無くなった。


 問題は、私──。


『智恵、行ける』

「──栄」

 栄は私の脳内にいるから、空中だろうと関係ない。彼はプカプカと浮きながら、私に付いてきてくれた。

 そのことが、どうしようもなく嬉しい。


「──〈焔天の月(ルナ・イグナイト)〉」

 私は、炎を付与した剣を振るい風の刃にぶつける。空中で私の剣から出る炎が燃え盛り、熱い空気が首筋を撫でる。


「──何を」

「この風、借ります!」

 私はそう口にして、鋭さを失った〈貫穿する暴風斬(センターオブジアース)〉を踏み台に茉裕の方へと飛ぶ。


「〈絶──」

『智恵、おいで』

「──ッ!」

 私の目に映るのは茉裕ではなく、栄の姿。

 いつの間に栄はそこに移動したんだろう。栄がこっちに手を伸ばしている。

 栄を攻撃したくないから、私は咄嗟に手から剣を離して空中にすっ飛ばす。


「──武器を手放した!?」

 栄の後ろくらいから茉裕が驚いたような声をあげる。


「──栄、会いたかった」

 私は、目の前にいる栄に抱きついて──


「──消え」

 栄が消えたと思ったと同時、私の手の中にあったのは茉裕の魔法杖。


「──フェイントを読まれたか……」

 茉裕がそう口にするのをよそに、私と茉裕の2人は床に落ちていく。


「智恵、魔法杖を壊してッ!」

「え、あ」

 私がその魔法杖を壊そうとするのと同時、ともに落下する茉裕が私の持つ魔法杖から手を伸ばして奪い返す。


 また飛ばれる──。

 私はそう思ったけど──


「──ッチ。MPが足りない……面倒なことを」

 茉裕はそんなことを口にして、受け身を取った着地する。そして──


「──〈変容する魂の片鱗(エンドレス・エンズ)〉!」

 私の放り投げた愛剣トリカブトを使って、茉裕に不意打ちを仕掛けたのだった。

空を飛ぶ魔法(作中で名称不明)、電車の初乗り運賃みたいに飛び始めは多いMPが必要です。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
MPは大事ですよね。 確かにこれだけの魔法を簡単に使えたら、 色々とバランスが崩壊するが、 この辺が今後の鍵を握る事になりそうですね。
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