勇魔決戦 その㉒
「──〈三日月斬り〉!」
茉裕の放つ〈貫穿する暴風斬〉──風の刃を、私は剣を振るうことで対処する。
このくらいの攻撃なら、魔獣の森を抜けた私ならへっちゃらだ。
『問題は、どうやって茉裕に攻撃するかだな……』
イマジナリー栄が、上空にいる茉裕のことを仰ぎながらどう倒すかを考えてくれている。
そういう作戦を考えるのは苦手だから、こうしてイマジナリー栄がいてくれるのはありがたい。
『斬撃を飛ばす技は届きそうか?』
「──やってみる」
斬撃を飛ばす技と言えば、前々から習得してたけどあまり使い道がなくて使わなかったこの技が最適だ。
「やっぱり智恵程度でもAランク魔法じゃ──」
「〈夕闇に溶ける幻影〉!」
茉裕の軽口を完全に無視して、私は茉裕の方へ斬撃を飛ばす。
さっき私を襲った〈貫穿する暴風斬〉は弧を描くように進んだけど、私の〈夕闇に溶ける幻影〉は真っ直ぐに飛んでいく。
「──私の真似事のつもり?」
茉裕はそう呆れたようにそう口にすると、横にゆっくりとスライドするように避ける。
そのため、斬撃は茉裕のいた位置まで届くけれども誰にも当たることはなく天井に当たって消えた。
『これだけ距離があると避けられるか……』
大量の攻撃の中に斬撃が混ざっていたら結果が変わってくるのかもしれないが、私はあまり飛び道具のような攻撃方法を持っていない。
「このままじゃ一方的に攻撃されちゃう」
『空を飛べる方法は無いのか?』
イマジナリー栄にそう問われて、何とか空を飛ぶ方法を考える。
「スカイブーツ! ──は、壊れちゃったしなぁ……」
鯀の討伐作戦の際に『剣聖』から借りたスカイブーツは、鯀との戦いの最中で壊れてしまった。
『剣聖』は壊れた靴の返却を求めなかったから持っているけど、スカイブーツはもうただのブーツになってしまっている。
愛香なら壊れてないスカイブーツを持ってるかもしれないけど、今から探すのは難しいだろう。
「──方法、思いつかないかも」
『そうか……』
イマジナリー栄は、顎に手を当てながら考えるような仕草を取る。私なら思いつかないことも、栄なら思いついてくれるかもしれない。
「──何をブツブツ言ってんのかわからないけど、容赦はしないわ。〈暴雷の雄叫び〉!〈大宙紅炎〉!」
茉裕から放たれるのは2種類のAランク魔法。
炎渦と雷渦の2つが二重螺旋構造を生み出しながら智恵の方へと迫ってくる。
『受けるのは無理だ、避けて』
「わかった!」
栄の指示に瞬時に従い、私は迫り来る二属性の大渦を大きく飛んで回避する。
火雷は地面にぶつかり大きな火花を散らした後、下層へ姿を消す。
「とりあえず避けれた……」
『智恵!油断するな!下からくる!』
「──ッ!」
栄の叫ぶような声と共に、私の立つ廊下が揺れて温度を感じる。
栄の方へ転げるように飛ぶと同時、先程まで私が立っていた床が崩れて大渦が天高く沸き上がる。
──栄がいなければ、死んでいた。
自分の心臓が大きく跳ね上がっているのを感じる。
「栄、ありがとう……」
『俺は智恵の味方だ。危ないのを知らせるのは当たり前だろ』
栄がそう口にして笑うので、私の笑顔も隠せなくなってしまう。
『──と、それより作戦を思いついた。智恵もCランク魔法なら使えるだろ?』
「うん。〈焔天の月〉を使うときとかに使用するし。でも、Cランク魔法で攻撃したって大してダメージにならないしさっきみたいに避けられちゃうよ?」
『んや、攻撃するわけじゃない。Cランクの風魔法があればなんとか浮けないかなって思ったんだ』
「成程。頑張ってみればいけるかも」
──皇斗は応龍との一騎打ちでCランク魔法〈泥土〉を足場にするという技を見せたが、地面に即席で作った足場を連続でジャンプするのは常人にできることではない。
だからイマジナリーの栄は、より現実的な風魔法に頼ると言う方法を考えたのだった。
「──〈疾風〉!」
私はそう口にして、自分の足元に向けて魔法を放つ。フワリと体が浮くような感覚がして、体を撫でるように空気が通る。
『どうだ?』
「行けそう──かも」
「揃いも揃って飛ぼうと画策してる見たいだけど、アホね」
茉裕がそう口にすると同時、目の前から全てを飲み込むように炎の大渦が迫ってくる。
『智恵!』
左右に回避は──いや、ダメ。後ろには雷の大渦も控えてる。左右に飛んでも、カバーされちゃう。なら──
「イチかバチか!〈疾風〉!」
私は、足元に向けて〈疾風〉を放つ。重ね掛けした〈疾風〉は私の体重を軽々と持ち上げて宙へと投げる。
「──飛んだ!」
まだ茉裕に届く距離ではないけれど、私は確かに宙へと飛んでいた。
──が、下から雷の大渦が迫ってくる。こっちを対処しなければ、私は雷に焼かれてしまうだろう。
「──よし。ここは!」
そう口にして、大きく息を吸って剣を構える。そして──
「〈表裏一閃〉!」
私は、雷の大渦──〈暴雷の雄叫び〉を一刀両断する。そして、地面に着地した。
残るは〈大宙紅炎〉だけだが──、
「──〈流星斬り〉!」
『この声は』
教室で何度も聞いた声を耳にして、私と栄の2人は反応する。階段近くで戦っていた私達の元へ駆けつけたのは──
「──茉裕、絶対に逃がさないんだからッ!」
「──ッチ。しつこいなぁ、もうアンタの出る幕はないんだけど」
ボロボロになりながらも剣を茉裕の方へ向けるのをやめない復讐心に燃える少女──秋元梨花であった。





