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勇魔決戦 その⑰

昨日は更新できなくてすみません。

卒業式の後なら書けるか~とか思ってたら慣れない式典でちゃんと疲れました。

 

 先代『魔帝』の9番弟子にして、唯一当代『魔帝』からの虐殺から運よく逃れた前時代の生き残り(オーパーツ)──『鋼鉄の魔女』アイアン・メイデンの降らせた〈鋼鉄の隕石(メギド)〉は、充分に当代『魔帝』園田茉裕を殺すに相応しい威力の魔法だった。


 茉裕はその隕石を見て「流石にここまでか」と思ったし、実際百鬼夜行の介入がなければ助からなかった。

 今回の隕石は鳳凰を取り込んだ百鬼夜行に救われ、前回の隕石は鳳凰のおかげで窮地を脱しているのを考えると、このゲームで茉裕の窮地を救ったMVPは不死鳥だと言わざるを得ない。


 ──そんな不死鳥を取り込んだ百鬼夜行も、あくまで人質である栄が死んでしまったら自分と茉裕がゲームの世界から現実世界に戻る方法がなくなってしまうため、仕方なしに隕石を止めたのだ。

 それが結果的に今この瞬間の茉裕の手助けになっただけで、茉裕を助けるために百鬼夜行が動いたわけではない。そもそも、茉裕が心酔させたものに命令するには声の届く範囲に人を置いておく必要がある。


 要するに、何が言いたいのかというと、茉裕は今回ばかりはマグレで助かったのだ。

 だが、彼女はその約束されたかのような奇跡で鬼に金棒──要するに、最強の武器を手に入れたのだ。それは──


「──魔法杖、ゲッチュ―」

 〈鋼鉄の隕石(メギド)〉を使用して、MP不足で失神しかけていたメイから奪い取った魔法杖が茉裕の手元には残った。

 魔法杖の持ち主であるメイは、魔法杖を奪って自分の傷を癒した後に殺そうとしたけれども、いつの間にか姿をくらませた。

 多少は探してみたものの見つからなかったから、諦めて先に進むことにした。


 メイはNPCだから殺したところで旨味は然程ないし、MPも魔法杖もないから脅威にはなり得ない──そう判断した。

 どんな偉大な魔法使いだろうと魔法杖が無ければ赤子と一緒なのは、梨花に魔法杖を壊された茉裕が一番理解していることだった。


 ──と、茉裕は城内都市パットゥの屋上で行われたメイとの戦闘を経て、再度魔法杖を手に入れ『魔帝』として君臨する。


 そして、ドラコル王国最強ランキング・魔法部門で第一位を飾るであろう『魔帝』は、メイの魔法杖を持ちながら、目当ての獲物の元へ向かう。


「──〈探索(サーチ)〉」

 周囲にあるMPを探すことのできる〈探索(サーチ)〉を、茉裕は使用する。

 これも、先の戦闘で紬が使用した〈命の灯火(ヒューマンスタンプ)〉と同様に生物を探索するBランクの魔法だ。これを使用すれば、周囲にいるMPを探知することができる。本来であれば、数メートルの範囲しか使えないのだが、無尽蔵のMPを誇る茉裕であれば半径数キロだって見通せることが可能だった。


 ──問題は、MPの場所を見つけるから空っぽの人は探知ができないことと、MP量が多すぎる人がいると全てそのMPで塗りつぶされること。

 前者は、『剣聖』や〈鋼鉄の隕石(メギド)〉を放った直後のメイなどが当てはまり、後者は茉裕に次いで2番目の魔法の実力者が当てはまる──。


「──見つけた」

 そう口にして、茉裕は舌なめずりをする。そして、妖艶な表情を浮かべてそのMPが表す方へと天井裏を歩いていく。


 城内都市パットゥの外を進んでもよかったのだが、やはり寒いのは勘弁だ。

 メイを探して天井裏にやってきたんだし、屋上には誰もいないのならば少しでも暖かいところを通った方が身のためだろう。


「冷えるのは体にも悪いからね」

 防寒など魔法でもどうとでもなるし、茉裕程の実力者ならば降りしきる雪を止めることだってできるだろう。だけど、そんなくだらないことにMPを割く暇はない。余裕がないのではなく、暇がないのだ。


 ──と、言い訳ようなことを思いながら天井裏を歩いているといつのまにか膨大なMPの真上に到着していた。


 ここに、茉裕が生徒会として殺したい男が存在していて──


「──うわぁ!」

 茉裕の立っていた天井裏が破壊されて、炎に包まれる。

 全身が一瞬で炭にななっていく感覚の中で、茉裕はすぐにSランクの回復魔法〈超回復(マスターヒール)〉を使用することで即死を回避した。


「──まさか、私に気付いてるとは」

 足場が燃やし尽くされ、天井裏から第五層へと落下していく茉裕は、すぐに魔法で空中に浮遊する。

 そして、炎から逃れるように空中を水平移動し、炎魔法を放ってきたであろう男の方を見る。その男が持っているのは、魔法杖──ではなく弓で。


「──〈千射観音〉」

「容赦ないわね。でも、そんな攻撃当たらな──ッ!」


 茉裕の方へ突き進んできた無数の矢を、茉裕は避けたはずだった。

 だが、内スラのような動きを描いて無数の矢が茉裕の体に突き刺さる。


「んな──」

 茉裕は、自分を浮遊させ続けるのも忘れて、第五層の床の方へと落下して行く。


「──本当にネズミが天井を這っていたな。疑って悪かった」

「お前が間違いを訂正するとはな。明日、龍種が死ぬのではないか?」

「残念だが、明日死ぬ龍種はいない。妾が全部殺すからな」


 茉裕の耳に入ってくる雑談は、第5回デスゲーム参加者の中でも「最強」と名高いツートップだ。

 そして、茉裕の虚ろの目にはツートップと共にいた一人の少年の姿が映る。


「──」

 その3人の姿を見て、彼女は何を思っただろうか。誰も、悪女である彼女の心の中を察しようとはしない。


 何の抵抗もできずただ彼女は静かに、地に墜ちたのだった──。

茉裕の心酔はプログラミングみたいなものです。

だから、「○○しなさい」も「明日の8時に○○しなさい」も「もし××が動いたら○○しなさい」も可能。

茉裕はそれを夜神月がデスノートの実験をしたみたいに、デスゲーム参加前に色々とやってました。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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