表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

789/833

『剣聖』たる所以 その①


勇者一行と『魔帝』がぶつかり、このゲーム初の死亡者を出した勇魔決戦の第一幕。

その傍らで、多勢に無勢を強いられながらも諦めることなく剣を振るい続ける男が1人──。


「──いやぁ、スゴいなぁ!流石は『死の舞』と称されただけはある!滑らかな動きで一瞬捕らえることができなかった。って、次はその師匠のハルド・ガルガンディアさんじゃないですか!」


当代『剣聖』に迫るのは、第27代『剣聖』アンナ・ワルプルギスと第26代『剣聖』ハルド・ガルガンディア。

唯一女性の『剣聖』となったアンナ・ワルプルギスは、もし仮に他の『剣聖』が生きていればハルドと同様に実力を認められるような剣に愛されていた。だが、女性の『剣聖』は異例だったのでその死であるハルドは『好色剣』などという不名誉な二つ名が付けられている。


当代『剣聖』は、歴代『剣聖』との剣戟を繰り広げつつ口を動かし続けていた。

時に『剣聖』の才能を褒め、時に『剣聖』の逸話を讃え、時に『剣聖』の技量を説く。

それが強者故の余裕なのか、推しを前にしたオタクの饒舌なのかは判別がつかないが、彼は剣を振るい続けていた。


「──と、皆さんとこうして戯れていたいのは山々ですが、勇者の皆をいつまでも放っておくわけにはいかないんだ」

当代『剣聖』は少し寂しそうにそう口にすると、手元にもった剣の動きを止める。


「──まずは」

糸を縫うような繊細で軽やかな動きで、当代『剣聖』は歴代『剣聖』の密集空間を通り抜ける。

そして、1人の『剣聖』の首に剣を伸ばす──。


「──卑怯だと思われるかもですが、先に手を打っておきます」

『石像』──『剣聖』になる前はそう呼ばれていた『剣聖』がいる。

居合の構えを取っていた時間が長ければ長いほど居合の攻撃力が上がる、だなんてふざけた技を編み出した彼は、当代『剣聖』にとって真っ先に討伐したい対象で──、


「──〈森羅の胎動(オールヴィーナス)〉」

「──ははッ!やっぱり」

当代『剣聖』が奇襲をかけるが、それに反応するように『石像』は居合を放つ。

床を抉るようにして斬り、当代『剣聖』に向けて放たれたその技は、『剣聖』の目には収まりきれず──


「──〈絡繰仕掛けの白銀世界〉」

当代『剣聖』は、視界よりも速く感覚で理解し、『石像』とは別の居合を放つ。

剣と剣がぶつかり、大きな衝撃波が髪を揺らす。空気が凪いで音が消え、そして──、


ボトリ。

滑るようにして、袈裟切りがされた『石像』の上半身が静かに落ちる。

血の付着した剣は振らずとも、MPとして分解されて霧消していく。


──ここにいるのは、茉裕の魔法で生み出された偽物の『剣聖』達だ。

実力をコピーした、技名以外口にしない偽物。


「──言葉を交わすことは悲しいけれど、こうして相手できるだけ恵まれているな」

『剣聖』は無邪気かつ能天気にそう口にして、次に斬るべき相手を探す。

──と、そんな暇を与えてくるはずなどなく歴代『剣聖』は当代『剣聖』の方へと飛びかかってくる。


──剣が、剣が、剣が迫る。

34本から32本に減った剣が、当代『剣士』の命を狙って牙を剥く。

そんな数の暴力を、当代『剣聖』はこれまでの修業と旅路で身に着けた剣の技量歴代『剣聖』に対する知識で跳ね除ける。


「いやぁ、流石にこうもたくさん責められちゃうと困っちゃいますね」

だなんて、汗一つかかない爽やかな笑顔で言うのだから、歴代『剣聖』に意思があれば焦るなり苛立つなりするだろう。


──が、目の前にいるのは感情を持たずに目的に従って最適に動き続ける死体だ。

だから、焦ることも苛立つこともせず、ただ無機物的に剣を振るう。


「──と」

当代『剣聖』は、誰かの剣を踏み台に飛翔し、そのまま歴代『剣聖』の頭を踏みつける。


「皆さんを踏むなんてなんて恐れ多いことを……。すみません」

『剣聖』はそう謝りながらも、突き上げるような攻撃を躱しつつある一人の『剣聖』を見つける。


「──オラトリオ・ミラージェさん」

当代『剣聖』が呼んだのは、第17代『剣聖』オラトリオ・ミラージェ。


第一首都プージョンを襲いに切った驩兜の被害を食い止めるために、足場の不自由な海で三日三晩戦ったとされるオラトリオ・ミラージェ。

そして、『剣聖』の頭の上という戦場は、彼にとって格好の舞台で──


「──でも、僕も練習したからさ」

不安定な足場の上で、迫る剣を避けながら容赦なくオラトリオ・ミラージェの首をバッサリと斬る当代『剣聖』。

舞台に立つことも無く、首だけが宙を舞ったオラトリオ・ミラージェの活躍は、これで終わりだ。


「──とりあえず、真っ先に対処しておく必要がある人はこれで全員かな」

当代『剣聖』は、頭の中でどの順番で歴代『剣聖』と戦ったらいいのか考えながら対処しているのだ。


「──残り30人。どうやって倒そうかな」

当代『剣聖』は歴代『剣聖』の犇めく床から少し遠くに着地した後で、満面の笑みでそう口にする。


──『剣聖』同士の戦いは、ここから更にヒートアップしていく。

『剣聖』のその饒舌とついでに剣を止めることは、誰にもできない。

第〇代『剣聖』の他に、二つ名を持ってる『剣聖』は結構います。

『剣聖』になるの前の二つ名のことが多いです。(一部例外もいますが)


あ、『剣聖』の長台詞カット版でお送りしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨城蝶尾様が作ってくださいました。
hpx9a4r797mubp5h8ts3s8sdlk8_18vk_tn_go_1gqpt.gif
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ