鋼鉄の隕石
今回は別視点~
──城内都市パットゥの第五層。
その最奥へと目指し、大廊下の真ん中を歩くのは2人の男女──共工を倒した後の稜と梨央だった。
「──こっち、かな?」
廊下にまで漏れ出るその禍々しい雰囲気の方へ進んできた2人は、1つの扉に到着する。
他の扉と比べても豪華絢爛に作られたその大扉は、ラスボス──『古龍の王』鼬ヶ丘百鬼夜行がいそうな雰囲気を醸し出している。
「ちょっと覗い見てようか」
「うん」
2人は重い扉をほんの少しだけ開けて中を見る。
視界の中に入ってくるのは、校庭のような広大な空間とその奥に用意されている巨大な椅子に鎮座する一人のパンイチペストマスク男。そして、宙に檻が吊るされていた。
「──稜」
梨央も同じ空間を見て同じようなことを思ったのか、稜の名前を呼ぶ。稜は、その問いかけに返事することなくゆっくりと首を縦に振った。
──あの檻の中に栄はいる。
2人は覗き見していた扉を閉めて、大きく息を吐く。
「──いたね」
「うん。どうやって助けようか?」
「正面突破──は難しそうだったね。屋上から行ければ楽そうだったんだけど……」
二人は、第五層から第四層へと降る階段を見つけても第五層から屋上へと進む会談は見つけていなかった。
屋上へ昇る階段など端から存在していないので、どれだけ探しても見つからないから2人が探しに行かなかったのは英断と呼んでいいかもしれない。
そんな2人を英断に導いたのは、1人の聖母で──
「──梨央!稜!」
「「──美緒!」」
稜と梨央の2人と合流したのは、『神速』の討伐を誠と成し遂げた美緒であった。彼女は、怪我を負った誠を美玲に任せた後に階段を駆け上がって第五層までやってきたようだった。
「誰かいないかな──って思って探してたんだけど、2人に会えてよかった。他の皆は?」
美緒が2人以外の所在を聴くと、2人は静かに首を横に振った。2人以外の誰とも合流できていないことを察した美緒は、目を伏せる。
「──でもねでもね!栄を見つけたの!」
梨央が喜色満面の笑みを浮かべながらそう報告すると、美緒の口角もゆっくりと上がる。
「──この大きな扉の奥にいるってこと?」
「そういうこと」
美緒の確認に稜が同意の意を示すと3人は自分の身長の何倍もあるその扉をしげしげと眺める。
枠には花を象ったような微細な装飾がなされておるが、扉時代は至ってシンプルでシックな作りだった。
まさに、最終決戦に相応しい場所の扉だろう。
「──それじゃ、今は助けに行く方法を考えていたって感じ?」
「そういうこと。部屋の中心に檻が吊るされているんだけど、屋上から直接檻に行ければいいなぁ~って思ってどうしようか考えてたんだけど──」
稜が議題を共有しているその時、重い扉がゆっくりと開く。
3人は咄嗟に扉から下がるが、扉のすぐ近くに人影は見えない。扉は一人でに開いたようだった。
「よ勇
く者
ぞ達
こよ
こ、
ま褒
でめ
やて
っつ
てか
きわ
たそ
。う」
巨大な玉座に座るパンイチペストマスク男──鼬ヶ丘百鬼夜行は超然とした口調でそう口にした。
「──稜!梨央!美緒!」
百鬼夜行の声の後、天井から吊るされている牢屋から栄の声が聴こえてくる。
「「「──栄!」」」
嬉しそうな声が3つ重なり、第8ゲームのクリア条件である栄が発見される。
──後は、ここから栄を救出するだけ。
「だけど、一筋縄ではいかなさそうだな……」
稜は、百鬼夜行の方を見てそう口にする。
茉裕に操られている百鬼夜行は栄の救出を全力で阻止してくるだろうし、茉裕関係なしに第2回生徒会メンバーだ。マスコット大先生の命令で妨害してくるだろう。
勝手に扉が開いて認知されてしまった以上、百鬼夜行──『古龍の王』との戦闘は避けられなさそうだ。
ここにいるのは3人だけだけど、2人は龍種の一体を協力して討伐したし、残る1人は『死に損ないの6人』を倒している。だから、龍種のトップであり『死に損ないの6人』の1人である『古龍の王』も、3人が協力すれば討伐できるかもしれない。
「・
・
・」
覚悟を決めた3人が立ち向かおうと決心したその時、百鬼夜行はゆっくりと立ち上がる。3人の方を見て──いない。3人よりも上──天井の方を眺めていた。
「何を──」
そう思うと同時、天井が大きな音を立てながら何らかの左様で凹んで壊れていく。
「──ッ!部屋ごと俺達を潰して殺すつもりか!?」
稜がそう驚くと同時、百鬼夜行は動き出す。部屋を圧し潰そうとする巨大な隕石が次第に顔を見せて来て──
「隕
石
な
ん
ぞ
に
邪
魔
さ
れ
て
た
ま
る
か」
百鬼夜行はそう口にし、大きく跳んで部屋に侵入して栄──それとプラム姫の入った檻にぶつかりそうな隕石を右足で蹴り上げる。
すると、落下してきていたはずの巨大隕石は軌道を変えて遠くへと猛スピードで吹き飛んでいく。
「栄守
とる
同。
時一
に石
茉二
裕鳥
様だ
もな」
そう口にして、ゆっくりと稜達の前方に降り立った百鬼夜行を見て、3人は戦慄する。
──勇者一行と『古龍の王』による最終決戦は、他の戦闘と同時並行で幕を開けたのだった。
──王国戦争と同日、魔獣の森に巨大な隕石が降り注ぎ生息していた魔獣の半分が死亡した。





