4月8日
***
4月8日の朝。
「時刻は...7時?」
いつもは、5時半には目が覚めてしまう俺がこんな時間まで寝ているのは珍しい。
「まぁ...色々あったからな。疲れていたのかも」
俺は、自分の部屋を出て階段を降りてリビングに向かう。そこには、3人がもう起きていた。
「あ、栄。おはよう、おそかったじゃん」
朝の挨拶をしてくれるのは稜だった。
「おはよ」
俺は、挨拶を返す。今日も、一日が始まった。本日は予選最終日。明日は、本戦だ。
「───誰が残るんだろう...」
そんな事を呟く。俺は、すぐに朝の支度を済ました。
***
───時刻は少し遡りて、4月7日と4月8日の境目辺り。
チームEの寮に一人の訪問者がやってくる。
「はーい」
リビングから、玄関にやってきて扉を開けたのは康太だった。そこにいたのは、クリーム色の髪をしたキレイな女性。
「───何か用か?」
「ミサと、あ・そ・ぼ」
ミサ───佐倉美沙はそう言うと、康太に自分の胸を触らせた。
「───少しな」
そう言うと、康太は美沙を自分の部屋に連れて行った。
***
───時刻は元に戻り。
いつも通りの時刻に学校に行く。
「おはよ」
そう小さく挨拶をする。まだ、クラスメートが俺を見る目は白いし、智恵は今日も来ていない。
そして、白板に映されていたのは───
4池本栄 126pt
6宇佐見蒼 18pt
18津田信夫 22pt
19東堂真胡 8pt
30村田智恵 24pt
31森愛香 44pt
32森宮皇斗 52pt
梨央と紬・そして誠がいなくなり、7人に絞られている。
「もうすぐ、決勝に上がる人が決まる...」
そして、俺は気付いた。智恵のポイントが「12→24」になっていること。
「紬と梨央のポイントを吸った?」
そう考えた。何らかの意志があって、そこのポイントを2つ吸い取ったのだ。
「───もうすぐ、本戦で俺と戦う人が決まる...」
本戦がまだ、どんなゲームかは聞かされていない。だが、「死なない」と言うことは知っている。
「本戦、楽しみにしている」
そうかけてきたのは皇斗だった。
「───あ、うん」
俺はそう、曖昧な返事しかできなかった。
───そして、智恵が来ないままホームルームが始まる。
「さて、本日は4月8日。今日で予選の最終日。敗退者は暇そうですね。まぁ、敗退した人は教室で待っていてくださいね」
マスコット先生はそう伝えた。
「───それでは、残り7人。このまま場が動かなければ東堂真胡君はそのまま敗退してしまいます!本日の23時59分59秒で締切ですので頑張ってくださいね!と言っても、現在6位の宇佐見蒼君から6ポイント強奪しないと勝てないんですけどね」
「わ、わかりました...が、頑張ります...」
そう返事をしたのは真胡だった。俺がポイントを分け与えると言う手もあるが、そんなことはしない。
───そして、そのまま今日の学校は何事もなく終りを迎える。
そして、帰りのホームルームだ。
「はい、本日はこれで終了です。現在のポイントはこちらのとおりです!」
4池本栄 126pt
6宇佐見蒼 16pt
18津田信夫 22pt
19東堂真胡 10pt
30村田智恵 24pt
31森愛香 44pt
32森宮皇斗 52pt
真胡は宇佐見蒼から2ポイント奪ったものの、それ以上の変動はなかった。まぁ、他の5人は動く必要もないからね。
「まぁ、本日の23時59分59秒までは得点が変動するので!」
そう先生は言った。
「それでは、本日は終わりにしようと思います!さようなら!」
先生はそう言って、教室を出ていく。
俺らも、教室を出て寮に帰ろうとする。すると───
「栄、ちょっといい?」
声をかけてきたのは、美緒だった。俺は、美緒に連れられる。梨央と紬も付いてきていた。
「智恵に、会ってあげてくれないかな?それで、誤解を解消するの」
「俺も、その機会を待ってた」
「一応、明日の本戦でも会えるようにしておいたけど...今日解決できるものは解決しちゃった方がいいしね」
俺は、智恵のいるチームFの寮に行った。そして、智恵の個室の前に立つ。
「智恵...俺だ。栄だ」
個室のドアは、その部屋の主しか開けられない。中に智恵がいる今、出てきてくれるのを待つしか無いのだ。
「智恵!栄が来たよ!話がしたいって!」
そう言うと、智恵の部屋が開く。そこには、髪の毛がボサボサでやつれた顔をした智恵がいた。
「智恵...」
「栄...君。話って...」
一日と半分が経って気持ちが落ち着いたのだろうか。智恵が逃げるような様子はない。
「智恵、勘違いなんだ」
「───」
俺は、弁明する。事実を話した。ただ、事実だけを。
「───少しだけ信じてみるよ...」
全ては、信じてもらえないみたいだ。実際、嘘に近い話だった。
最初に見た情報を嘘だと信じ、俺の話を全て鵜呑みにしてもらう方が難しいし、そんな事をしていたら、きっと智恵はこのデスゲームですぐに死んでしまう。
「全部信じろだなんて言わないし、俺が言っちゃ駄目だと思ってる。だけど、俺は歌穂とは付き合ってないから」
そう言って、智恵の手を握った。
「明日、学校で待ってるから」
「───うん。明日は、頑張ってみる」
智恵はそう言った。俺は、家に帰る。
───こうして、4月8日は終わった。
短く感じる一日だったが、智恵の誤解を解く1歩目を歩めた。もう一度、元の関係───いや、元の関係以上になれることを望んでいる俺がいた。
明日から、本戦。
死なないが、死にたくなるゲーム───『スクールダウト』の真髄は、ここからだ。





