勇魔決戦 その⑤
健吾と梨花の一刀両断された〈邪竜天睛〉が、壁に激突するよりも先に体を崩壊させながら消えていく。
「──斬れたな」
「そうね。怖かったけど、勇気を振り絞れば案外行けるものね」
そう口にして、剣を構え直す2人。感電死する可能性だってあったが、剣がそれを上回るスピードで〈邪竜天睛〉のことを斬り伏せたのだ。
「──一筋縄ではいかないみたい。でも、別にアンタ達のしぶとさは知ってるし」
茉裕はそう口にして余裕を気取ってみるけれども、茉裕の目には苛立ちが見えていた。
下層でも激しい魔法戦が行われているのか、絶えず地面が揺れている。床に複数もの穴が開いており、戦闘中に落ちてしまうのではないかと2人の動きを見てヒヤヒヤしているけれども、美沙は魔法の援助をすることでなんとか下層への落下、および茉裕との戦いからの一時脱落を防いでいた。
「作戦自体は悪くなかった。梨花、もう一度──いけるか?」
「勿論。こんなところで諦めてるわけにはいかないわ。拓人の仇は絶対に獲る」
梨花はそう口にして、悠々自適に宙に浮いている茉裕の方をグッと睨む。
「じゃ、美沙。もう一度だ。足場の補助とか、頼めるか?」
「う、うん。頑張ってみるけど、さっきみたいにあっちこっちに跳ねないで。魔法が追い付かない」
美沙は、少し声を震わせながらそう口にする。
「すまんすまん。美沙のことを信用してたからさ。次は気を付ける」
美沙に顔の前で手を合わせながらそう口にする健吾は、謝罪を終えるとすぐに茉裕の方へと体を向ける。
先程使用した茉裕へと続く土魔法の道が、記念樹のような形で残っていた。変な方向に枝分かれしている様は、2人が好き勝手に動いたことの証左だ。
「でも、今回は前に浸かった道を再利用すれば負担を減らせそうだ……」
健吾がそう呟いたその時、上空にいた茉裕が2人には聴こえないサイズで何かを呟く。
きっと、何かの魔法を詠唱したのだろう。
何か来る──健吾と梨花が直感で理解し構えたと同時、3人の方へと倒れてくるのは土魔法でできた茉裕へと続く道だった。
「フラグだったか~」
健吾はそう口にして、自分たちの方へと倒れてくる土魔法へ向けて剣を構える。
「健吾、こっちは任せていい?」
「あぁ、先に行ってくれ。美沙も気にせず梨花のサポートを頼む」
「わ、わかった」
梨花は土魔法でできた道が倒れてくることを気にせず茉裕の方へと走り出し、美沙は、再度茉裕のところへと道ができるように土魔法を行使する。
「──じゃ、オレは倒れてくるのを切り倒したら梨花の補助かな」
健吾は片目を瞑り、そんなことを口にしながら剣を振るい──
「──〈変容する魂の片鱗〉」
一閃。
健吾と美沙の方へと迫っていた土魔法は、健吾の手によっていとも簡単に両断される。
2人は、土魔法に押しつぶされることなど無く土魔法を乗り越えて、茉裕に迫るための快進撃を再開する。
「──じゃ、次は梨花の援護だ!美沙、任せたからな!」
「う、うん!健吾君も梨花ちゃんをお、お願い!」
美沙は魔法杖をギュッと握りながら、そう口にする。梨花が進んでいる道が、土魔法でもうできており、美沙の動きに合わせてニョキニョキと枝が伸びている最中だった。
「──梨花と美沙は阿吽の呼吸だな。流石は親友って感じか」
健吾は、空中へと続く道をジャンプを駆使して登りながら、そんなことを口にする。
そして、健吾は自分の親友であろう栄や稜・純介のことを頭に浮かべる。
栄は捕らえられているし、稜と純介の2人は城内都市パットゥの中に散り散りになってしまっている。
大丈夫だろうか──そんな不安が頭から離れない。
純介は賢いし自分の保身を視野にいれて行動しているから然程心配していないし、栄もこれまで安全だったなら問題ないだろうけど、たった一人稜だけが心の底から心配だ。
稜は、自己犠牲精神が強い。
無理をしていないだろうか。自分の命を投げうってでも、危険な行動に出ていないだろうか。
そんな心配事を頭の中でしていると同時に、一際大きな揺れが城内都市パットゥを襲う。
「何を──」
健吾は、土魔法の足場から落ちてしまわないように剣を持たない左手でしっかりと土魔法にしがみつきながら、第四層へと続く穴を覗く。
──そこには、床が無くなっていた。
「は……?」
穴は遥か下──第一層まで続いており、第二層から第四層までの地面が消えていた。
いや、それだけでない。ところどころ第五層の地面も陥没しており、先程より穴の個数も大きさも増えているように感じられた。
「──下で随分暴れてるような奴がいる見たいだな。メイの戦ってるのは一体誰だ……?」
健吾はそう口にして、乾いた笑いを浮かべる。この状況、笑うしかないだろう。
「な、なんの揺れ?」
上から梨花の声がして、健吾が「ここより下の層が全部壊れた」と説明する。
梨花の「はぁ?」という声が聴こえたけれど、嘘は言ってない。それに、納得できないのは健吾だって一緒だ。
「下じゃ、随分と暴れてるみたいだぜ。オレ達も負けてらんねぇよな」
健吾は、軽々と土魔法の足場を登って、止まっていた梨花と合流する。そして、2人で並んでまだ上空にいる茉裕の方へと視線を送った。
「梨花、目的は忘れてないよな?」
「えぇ、勿論よ」
「じゃ、行こう」
そう口にして、2人は美沙の作る土魔法を足掛かりに動き出す。
2度目の茉裕の接触を試みる2人は、今度こそ成功を掴み取れるのだろうか──。
他の戦闘とリンクしていると、意外と書きにくい。





