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勇魔決戦 その②

 

 宙に浮き好き勝手に魔法を行使する『魔帝』を見上げながら、3人の勇者はそれぞれの武器を構える。

 茉裕の行使する魔法に対して防戦一方でしかない3人の目に、勝利を掴む方法は何一つとして浮かんでいなかった。


 攻撃が届かない程高い宙に浮いていて、Sランクの魔法を息をするように放って、攻撃を当てたとしてもすぐに回復魔法で無かったことにされてしまう。


「相手のフィールドで戦わせられ過ぎている……」

 〈殲滅の風〉をなんとか耐え抜いた健吾が、剣を握り構えながらそう口にする。


 ──3人はドラコル王国において、人との戦いは初めてだった。

 多くの魔獣を相手にして、時には龍種を討伐して来たけれども、人間を相手にした実戦経験は1度だってなかった。

 どれだけ天才であろうと、ノウハウが無ければ上手くできないのは当然だ。


「──ミサ達だけじゃ勝てないよ……」

 そんな弱音を、健吾の後ろで吐くのは震えた手で魔法杖を持った美沙であった。

 美沙は、部屋の奥の方で大勢の『剣聖』の方へと視線を向けて、その戦闘が速く終わって助けに来てくれないか──などと考える。


「『剣聖』がいたから心強かったのに、頼れ無さそうね」

 美沙の視線に気が付いたのか、梨花はそんなことを口にする。

 歴代『剣聖』33人の相手に追われている『剣聖』が、『魔帝』との戦いに茶々を入れるほど余裕があると思えなかった。魔獣の森ではバッサバッサと魔獣と木々を切り倒して道を切り拓いていく勇姿に心惹かれたが、流石に『剣聖』を大人数相手にするのは厳しいのだろう。


「当たり前じゃない。『剣聖』に手出しされたら私としても面倒だからね」

 3人の嘆きの中に乱入してくるのは、宙に浮きながら魔法杖の輪郭をゆっくりとなぞっている茉裕。

 茉裕としても『剣聖』は面倒な天敵のようだった。彼女は、こう続ける。


「だってほら、皇斗とか愛香なら倒せば生徒会として貢献できるじゃん?でも、『剣聖』は倒したってこのゲームの中だけの存在だからね。真面目に相手にしたって価値は無いに等しいの」

 茉裕はそう口にして、美沙と同じように視線を『剣聖』の方へと向ける。必死に剣を振って、瞬きするごとに襲い掛かってくる死線をかいくぐり続けているのが空中からは見えた。


 ──と、茉裕は大きく息を吐いて再度魔法杖を3人の方へと向ける。


「休憩終わり。そんじゃ、次はもっと激しくしちゃうよー」

 どうやら、先程までの空白の時間はMPの回復を待つ間の時間だったようだ。攻撃するチャンスだったかもしれないが、健吾達も息を整えるのに使ってしまい、ここからはまた防戦を強いられることになる。


「そんじゃ、まずは〈轟々雷々〉!〈高圧的な(ハイプレッシャー)高水準(ウォーターガン)〉!〈崩落する信念の岩(ハイプレッシャーガン)〉!〈豪炎の実刑(フリーフリーリー)〉!」

 雷、水、鋼鉄、炎の4種類の魔法が同時多発的に発生し、遠慮もなしに飛来する。


「──あぁ、クソ!また始まっちまった!」

 空から火の雨が降り、雷鳴と岩がランダムに注ぎながら、レーザービームのような鋭さを持つ水が跋扈する。

 剣を振るって雨を避け、剣技を水のレーザービームの回避に流用して、雷鳴と岩を全力ダッシュで逃げ延びる。

 逃げた先に攻撃魔法が迫ってきて、それを回避するためにまた剣を振るって剣技を利用しダッシュする。


 ──死。それを回避した先にある死。

 全てを避け切れることはできないから、少しずつダメージが積み重なっていくのを承知で致命傷を避け続ける。


「──この魔法をなんとか止めないと、茉裕を倒すどころか攻撃1つ当てることだってできない!」

 梨花は攻撃を回避しながら、そんなことを口にする。魔法の猛攻をよそに、そんな梨花の言葉を耳にした健吾は、魔法を止める方法を思案する。


 ──やはり、一番簡単なのは茉裕から魔法杖を奪い取ることだろう。

 どれだけ高尚な魔法使いであろうと、魔法杖がなければBランク以上の魔法を放つことはできない。

 それは歴代『魔帝』であっても同じことだ。


 最も、例外に値しそうな人物は存在する。ドラコル王国には『暴虐児』と呼ばれる人物が、ウチョウ連邦には魔法杖無しで魔法を使う『番将』『無詠唱』『深刻自決』と呼ばれる3人の冒険者集団──『平和に関する富国』というのが存在している。だが、前者は人間ではなく人型兵器であるため魔法と偽って体に溜めてある電気を放出しているだけだし、後者の3人組は体に魔法杖を埋め込んでいるだけだ。

 だから、例外っぽい人間(及び人型兵器)はいるが、そのどちらも本当の意味で例外ではないのである。


「──だけど、それが難しいって話だよな」

 絶え間なく襲い掛かる魔法を避けているだけの健吾にとっては、茉裕に近付くのさえ至難の業だ。

 健吾は、避けながら他の2人の方へと視線を送る。皆、思い思いに攻撃を回避しており誰も欠けていることは無さそうだった。


「──こっちが唯一有利なのは人数差があること。これを活かすしかないか」


 健吾の中で方針は決まった。

 次は、その方針を他の2人に共有することが必要だろう。


 ──猛攻の嵐の中、『魔帝』討伐作戦は少しずつ全身し続ける。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
4種類の魔法が同時多発的はエグい。 やはり魔法の杖を奪い取るべきですね。 アドバンテージの人数差を生かせるか!!
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