勇魔決戦 その①
園田茉裕。
年齢、17歳。身長、156cm。体重、47kg。BMI、19.3。
右視力、裸眼でD、コンタクト有でB。左視力、裸眼でD、コンタクト有でA。
出身、岡山県倉敷市。出生時の体重、2963g。血液型、A型。
高校、帝国大学附属高校。所属、生徒会。婚約者、有。特殊体質、有。
池本朗が主催する第5回目のデスゲーム──通称、第5回デスゲーム。
学校を舞台にしたデスゲームにて、生徒の中から秘匿の立候補でマスコット大先生に協力する内通者「生徒会」に所属している若干名の内の1人、それが園田茉裕。
──園田茉裕の話をしよう。
彼女がデスゲームの中で頭角を現したのは、6月。
彼女の持つ「自分に一瞬でも好意を持った人を操る」特殊な体質によって、クラスメイトの綿野沙紀を操りこれまでのデスゲームで活躍をしていた池本栄の殺害を試みた。
だが、池本栄の恋人である村田智恵の妨害により殺害計画は失敗に終わり、その後の森愛香との一連の出来事によって彼女が生徒会メンバーであることを自分の口から明かしてしまう。
だが、自分の口から生徒会メンバーであることを明かしたことにより、彼女は開き直ったように行動することができ、それ故に間接的に多くの死傷者を出すことになった。
そんな、彼女の行動で死亡することになった第5回デスゲーム参加者をリストアップしてみよう。
安土鈴華・柏木拓人・津田信夫・三橋明里・山本慶太・綿野沙紀。
以上、6人もの人物が、茉裕の影響があって死亡している。
問題はその多さではない。問題は、彼女が誰に対しても直接手を下していないことだった。
彼女は、誰もその手で殺していない。
そして、彼女の「自分に一瞬でも好意を持った人を操る」という特殊体質があれば、殺した人物に罪を被せることだって容易だった。可愛らしい笑顔の裏で、多くの人を不幸にしていた。
──それが何を意味することがわかるだろうか。
デスゲームに参加する前の彼女は──、
「はい、前置きはそこまでで終了」
そう口にして、彼女は妖艶な笑みを浮かべて手を叩く。
ここは、ドラコル王国の北部に位置する『古龍の王』の根城──城内都市パットゥ。
王国戦争の舞台となっているパットゥの最上階の一角にて、茉裕は魔法を行使する。
「──〈炎天の暴竜〉」
「また炎ッ!」
そんな茉裕の魔法の対処に追われるのは、3人の男女──秋元梨花・阿部健吾・佐倉美沙であった。
──この大部屋では、現在2つの戦闘が行われている。
一方は、『魔帝』園田茉裕と勇者である秋元梨花・阿部健吾・佐倉美沙の勇魔決戦が、もう一方では第34代『剣聖』と蘇生魔法により復活した歴代『剣聖』による『剣聖』対決が行われていた。
パットゥの一室に38人が集っている過密状態であるが、部屋そのものが体育館並の広さがあるため窮屈な気持ちはしていない。
茉裕の放った〈炎天の暴竜〉をやっとの思いで回避しながら、3人は茉裕を倒す算段を探る。
「浮いてるってのが厄介だよなぁ、こっちは飛べないのにどうやって空中に攻撃を届ければいいんだよ」
健吾はそう愚痴を口にするけれども、厳密に言えば攻撃を空中にいる相手に当てる方法は複数存在している。
剣士である健吾と梨花は、斬撃を飛ばすタイプの攻撃を放てば空中にいる茉裕に攻撃を当てられるし、沙紀は魔法使いだから茉裕と対等に魔法を放つことができる。
──が、それはただの事実の羅列に過ぎない。
斬撃を飛ばしても茉裕は楽々回避してしまうし、沙紀の魔法と茉裕の魔法には大きなレベルの差が存在する。
沙紀のレベルが49なのに対し、茉裕のレベルは90で、しかも『魔帝』という二つ名までもを持っている。今の茉裕に使えない魔法はほとんど存在してないと言ってもいいだろう。
「──じゃあ、これはどう?〈殲滅の風〉」
容赦なく、Sランクの魔法を放つ茉裕。轟轟と低い音が鳴り響き、それに巻き込まれるように勇者達3人は壁の方へと飛ばされる。
「──風、強すぎるッ!」
「このままじゃ壁に叩きつけられるわよ!」
応龍の羽ばたきよりも強い暴風は、3人を壁の方へと押しやる。
目を開けることさえも至難の業の壁の中、3人は壁に叩きつけられてダメージを負うことを避けるために思い思いの行動を取る。
「──〈神出鬼没の花吹雪〉ィィィ!」
沙紀の行使するAランク魔法が、茉裕の放つ〈殲滅の風〉に対抗する様に吹き荒れるものの、SランクとAランクの魔法の差は大きい。
〈殲滅の風〉を弱めることはできずに、花弁が3人と一緒に壁の方へと飛ばされるだけだった。
「風魔法でも止まらないよぉ!」
沙紀がそんな悲鳴に近い声をあげる。Sランクの風魔法を手札に持っていない沙紀は、もう為す術など思いつかない。
同じ魔法使いでも、ここにいるのが純介であればまた違ったのかもしれないが、沙紀は何もできなかった。
「諦めてるんじゃないわよ!」
風に流されながらも、持ち前の運動能力で美沙の方へと接近するのは美沙の親友である梨花であった。
「──壁から氷魔法を生やしてアタシ達を包んで!」
「──わかった!〈世界氷結の理〉!」
梨花の的確な指示により、梨花と美沙、そして健吾の3人は壁から生えた巨大な氷に包まれるようにして壁への激突を免れる。3人は、ツルツルと滑る氷の中でなんとか暴風を耐え凌いだ。
そして、風が止んだ後で再度地面に着地する。
「なんとか持ちこたえたみたいだけど、随分大変そうね。まだまだ私の魔法はこんなもんじゃないのに」
茉裕はそう口にすると、妖艶な笑みを浮かべて3人のことを空中から見下す。
──『魔帝』との長い長い戦いは、まだ始まったばかりだ。
茉裕をどこまで活躍させようか迷っています。
全てが彼女次第なのでどうなることか……。





