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4月7日 その⑩

書くのが楽しい。

 

「じゃあ、生き残りの子供は俺じゃない...誰かなのか?」

「もう、質問には答えません。自分で回数の制限を決めたのは池本栄君、あなたですよ?」


「そうか...そうだな...」


 俺は質問の仕方を間違えた。思わず、口が先走ってしまった。そして、自分を特別視してしまった。


 だが、今回のデスゲームは初めてではなく5回目であることがわかった。5回。毎回、37名が集められデスゲームが行われているのなら、俺らを含めて被害者は185名。


 多い。多すぎる。どれくらいの生き残りがいたかはわからないが、100名以上は確実に死んでいるだろう。


 そして、今回のデスゲームに、前のデスゲームの生き残りの子供が参加していることもわかった。

 だが、それは俺ではない。


 質問の仕方を間違えた。そう、「生き残りの子供は誰だ?」と聞けばよかったのだ。


 そうすれば、「〇〇君です」というしっかりとした答えが手に入ったはず。俺のミスだ。

 致命的過ぎるミス。質問するチャンスはもう無いかもしれないのに。もう、手に入らないのかもしれないのに。


「池本栄君。君には期待しているので、この話をしたんです」

「───期待?」

「はい、君なら真の天才になれると信じています。頑張って生き残ってください。私も、決して愉悦だけのデスゲームをしている訳ではないのです」

 マスコット先生は、そう言うと生徒会室を出ようとする。生徒会室の扉を開き、マスコット先生は最後にこう吐き捨てていった。


「池本栄君、論点をすり替えてしまいましたが君は数に制限を付ける前にこう質問した。『可愛い子供だと思うのなら、どうしてデスゲームなんかさせるんだ』、と。ならば、私もその答えを教える必要があるでしょう。その答えはですね───」

 マスコット先生は、こちらを向く。













「───自分の可愛い()()だから、ですよ」

 そう言うと、先生は生徒会室を出ていく。


「自分の可愛い子供だから?子供なら、可愛がるはずでしょ?」


 ───あ。



 気付いた。何故、マスコット先生が王様の例えをしたのか。あの、例えには───いや、この数分の生徒会室でのマスコット先生の話し合いの中には、色々な解釈ができすぎる。そして、その解釈の全てが本物。全てが、マスコット先生が伝えたかったことが───、


 ───多すぎる。


「───自分の子供だからこそ、争わせる...他人の子供じゃ駄目なんだ。デスゲームで生き残った子供にも、デスゲームで生き残る素質がある。だから、それを利用しているんだ。王子が王になる例えは、自分の子供達同士で争わせる───生まれながらにして持つ素質は同じだったんだ...と言うと───」



 ───俺達にも、何らかの才能がある。




「集められた俺達は皆、世間的に()()と呼ばれる部類だ...これも、生まれ持った才能だと言うのなら!」




 ───生まれる前から始まってたというのか。


 俺達デスゲーム参加者が───いや、人間という生命が誕生するところからか───いや、そもそも生命が誕生するところからか───いやいや、地球が出来上がるところか───それとも、宇宙そのものが生まれるところからか。


 いつからか。このデスゲームはいつから仕組まれているのか。



 生まれつき持った才能。そして、その才能を継承してくれた()



「デスゲームの主催者───GMは、少なくとも俺らの想像の範疇の外の何かを持っている...」

 そう結論付ける。考えれば考えるほどにわからなくなる。


「とりあえず、情報をまとめよう」

 今回、マスコット先生との対談で手に入れた情報を紙に書いてまとめる。




 ①デスゲームは今回で5回目

 ②デスゲームの中に、前のデスゲームの生き残りの子孫がいる

 ③その生き残りの子孫は(池本栄)ではない

 ④GMは何かの利点があるためデスゲームを行っている

 ⑤GMは、人知を超える何かを持っている

 ⑥デスゲームは「天才」の俺達だからこそ参加している。





 ⑦真の天才に必要なのは「統率力」と「冷酷さ」




「───真の天才とは、先生の例えで言う王ということ!王の王位継承権争奪戦は、デスゲームと全く同じなんだ!」

 そんな気付きがあった。まとめると、頭がスッキリした。


「えっと...まず、俺は何をすればいいんだ?」

 何をすればいいのかも、紙に書き出し始める。


 ①小寺真由美さんの犯人が自分ではないと誤解を解く

 ②智恵の誤解を解く。(歌穂とは付き合っていないと証明する)


「えっと...この2つは真っ先に行った方がいいよな。今後に関わるし...」

「煩わしいぞ、貴様」


 窓の縁に乗り目を瞑りながら声を出すのは森愛香だった。ここは4階で、落下したら死ぬ可能性だってある。それなのに、どうして眠れるのだろうか不思議でならない。


「───どうして、そんなところで眠れるんだ?もしかしたら、俺がそこから突き落とすかもしれないんだよ?」

「貴様は、偽善者だからそんな事をしないとわかっている。一種の信用だな。貴様がクエスチョンジェンガのルールで書かれていないのに『ジェンガタワーを倒す≠死亡』としなかったのと全く同じ理論だ」


 森愛香は片目を開きそう言い放つ。


「いい情報を手に入れたが、貴様は阿呆だな」

「───どうして?」


「王と言うのは、信用されているからなるのだ。王になるために信用されているのであれば、それは本当の王ではない」


 森愛香はそう呟いた。そして、窓の縁から降りて生徒会室から出ていこうとする。


「───謝っておく、すまなかったな。これで、満足だろう?」

 そう呟くと、生徒会室を出ていってしまった。



 ───小寺真由美が死んだ。その事実は変わらない。


 ───その死を、悲しんでるだけじゃ何も進まない。


「ならば、悲しむだけじゃ駄目だよな」


 俺は、彼女の死を利用させてもらうことにした。もう、彼女のような犠牲者を出さないために───

本日朝9時にも更新します!


GWだから張り切ってる。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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