『親の七陰り』
タイトルの読み方はご存じの通り「ワーストヒストリー」です。
ドラコル王国には現在、全部で十二の貴族の家系が存在している。
だが、その十二の家系の名を全て羅列しても「ヴィンセント家」の名前は一度も出てくることはない。
それは何故か──という問いに答えることは至極単純明快だ。
今から十数年前まで、ドラコル王国には十三の貴族があったのだが、その内の一つ──ヴィンセント家が没落して十二貴族になったからである。
──これは、そんな没落貴族の家に生まれて過酷な人生を歩むことになった或阿呆の一生だ。
***
──ヴィンセント家。
今から200年ほど前に生糸を使用した衣服の売買により栄えた一族であったが、百何十年と同じ商売を続けているとその売り上げも低迷していた。
そんな中で当時──ヴィンセント家182年の歴史を見ても最後の領主になるアルバ・ノブレス・ヴィンセントとその妻であるエリカ・ノブレス・ヴィンセントの間に生まれた一人息子が、後に『閃光』として冒険者の中で名を馳せるアレン・ノブレス・ヴィンセントであった。
そんなアレンの誕生は、王国戦争が行われている現在から29歳と数カ月程前の話であった。
アレンの誕生を基準に約10年と少しが過ぎた時にヴィンセント家は没落し、一族は路頭に迷うことになった。
父親であるアルバは領地を追われた後に失踪し、母親であるエリカは奴隷墜ちし、アレンは放浪者となって商業都市アールの周辺にあるスラムを彷徨うこととなる。
一族が散り散りとなったアレンであったが、他の2人のその後を知らない。
今でも生きているかどうかすらわかっていないし、アレンは両親を探すことはしなかった。
別に、必要なかったのだ。『神速』に弟子入りしたことで、育ての親が『神速』になり家族愛はそこで満たされていたし、彼が貴族の出自で得たのは同年代の貴族の知己と、使い物にならないようなテーブルマナーと、天性の強欲さだ。
──そう、彼の持ち前の『強欲』は貴族特有のものだった。
欲しいものを恣にし、自分が気に入らない者は容赦なく切り捨てる。彼が10歳までに学んだ独断と偏見は、没落した後も引き継がれた。
彼がその強欲と傲慢を振りかざしても許されてしまうような環境が揃っていて、アレン自身それが当たり前だと思っていたのが彼の強欲の理由であり、彼の性格をこんなにまで自己中心的に歪めてしまったのは、彼のことを心のどこかで同情したり言いなりになってしまうような関係性の人物がいたからだろう。
──閑話休題。
ヴィンセント家が没落して放浪者となったアレンは、スラム街を一人彷徨うことになる。
幼いながらに没落の意味を理解した彼は、高いプライドを自分自身で踏み躙り、涙を流し苦悶の表情を浮かべながら、人間としての最下層にまで落ちこぼれたのだが、その「スラム」の中にも序列はあったのだ。
「おい、お前。元貴族だからって驕ってんじゃねぇぞ?」
「──この僕に向かって意見とは、何様だ」
アレンがゴミを漁っていると、後ろから声をかけてきたのは1人の人物。その声は自分と同じくらいの年齢特有のハスキーボイスで、それに対して苛立ちを覚えたアレンが振り返ってその顔を見てみると──
──そこにいたのは、1人の橙色の髪をした男と、それよりも年上に思われる数人の荒くれ者だった。
「何様だぁ?まさか、そんなことも知らねぇでこのスラムで生きてるとはよ」
その橙色の髪をした少年は、その小さな体躯に似合わない大きな斧を背中から取り出し、それで強く地面を叩く。
その衝撃で地面がひび割れ、アレンの足元までその亀裂は達していた。
こうやって脅されても、スラムにある廃墟で雨を凌ぎ、都市に住む人間が棄てていくゴミを漁っている、貴族とは縁もゆかりも無いような生活を送っているアレンは、目の前の男のことなどつゆも知らなかった。
「知らねぇってんならその耳かっぽじってよくよく聞け。俺様の名はタビオス・グレゴランス。このスラム街で、一番強い男だ」
アレンと同年代に見えるにも拘わらず、堂々とそう宣言する姿にはどこか納得してしまいそうになる威厳があった。アレンは唾を飲み込み、目の前の男の出方を伺ってみるけれども、彼は貴族の出身だ。
剣の振り方どころか、人の殴り方だって知らないボンボンだ。
「──スラム最強が僕になんの用だよ」
「その偉そうな態度が気に入らねぇ。だから、ボコしにきた」
受けて立つ──アレンがそう言い切る前に、勝負は付いていた。
アレンの腹に斧がめり込み、その小さな体に切れ込みが入り、遠くに吹き飛ばされる。
その衝撃を背中で感じながら、腹の痛みと背中の痛みに板挟みにされながら、なんとか呼吸を吸おうとその場で藻掻く。
屈辱だ。
貴族の生まれである自分が、どうしてこんな目に合わなければならない。
ゴミを漁ってそれを口にするのだって覚悟が必要だと言うのに、どうして僕は礼儀知らずのスラムのガキにボコボコにされなければならない。
──吸えない息を吸おうと必死に足掻く中で、アレンはそんなことを心に思う。
そこにあるのは、怒り・苦しみ・絶望・嘆き。そのどうしようもない感情がアレンの内側から爆発するが、腹にできた傷により彼はどうすることもできない。
このままだと、腹にできた傷から血が流れ続けて失血死してしまうだろう。
──が、アレンの人生はここでは終わっていない。
それは、一つの気まぐれな光明が、アレンに手を差し伸べたからだ。
藻掻く体力を無くし、熱いのに寒いという矛盾を抱えた感覚に襲われているアレンは、口から涎を垂らしながらそこに倒れていた。
スラムに人が倒れていることなど日常茶飯事だったし、それを見ても誰も足を止めない。
──のだが、そんなアレンを見て足を止めた男がいたのだ。
「いたいた。随分と見苦しいガキだね」
虚ろな目をしているアレンのことを見下すようにしてその場に姿を現したのは当時もドラコル王国の中の弓使い最強の称号を手にし、ニーブル帝国の『天弓』とタメをはるだけの実力者であったカエサル・カントール──またの名を『神速』だ。
「──ぁ」
自分のことを見下してくる金髪と目を合わせて、喉を震わせてその微かな声明を主張するアレン。
それを見て、金髪の男は片手でHP回復用ポーションの蓋を開けて、しゃがむこともせずにアレンの口の中に流し込む。すると、腹にできた傷が埋められていく。
回復用ポーションの入っていたガラス瓶を投げ捨てると、ポケットの中に手を突っ込んでその男はアレンを見つめる。どこか気まずさを感じたアレンは、その男から目を逸らした。
自分の腹の傷が埋められていく不快感を覚えながら、アレンは傷口の合った部分に手を当てる。
傷は埋まっており、ブヨブヨと新しくできた肉の慣れない触感がそこにはあった。
「──お前は」
「あのさぁ、僕は君の命を救ってあげたんだよ?それだってのに僕にそんな敵意を剥きだしにしちゃっていいの?別に今から君を殺し直すことだって僕にはできるんだからね?」
その金髪の男の傲慢さにアレンはムッとしたけれども、命の恩人であることを言われると何も言い返すことができなくなる。
「──アナタは何方ですか?」
「助けてあげたことに感謝がないし、誰かの名前を聴きたいときは自分から名乗るってものが筋だから及第点にすら届かない赤点だけど君はまだ見た通りのガキだし、今はこんだけばっちぃ姿だとは言え貴族の生まれだから仕方なく許してあげよう。僕の名前はカエサル・カントール。貴族の中で『神速』の二つ名は知れ渡っていないかな?」
当時の『神速』は『死に損ないの6人』ではないため、『神速』の名にそこまでの影響力はない。
それに、アレンはまだ子供だ。パーティーや、将来政略結婚するかもしれない貴族同士の親睦会に参加することはあれど、政治に関わることはなかった。
「──ごめんなさい、わからないです」
「へぇ、貴族って何でもかんでもごめんあそばせって謝罪するわけじゃないんだ。解釈不一致だな。んま、いい。今の君は貴族じゃないんだからね」
「──」
アレンが『神速』のそんな物言いに反駁しようとするけれど、『神速』はアレンの方に、「何も言うな」と言わんばかりにパッと手を広げてそれを制止する。
「僕が名乗ったのだから、君も礼儀に倣って名乗ろうとしたのだろうけどその必要はない。僕は君のことを知っているのだから。アレン・ノブレス・ヴィンセント。10歳。ヴィンセント家の生まれだったけど家が没落して貧民街を彷徨っている──あっているだろう?」
『神速』の言うアレンの経歴はあっているけど、アレンが言おうとしていたことが文句ではなく自己紹介だ──という推察はあっていない。だけど、そんなことを言っても聞き入れなさそうなことはこれまでの会話からで考察できたために、アレンは何も言わず、静かに頷いた。
「それで、僕は君のことを助けてあげたんだ。僕は何の意味も無く人を助けるような偽善者じゃない。君を助けたのにはヴィンセント家の残滓を利用したいからさ。命の恩人が、君の居場所を貧民街から『神速』の屋敷に変えてやると提案しているんだ。これは君にとっても悪い話じゃないんだし、もちろん受け入れてくれるよね?」
その言葉に、アレンは頷くことしかできなかった。『神速』はあまり好きではないが、このスラムを抜け出せると言うのなら何でもいい。
「──あのさぁ。君は犬じゃなくて人間なんだからさぁ、頷くだけじゃなくて言葉で言いなよ。君はもう貴族じゃないんだから言いたいことも言えないような立場を重んじるくだらない社会は抜け出したんだよ?」
『神速』のゴミを見るような目に、アレンは苛立ちただでさえズタズタになったプライドを更に踏み躙られる感覚に陥るけれども、このチャンスを逃すわけにはいかなかった。
「──お願いします。僕をここから連れ出してください」
「当たり前だ」
そう口にすると、『神速』はアレンの方へと手を伸ばす。アレンはそれを掴んで、寝ていた体を起こす。
──これが師である『神速』との最初の出会いだった。
***
『神速』の屋敷は、貴族ではない一般人が持つには広すぎる家であった。
だが、貴族として育ってきていたアレンにとっては、『神速』の家は決して大きなものではない。
物置小屋と勘違いするような狭い部屋──と言っても、東京の私大に通う貧乏苦学生が月に6桁する家賃を親の仕送りで払って住むこじんまりしたワンルームとは比べ物にならない程に広い部屋を与えられる。
アレンと『神速』の2人暮らし──ではなく、『神速』には当時から18人の妻がいた。
現在は43人なので20年前はその半分にも満たない数だったけれど、それでも18人の妻がいたのだ。
ドラコル王国でも、地球と同じく一夫一妻制が常識なのでアレンは『神速』の異常性に驚いたけれど、それだけが問題ではない。『神速』の嫁として集められた女性達は、若い──どころか既に女として旬の過ぎたおばさんばかりだったのだ。一番若くても46歳で、最高齢は71歳。
そんな熟女ばかりが好んで集められていることにアレンは驚きが隠せなかったけれど、人の性癖は十人十色だ。文句を言うことはできない。
『神速』は「ここにいるのは全員僕の女だ。寝込みを襲う事なんてしたら容赦しないからな」などと念を押してきたが、当時10歳のアレンに母親よりも年上の女性を性的な目で見ることはできなかった。『神速』の念押しは暖簾に腕押しだったわけだ。
──と、そんな『神速』とその妻との生活の中で、アレンは『神速』から弓を教えてもらうことになった。
『神速』は弓矢に関しては天才肌であったので、弓矢の超基礎を教えてくれた後は実践訓練を主にしていた。けれど、『神速』はドラコル王国どころか世界全土を見ても一位二位を争う最強。
ニーブル帝国の『天弓』と99勝99敗99引き分けだけの実力者だけあり、アレンは一度だって『神速』に勝利することはできなかった。
──が、勝利することができなかっただけで、アレンは確実に実力を付けていた。
幼いアレンに大人顔負けの実力があるその最たる例を挙げるとするのならば、アレンが13歳の時にソングバード兄弟が『神速』の屋敷に襲撃した話だろう。
『上弦』テヘラン・ソングバード。
『下弦』ルリアナ・ソングバード。
そんな2人を合わせて、ソングバード兄弟とドラコル王国の人々は呼び、その悪名を恐れていた。
拳闘士として鍛え上げられた肉体と、海よりも濃く空よりも暗い青色の髪を持ち、目を瞑ってさえいれば見分けがつかない2人。というのも、兄・テヘランは、左目が黒く右目が赤で、弟・ルリアナは左目が赤く左目が黒と、そのオッドアイにしか違いはなかった。
弱き者からは奪い取り、強き者には牙を剥く。
武の道を極める為に、弱者も強者も喰らって来た悪名高い兄弟は、当時レベル73の『神速』の住む絶崖アイントゥ近くの集落に足を運んでいた。
「──珍しいね。来客なんて。しかも2人も」
庭にあるガーデンチェアに腰を下ろしている『神速』は、突然の来客に慌てることも無く紅茶を嗜みながら、その2人の対応をする。
「「──俺達と勝負を申し込む。その『神速』の名に傷を付けに来た」」
ソングバード兄弟の言葉が重なる。普通の人なら、その迫力だけで怖気づいて逃げ出してしまうだろうが、『神速』はそんなことしない。片目を瞑り──
「そのドッペルゲンガーの如く瓜二つな容姿。ソングバード兄弟か。君達のような悪名高き存在には、僕の一番弟子と相手にするのがお似合いだ」
などと口にして一番弟子ことアレンを呼びつけた。
「お呼びでしょうか?師匠」
年端も行かぬ一番弟子が、玄関の扉を通って外に出てくる。その背中には寝る時と風呂に入るときとトイレに行く時以外は肌身離さず持っている矢筒を背負っていた。
「よく来たね。紹介するよ、僕の一番弟子。アレン・ノブレス・ヴィンセント」
「「おいおい、随分とナメられてるじゃねぇか!そんなガキ1人、ボコボコにできないと思って──」」
「──〈向日葵〉」
その刹那、2人の額に矢が突き刺さる。
「〈千射観音〉」
そのまま、畳みかけるように矢を放つアレンの頭の中に、容赦と言う言葉は存在していない。
「「つ...強い、強すぎる...」」
その猛攻を前にして、為す術無く敗北したソングバード兄弟はその場に仰向けに倒れる。アレンの圧勝であった。
「──師匠。とりあえず倒しましたがこの者達はどうしましょう?」
「そうだね。捕吏に付きだすことは簡単だ。でも、それだけじゃ君は成長しない。君には、仲間も必要だ」
「え、この2人を仲間にするんですか?」
「あぁ、そうさ。いい案だとは思わないかい?ソングバード兄弟は世間からもその強さは認められている。仲間にするにはかなりいい物件だと思うよ」
「──師匠がそういうのなら」
こうして、ソングバード兄弟がアレンの最初の仲間として加わることになり、『親の七陰り』の原型が完成する。
***
──ソングバード兄弟が仲間になってから、『神速』の家はより一層騒がしくなった。
2人が来る前は『神速』とアレン、そして大勢の妻が暮らしていたけれども、その人数の割には静かなことが多かった家に、うるささが到来したことに嫌気がさした『神速』は、15歳のアレンに対して一つの話を持ち掛ける。
「──アレン。独り立ちをしたいとは思わないかい?」
「独り立ち──ですか?」
「あぁ。独り立ちと言っても、君はテヘランとルリアナを従えているから一人だとは言わないけれど、独立して冒険者としてこの世界を旅したいとは思わないかい?」
「それは思いますけど、よろしいのですか?」
「君が独立をしたいと言うのなら1つの課題を課そうと思っているのだけれど、内容を教えて後になって独立は嫌だ──と言われたくはないからね。先に独立したいかどうかをハッキリと聞かせてもらえないかい?」
『神速』は、アレンの覚悟を確かめるかのようにそんな言葉を口にする。その真剣な眼差しに対して、アレンは数秒の沈黙の後に「独立したいです」と告げた。
「──そうか、わかった。それじゃ、師匠である僕が君の独立を求める条件を教えよう。僕とアレンが出会った貧民街があるだろう?そこの首領と呼ぶに相応しい人間を倒してきな。かつての意趣返しだ」
「首領……」
その時、アレンの頭の中に蘇るのはかつての橙色の髪を持つ少年だった。その少年が今でもスラム街で生きているかはわからないが、確かに今の実力ならアレンはその少年と戦うことができるだろう。
「──わかりました、望むところです」
強い決心を胸にそう口にしたアレンは、『神速』の方を見てそう口にする。その覚悟で染められた瞳を見た『神速』は笑顔を作り、静かに頷き──
「それじゃ、早速出発だ。持っていく許可を与えるのは弓矢だけ。すぐに出て行きな」
「え、今すぐなんですか?準備は」
「覚悟を決めたんだろう?それなら、すぐに出て行け。首領を倒すまでは絶対に帰ってくるなよ。そうじゃないと、僕は独立を認めない」
『神速』は強い口調でそう言い放ち、アレンのことを家から追い出す。
そのスピード感に驚きながらも、アレンは弓と矢の入った矢筒を背負い、かつてのスラム街へと歩みを進めたのだった。
***
──アレンの目的地であるスラム街では、1人の貴族令嬢──いや、正確には元貴族令嬢が彷徨っていた。
灼熱の炎のような色をした紅蓮の髪と瞳と同じ、情熱的な赤のドレスに身を包んだその麗しいお姿は、到底スラム街には似合わない。だからこそ、スラムを彷徨い始めてからものの15分足らずで家を追放されたその令嬢は着ている衣服を剥ぎ取られて一糸まとわぬ姿にされてしまった。
彼女は服を諦め泣く泣く逃げ出したところで、なんとかボロ布を手にしてそれを羽織ることで外の寒さに耐え抜いていたが、その纏う布切れが彼女のこれまでの暮らしがもう二度とは手に入らないことを突きつける。
「──もう、私は」
婚約破棄をされて、そのまま家を追放させられた彼女に帰るべき居場所はない。
これからの人生に待ち望んでいる者は絶望一色だろう。武器商人の出自であるレオミュール家出身の彼女は剣の使い方を女性ながらにマスターしているけれども、肝心の剣が無ければ何の意味も為さない。
貴族社会と同じくらい上下関係に厳しいこのスラム街で、彼女──エレーヌ・ダニエラ・レオミュールは生きていくことが難しいだろう。
彼女自身もそう思った矢先──
「──失礼、お嬢さん。少し話を聴かせてもらえないかな」
そこにやってきたのは、矢筒を背負った銀髪の男であった。顔は整えられており、エレーヌと同じくらいスラム街の似合わない容姿だ。彼女はその来客に戸惑い、その顔を凝視すると、はてさてどこかで見たことがある。
「──アレンさんですか?」
「──どうして僕の名前を?」
エレーヌが小首を傾げて質問を投げかけると、自分の正体を知っているその少女に驚いたのかアレンは驚きのあまり聞き返してしまう。
「やっぱり、アレンさんなのですね。私です、エレーヌ・ダニエラ・レオミュールです」
「エレーヌさん!?どうしてここに」
──2人は知己であった。
両者が出会ったのは何気ない日の親睦会。将来、政略結婚をするかもしれないから──などと同年代の幼子がいる貴族が集まっていた会で、アレンとエレーヌは出会っていたのだ。
また、これは余談ではあるがエレーヌとの婚約を破棄したヒプノシス家の貴族令息であるクレバス・ラドス・ヒプノシスと出会ったのもそのような親睦会である。
「全てをお話しすると長くなるのですが、一言でまとめるのなら婚約破棄されて、そのまま家を追放されてしまって……」
彼女は気まずそうにそう口にする。婚約破棄だなんてそう簡単に起こっていいものではない。
そんな珍しい事案にエレーヌは巻き込まれた挙句、家を追放されてアレンと同じように貧民街に流れ着いたようだった。アレンは心の中で同情するけれど、彼にしてやれることなどない。
「そうですか……」
「アレンさんはどうしてこちらに?」
「今、僕は『神速』に師事しておりまして。そこから独立するために、このスラム街の首領を倒してこい──と言われまして」
アレンは、『神速』に出されたその課題を無理難題だとは思わない。今の実力を考えれば、あの橙色の少年と手合わせすることは簡単だろう。
「──アレンさん。一つ、お話を良いですか?」
「はい。なんでしょう?」
「私と結婚してくださりませんか?」
「──は?」
エレーヌの突飛な提案に、アレンは開いた口が塞がらない。
目の前のエレーヌは、婚約破棄されて傷心中なはずだ。それなのに、こんな提案をされてアレンは思考が追い付かない。
「失礼。驚かせてしまいましたかね。ですが私には、男女が共に生きる方法を結婚と言う言葉でしか表現できないのです。お願いします、私と共に生きてくださりませんか?私は貴方がいないとこのまま死んでしまいます」
エレーヌの妖艶な瞳に未来は映っていなかった。アレンが断れば、彼女はこのスラムで何も為すことなくプライドを踏み躙られて死んでしまうだろう。だが、彼女のその高潔な魂はまだ生きていた。
凛とした態度で、アレンの前に佇んでいた。
「──結婚はできません。ですが、僕と共に来ることは許可します」
「ありがとうございます。アレン様は私の命の恩人です。私にできることは何でも致しますので、これからよろしくお願いします」
エレーヌが纏っているボロ布からは一切想像できないような美しい笑顔を映し出す。
──エレーヌがアレンと致し、純潔を散らすのはその数時間後の話であった。
***
アレンとエレーヌの男女の交わりは、一種の既成事実となりアレンがエレーヌを手放せなくなった理由になってしまった。
もちろん、そんなことしなくてもアレンはエレーヌのことを見捨てなかっただろうが、2人をより強固に結びつけることになる理由になる。
「──それで、だ。僕が倒したいのはこのスラムにいる首領だ。それを探したい」
『神速』が首領と表現したスラム街のトップは、アレンの中で一つの予想がついていた。
それは、彼の家が没落してスラムを彷徨っていた時にその腹を掻っ捌いた橙色の髪の男だ。
2人が手分けしてスラム街で聞き込みを行うと、どうやらその橙色の髪を持つ男はまだ生きていて、しかもアレンの見立て通りこのスラム街の王として君臨していることがわかった。
名はタビオス・グレゴランス。『暴若武人』という二つ名も、広まっているらしい。
「『暴若武人』、か……」
「今日一日歩き回りましたが、かなり収穫がありましたね」
エレーヌの行使したDランクの炎魔法で、スラム街の一角に小さな明かりが灯る。
その微かな光が2人の顔をぼんやりと映し、暖かな印象を与えていた。
「そうだね、もう必要な情報は集められたし、明日からはタビオスの捜索に動けそうかも」
「では、明日の為にもしっかり体力を回復させておかないとですね」
「あぁ、そうだね」
2人が火を囲んで談笑していると、扉が宙を舞う。
「──は」
本来であれば開閉の二つの動作しかするはずのない扉が、思い切り蹴り飛ばされたことで宙を舞う。
回転しながら空を踊るそれは、そのままエレーヌの方へと突き進み──
「危ない」
アレンは、エレーヌを抱き寄せて飛来してくる扉の直撃を避けた。
彼女が先程まで座っていたところに従来の機能を失った扉は衝突し、大きな音を立てて破壊される。
アレンとエレーヌはハグするような形になり、エレーヌの纏うボロ布越しにエレーヌの体の柔らかさが伝わってくる。昨日硬いベッドの上で直に触れたその柔らかさにアレンは頬を紅く染めるが、炎魔法で照らされている部屋ではその差異は他の誰にもわからない。
「俺様のことを探ってるって言う不届き者はオメェらか。殺される準備はできてるんだろうな?」
その男は、右腕を大きく回しながらそんなことを口にする。
同年代とは思えないほど筋骨隆々としたその大男の発言により、アレンはその男がどこの誰かと言うものをハッキリと理解した。
「──『暴若武人』タビオス・グレゴランスだな?」
「あぁ、俺様が直々にぶちのめしに来てやったぜ」
アレンとエレーヌが隠れ潜んでいた建物に緊迫感が漂う。エレーヌが、Dランクの炎魔法を数回使用し、部屋の中を明るくする。すると、その男の髪色が橙色であることが判明した。
そして、その背中に背負われている巨大な斧は、かつてアレンの体を引き裂いたものと合致し、一方的に因縁を抱えている相手が目の前にいることを理解する。
きっと、タビオスはアレンのことを覚えていないだろうし、もう既に死んでいると思っているはずだ。
「──まさかそっちから来てくれるとは思わなかった。探す手間が省けたよ」
アレンはそう口にして、至って冷静に背中にある矢筒から弓矢を取り出す。タビオスはそれを見て、自らも背中に背負っていた斧を右腕で取り、両腕で握った。
「エレーヌ、下がっててくれ。これは男と男の戦いだ」
「──わかりました。愛しております、アレンさん」
そう口にして、エレーヌはアレンの右頬にキスをして部屋の後ろに下がっていく。
貴族令嬢の中では卓抜した剣のセンスを持つエレーヌであるが、剣どころか棒切れさえない現状で役に立つことはないだろう。
──だからこそ、アレンとタビオスの一騎討ちが開始する。
「お前、名前は?」
「アレン・ノブレス・ヴィンセント。『神速』の一番弟子だ」
「ッケ、元貴族のボンボンか。反吐が出るぜ」
どうやら、タビオスは昔にアレンに襲い掛かったことを覚えていないようだった。あの時『神速』がやって来なければアレンは死んでいたことを考えると、タビオスの記憶に残っていないことに苛立ちが隠せない。
「おいおい、何怒ってんだよ?ダッセェな。元貴族の連中はこんなちょっとで怒るのか?そんなんでよく生きてこれたな」
タビオスはどうやら、アレンの怒る理由が「元貴族のボンボン」という表現にあったと考えたのか、そんな煽り方をする。だけど、見当違いな煽りなのでアレンには通用しない。
彼は、弓を構えて怒りを乗せた一撃をタビオスの方に放つ。
「──〈火矢〉」
炎を纏った弓矢は、一直線にタビオスの方へ飛んでいくけれども、その矢はいとも簡単に斧で防がれてしまう。
「残念だな。そんなちっぽけな矢は、俺様には通用しねぇ!」
「じゃあ、これならどうかな。〈千射観音〉」
それと同時、魔法で作られた無数の矢がタビオスの方へと放たれる。
「──ッチ!面倒だ!」
タビオスはそう口にして、乱雑に斧を振るうけれども無数に飛んでくる矢を防御することは難しい。
その肩や横腹に矢が突き刺さるが、大したダメージは見えなかった。
「──やはり、一撃が軽すぎると駄目か」
アレンは冷静にそう判断し、次なる一手を放つ準備をする。が──
「次は俺様のターンだ!〈震撼核〉!」
その言葉と同時、斧が地面に叩きつけられて地面が震える。スラム街に放置されている誰にも管理されていない建物は大地と共に大きく揺れて、今にも崩壊しそうな音を立てる。
「──ッ!」
その振動に足を取られているアレンは、その場に踏みとどまるのが精一杯で弓を引くことも難しい。
いなすことができない振動に耐えきれず、床に膝をついてしまうアレン。弓を引いてもその振動により焦点が一つに定まらないので、狙うこともできない状態では、動くタビオスを狙うこともできずにいる。
「俺様のことを舐めてんじゃねぇ!」
〈震撼核〉の揺れを無視してアレンの方へと特攻してくるタビオスを回避することは、アレンにはできない。そのまま、斧が降られてアレンの脳天がかち割られ──
「させませんわ!ていっ!」
──る寸前に、エレーヌが投擲したのは、この家に入ってくる時にタビオスが蹴り飛ばした扉であった。
アレンを守るために投げられたそれは、揺れに一切関係のない空を回転しながら飛び、アレンとタビオスの間に割って入った。扉が斧に突き刺さり、肝心のアレンには攻撃が通らない。
「──んだァ!?」
タビオスの驚きの声が通り、その扉を斧から剝がそうと斧を横に振るうが、その時──
「──こうして目の前にいてくれるのならただの木偶の坊だ」
「──ッ!」
「〈流星の矢〉」
音速を超える矢が、タビオスの腹部を穿つ。その強力な攻撃は、タビオスの意識を奪うのには充分だった。
「がはッ」
腹を貫かれた衝撃で後ろに吹き飛びながら、口から血を漏らして倒れるタビオス。
そのまま大きな音を立てて大の字に倒れた彼は、斧を投げ出していた。
「──勝ちましたわ!」
そう口にして喜ぶエレーヌ。アレンは、揺れが収まるとの同時にエレーヌの方へと走り出し、彼女を抱擁すると──
「逃げるぞっ!」
「な、なんて積極的なんですか──って、はい?逃げるって?」
「この建物は崩壊するっ!」
そう口にして、エレーヌを抱いて扉のない入り口の外にアレンが飛び出たのと同時、失神したタビオスを残したその建物は大きな音を立てて崩壊する。埃を撒き散らしながら崩れていくそれは、タビオスの墓標になるだろう──と、思われたが。
「あぁ、クソ。痛ェじゃなぇか!」
建物の崩壊が数十秒も経たないうちに、その瓦礫の山から太い腕を出したのはタビオスであった。
このスラム街で最も強く、最もタフな男であるタビオスは、瓦礫に押しつぶされても死ななかったのだ。
「──つ、強い。〈流星の矢〉で貫き瓦礫で押しつぶしても勝てないなんて」
アレンは頭の中で次なる一手を考える。〈夢幻の蒼穹〉と〈千射観音〉を同時に使用して攻撃するか?それとも、朝まで耐えて十八番である〈向日葵〉を披露するか?もしくは、エレーヌに棒切れを与えて2vs1で戦うか?それとも、それとも、それとも……。
「いや、俺様の負けだ」
アレンが脳みそを回している間に、そう口にするのはタビオスだった。彼は両手を挙げて首を横に振り、戦闘を放棄する意思を表明する。
「──嘘、どうして」
「どうしてって、見りゃわかんだろ。腹に矢は突き刺さってるし体は瓦礫に飲まれてボロボロ。俺様じゃなきゃ死んでただろうよ。しかも俺様の武器である斧が瓦礫の中と来た。武器も持たずに戦う馬鹿がどこにいるって話だ。それに──」
「それに?」
「お前達のコンビネーションには痺れたぜ。このスラム最強の称号はお前達2人で山分けしろ。その代わり、俺様をお前たちの仲間に入れてくれ」
タビオスは、街頭一つだってないスラムだからこそ見える満天の星空の下で、星に負けないほどの輝きを持つ屈託もない笑顔で、2人を前にそんなことを口にしたのだった。
***
「──そういうわけでまたも仲間が2人増えたって訳か。全く、アレンは面白いね」
カエサル邸にて。
アレンの口から事の顛末を聞かされた『神速』は、増えた2人の仲間──『高潔欲』エレーヌ・ダニエラ・レオミュールと、『暴若武人』タビオス・グレゴランスの顔を交互に見る。
2人共名前も無いスラム街にいたため家に来たときは薄汚れていたが、『神速』の妻の手によって綺麗さっぱり丸洗いされると、元来の美しさを取り戻した。
エレーヌは、まるでお人形のような貴族に相応しい顔立ちだったし、タビオスだってスラムの垢を抜いたら立派な好青年だ。まぁ、エレーヌは美しすぎて貴族の残り香がするし、タビオスはガタイの良さとそのモリモリとした筋肉があるので、格段に近付きやすくなったとは言えないが。
「私はアレンさんと一生を添え遂げるって決めました。子供は20人欲しいです」
「負けた奴が勝った奴の言いなりになんのはスラムじゃ当たり前だ!俺は負けたからアレンに付き従ってるんだぜ」
アレンにも頼りになる仲間ができたようでアンドスト同時、またも家がうるさくなりそうだから明日にでも独立させて家を追い出そうと決心する『神速』。
「──と、そうだ。アレン」
「なんですか、師匠?」
「独り立ちして冒険者として世界を旅するのなら、二つ名が必要だろう」
「二つ名、くれるんですか?」
この世界での二つ名は、他人に付けてもらうのが通例だ。
誰かのものを踏襲するのもいいし、師事している人物や格上の人物に付けてもらうも良し。中には世間一般からいつの間にかそう呼ばれている二つ名もある。中には自分自身で二つ名を名乗る人もいるが、多くはなかった。
踏襲される二つ名は『剣聖』や『魔帝』などがあり、師事している人物に付けてもらうのは『鋼鉄の魔女』や『勇剣』などが、世間一般から呼ばれているのは『高潔欲』や『無敗列伝』などであり、自分自身で付けた二つ名と言えば『神速』や『羅刹女』などがあった。
「アレン・ノブレス・ヴィンセント。今日から君の二つ名は『閃光』だ」
「『閃光』……」
アレンは、その言葉をゆっくりと咀嚼するように発音し、その後にワナワナと口を震わせる。頬が紅く染まって口角が上がり、拳をギュッと握りしめた。
二つ名の譲渡は、死に認められた証拠でもある。『神速』の弟子であるアレンにとって、これほどまでに嬉しいことはないだろう。
「──『閃光』アレン・ノブレス・ヴィンセント」
「そうだ。『閃光』だ。気に入ったかい?」
「気に入らないなんて天地がひっくり返っても言いませんよ」
「あぁ、そうか。よかった。まぁ、気に入らないなんて口が裂けても言わせないけどね」
──こうして、アレンの独り立ちの準備は確実に整った。
「ところで、アレン」
「『閃光』って呼んでください」
「──ところで、『閃光』」
「なんですか、師匠?」
「冒険者として活動するなら、チーム名もあった方がいいんじゃないかい?」
「チーム名?」
「あぁ。僕は『神速』個人で活動しているし、それでも戦っていけるからチーム名もクソも、クソみたいなチーム名もないけれど、複数人で活動するのなら必要だろう?チーム名が」
「チーム名ですか、考えたこと無かったです……」
『閃光』──アレンのチームには、既に5人のメンバーが集まっていた。
『閃光』アレン・ノブレス・ヴィンセント
『上弦』テヘラン・ソングバード
『下弦』ルリアナ・ソングバード
『高潔欲』エレーヌ・ダニエラ・レオミュール
『暴若武人』タビオス・グレゴランス
アレンは、部屋にいる他の4人の顔を順番に眺めて、ジッと目を閉じる。他の皆は、アレンにその決断を委ねているようで何も口にせずただアレンの判断を待っていた。
「──今、決めました」
「聞かせてくれ」
「『親の七陰り』です」
「──史上最悪の歴史、か。いいね。君達にピッタリだ」
『神速』はそう口にして、性格の悪い笑みを浮かべる。
『親の七陰り』は、まるで彼らの人生を嘲笑うような二つ名だ。
或る阿呆は家が没落し、或る馬鹿共は幼子に一瞬で敗北し、或る変態は家から追放され、或る愚鈍はスラムという小さな社会で驕り高ぶっていた。
そんな彼らの過去を「史上最悪の歴史」と称することは逆に、「未だ来ていない未来への讃歌」と同義だろう。それを理解した『神速』は頭ごなしに否定することなどせず、アレンの判断を見届ける。
「師匠、ありがとうございました。出発の準備ができたら僕達5人は出発しようと思います」
「あぁ、静かになってせいせいするね」
「はい。僕も師匠の鬱陶しい声を聴かずに済んですみます」
そう口にして、アレンと『神速』は2人で顔を見合わせて笑う。その後、お互いに弓を引きあって大乱闘になり、『神速』の妻34人に順繰りに1時間ずつ怒られたのはいい思い出だった。
***
──『閃光』率いる『親の七陰り』は、絶崖アイントゥにある『神速』の邸宅を出て旅を始めた。
目的も無い小さな旅だ。都市に行っては依頼を受けて日銭を稼いで食べていく。
商業都市アールには、危険だがやりがいのある仕事などあちこちに転がっていたし、彼らにはそんな仕事が楽しくてたまらなかった。
貴族出身の2人は格式のない自由の中で責任の取捨選択ができることに感激し、暴れまわって悪名を広めていたソングバード兄弟の2人は依頼を達成することで誰かから感謝されることに感慨し、貧民街に生まれスラムに生きたタビオスは広い街の整備に感動していた。
何不自由なく生活し、ドラコル王国中を冒険した彼らはその名を王国中に知らしめながら旅を続けていた。
『親の七陰り』の遍歴を騙るのには、彼らが過ごした時間と同じだけの時を必要とするのだが、今回はその中から選考に選考を重ねて、『親の七陰り』にメンバーが増えた時の話をしよう。
──と言っても、『失敗作』パーノルド・ステューシーが仲間になった経緯はいくらか前に話したはずだ。
パーノルドの属しているサーカス団『CRISIS CIRCUS』の公演を観劇し感激したアレンが、パーノルドを仲間に引き入れるために勝手に楽屋まで入り込み、半分恫喝に近い形で仲間に引き入れた話は前にもしてある。
だから今回は、『魔帝』の9番弟子であり『鋼鉄の魔女』と呼ばれて忌み嫌われているアイアン・メイデンことメイの話をしようと思う。
──メイと出会うきっかけとなったのは、今から8年ほど前のある一人の男性の依頼だった。
それは「私の村に一人の魔法使いがいて、好き勝手にしているから助けてほしい」というものだった。
ちなみに、その依頼は伝書鳩で運ばれており上記した旨と地名のみが書かれて終わっているので、この依頼を出した張本人とは会えてない。
少し調べてみると、『魔帝』の9番弟子であるアイアン・メイデンという少女が、首都プージョンと宗教都市ムーヌの間にある農村で邪知暴虐を働いているとのこと。
なんとなくその事件に惹かれた『閃光』達は、その事件の調査を行うことにしたのだ。
そして、その村に移動するとそこに広がっていたのは死体の山。死臭が蔓延し、その死肉に人が群がっている様は、言葉で表せない程惨いものだった。
「「これはひどいな……」」
ソングバード兄弟が同じ感想を持ち、同じタイミングで口にするのは日常茶飯事だから、誰もそれを気にかけない。
「これを一人の少女が行ったと考えると凄いパスね」
凄惨な現状を前に、冷静を崩さないサイコパスを演じているパーノルド・ステューシーは、至って冷静にその状況を見極める。
「ポケットに財布が入ってるから金銭目当ての犯行だとは思えねぇなぁ」
近くに転がっていた腐りかけの死体の服を遠慮も容赦も無く漁るタビオスは、その服の中から財布を見つけて、金品の強奪による殺人でないことを理解する。
「じゃあ、一体何が要因なんだ……?」
犯人の正体は掴めている。ドラコル王国内で最も魔法の扱いに長けている『魔帝』の9番弟子である『鋼鉄の魔女』アイアン・メイデンだ。
その性格は苛烈であり、よく『魔帝』の弟子ともケンカをしていたのだと言う。
「とりあえず、生き残りっている人を探してみるか」
そう口にして、村の探索をし始める『親の七陰り』の一行だったけれど、そこには誰一人として見つからない。家の戸を叩いても、軋む音を立てて虚しく開くだけで、中から返事は聞こえてこず、それを訝しみ中に入ると、子供を守るように抱いている父母が、子供諸共体を貫かれて死亡している──そんな悲惨な現場が広がっているだけだった。
30分ほど探索し、村を一通り見まわった『親の七陰り』は、ある一つの結論を付ける。
「私はさっき手紙に書かれていた依頼主の家に行ってきたが、もぬけの殻だった」
「この村にはもう生き残りはいない。そう考えるのが妥当だろう」
長年冒険者として活動してきたエレーヌは、貴族の頃の敬語を忘れて他のメンバーと分け隔てなく関わるようになっていた。
それは本筋とはズレるので置いておくが、アレンはこの村にもう生き残りがいないと結論付ける。
もしかしたら、どこかに隠れ潜んでいるかもしれないが、アイアン・メイデンというよそ者に好き勝手荒らされた現状で、『親の七陰り』の目の前に姿を現してくれるとは考えにくい。だから、当てにしないほうがいいだろう。
「──誰一人として情報が得られないとなると、アイアン・メイデンがこの村にまだいるかもわからないパスね」
既に依頼主がこの村から姿を消している現状、『親の七陰り』がアイアン・メイデンを倒したとしても依頼達成の報酬は払われないことになる。
だから、もうこの時点で撤収しても構わないのだが──
「僕はアイアン・メイデンに会ってみたいな。僕達と気が合うかもしれない」
いつだってこのチームの中心はアレンだ。アレンが右を向けと言ったら皆一斉に右を向くし、アレンが左を向いてこっちが右だと言えば、そちらが右になる。
そのため、アレンが「アイアン・メイデンに会ってみたい」と言った現状、『親の七陰り』の他のメンバーはたとえアイアン・メイデンがもう既にこの村に──いや、この国に、もしくはこの世にいないとしても、見つけ出してアレンの前に連れてくる必要がある。
アレンと言う没落貴族の絶対王政は、無理難題を国民に押し付ける──はずだったのだが。
「死ね」
どこからともなくそんな声が聴こえてくると同時に、アレン達6人を覆うように影ができる。
「「これは──」」
「〈鋼鉄の巨人〉」
ソングバード兄弟の口から出た無意識的な疑問に、声の主が答えた──のではなく、単なる詠唱だったのだろう。だが、結果としてその声の主の口にした魔法こそが、その影の正体。
──その空中に生み出された巨大な鋼鉄の腕こそが、影のできた正体だった。
「──総員、退避!」
アレンがそう声に出すと同時に、蜘蛛の子を散らすように6人は影の外へと出て行く。
刹那、地面にその巨大な腕が衝突して、砂埃を散らして空気を震撼させる。タビオスの放つ〈震撼核〉よりも強力なのではないか──などと疑問に思ってしまうその一撃は、『親の七陰り』を本気にさせると同時に、攻撃を放った正体が強力な魔法使い──彼らが求めていたアイアン・メイデンのものであると悟る。
「お前がアイアン・メイデンか!」
アレンはそう声をかけると、〈鋼鉄の巨人〉を放った威力に似合わぬ可愛らしい銀髪の少女が、被っていたつばの広い黒い帽子が風圧で飛ばないように抑えながらアレンの方を睨む。
「気安く私の名前を呼ぶな。劣等人種が」
鋭い目つきでアレンのことを捉えたアイアン・メイデンは、そのまま次なる一手を放つ準備をする。
巨大な〈鋼鉄の巨人〉が霧消し、全員の生存をアレンは横目で確認した後に、彼自身も弓矢を放つ準備をする。
──総力戦の開始だ。
「〈向日葵〉!」
「〈斧塵爆発〉だッ!」
「〈流星斬り〉!」
「──〈鋼鉄霰〉」
アレンが超高速の弓を放ち、タビオスが斧を振り回しながらアイアン・メイデンに接近し、エレーヌが横一文字に剣を振るうと同時、アイアン・メイデンは鋼鉄で作られた弾丸をまるで雨のように降らせる。
「「──マズいっ!」」
ソングバード兄弟が声を揃えて、その強力さを主張し、アレンを庇うために動き始める。
エレーヌの体は無数の弾丸に穿たれ、タビオスは多くを斧で弾き飛ばすけれども、数発はその体に食い込んだ。
「──がはッ!」
「うぐっ!」
「「だぁぁ!」」
アレンはソングバード兄弟に庇われたためになんとか助かったけれども、援護に入った兄弟2人とタビオスとエレーヌの2人はうめき声をあげる。
「──パーノルド!皆の回復を!」
「わ、わかったパス!」
アレンの指示により回復を戦闘よりも優先することになったパーノルド。アイアン・メイデンの傍に倒れる重鎧に身を包んだエレーヌを、タビオスは片手で軽々と持ち上げてその場を撤収し、パーノルドの方へと運んだ。
アレンは、庇ってくれたソングバード兄弟をそのままに、アイアン・メイデンと対峙する。
魔法も遠距離攻撃である以上、アレンとアイアン・メイデンの中に有利不利はない。
だが、アレンの目の前にいるのは9番目とは言え、『魔帝』に認められてその下で育てられた魔法の天才だ。
「──いや、弱気になる必要はない。僕は弓矢の天才である師匠に育てられたんだから」
アレンは、育ての親でもある師匠──『神速』の実力に心酔している。だから、アイアン・メイデンと比べても引けを取らないはずだ。
そんなアレンの呟きが聴こえたのか、アイアン・メイデンはアレンを見定めるようにしげしげと見て──
「──お前も、誰かに師事してるの?」
「あぁ、もちろん。僕は『神速』の一番弟子さ」
「一番弟子……」
その時、アレンは「あ、まずい」と心の中で思ってしまった。もしかしたらそれが言葉に出てたかもしれないが、その時のことはよく覚えていない。だって、本当に「まずい」と思っていて、それ以外のことに頭なんて回せなかったからだ。
自分は、言ってはいけないことを言った気がする。
だって、十数メートル前にいるアイアン・メイデンの歯ぎしりが、こっちに聴こえてくるまでに激しくなっているのだ。理由はわからないが突如として怒り狂う少女に、先程よりも酷な技を放たれてはたまったものじゃない。なんとかして弁明しなければ──。
そう思ったものの弁明する時間など無く、アイアン・メイデンの苛立ちは最高潮に達する。
「私は、優勢人種が大っ嫌いなのよッ!ぶち殺す!」
それと同時、再度アレンを覆うのは巨大な影。だがそれは、先程のような腕──〈鋼鉄の巨人〉ではない。それよりも何倍も大きい、アイアン・メイデンさえも飲み込まれてしまいそうな巨大な隕石。
「〈鋼鉄の隕石〉ッ!」
──アイアン・メイデンの熱烈な嫉妬が、猛威を振るう。
***
その少女は、凡人だった。
彼女の言葉で言うと「劣等人種」である彼女の家は、有名な魔法使いの家系であった。
そのため、幼い頃──いや、それよりも前の胎児の頃から優秀な魔法使いとして活躍できるためにトレーニングが成されてきていたが、彼女はあまりにも凡人過ぎた。
もちろん彼女だって人並み以上の実力はある。
かの有名な第34代『剣聖』マルクス・シュライデンはDランクの魔法さえも使えないとされているし、ドラコル王国内に魔法を使いたくてもMPが全くない体質という人はそれなりにいる。
だから、彼女は世間一般から見てみれば「優秀」な魔法使いだったのかもしれないが、彼女が生まれたメイデン家は一流の魔法の一族だ。
貴族ではないが、ドラコル王国の騎士団に昔から優秀な人材を多く派遣しているメイデン家からしてみれば、人並みから少し毛が生えたくらいの実力のアイアン・メイデンなど「劣等」に等しい存在だった。
──と、彼女が家で冷遇されたのは彼女単体の問題ではない。
彼女の兄である、ローゼン・メイデンは幼少からその才能に恵まれていた。
一族の中でも五本指に入るくらいの優秀さであったために、よりアイアン・メイデンの凡人さが浮き彫りになったのである。
鈍感な兄は、最愛の妹であるアイアン・メイデンが両親から冷遇されていることなど気が付かなった。
いや、気付いていたかもしれないが彼はそのことを気に掛ける素振りは見せなかった。
だから彼女は、家の中でも冷遇されていたのである。
──が、そんな彼女の人生にも転機が訪れる。
それは、優秀な兄であるローゼン・メイデンではなく凡人に毛が生えたレベルの彼女が、『魔帝』からの指名で9番弟子に選ばれたからだ。
何の気まぐれか下心だろうか。
『魔帝』は、優秀なローゼン・メイデンではなく凡人のアイアン・メイデンを弟子に選んだのだ。
世界にたった8人しかいない第12代『魔帝』の弟子。その9人目に、アイアン・メイデンを選んだのである。
「──おかしい!どうして私ではなくアイアンが、アイアンが弟子に選ばれたのですか!」
両親は、自分の家系から『魔帝』の弟子が出たことに喜んだので、兄とか妹とか、優秀とか凡愚など気にしていなかったが、当の兄であるローゼン・メイデンは、第12代『魔帝』の判断に反対した。
それもそうだろう。
自分よりもできない妹がこの世界のトップの弟子に選ばれたのだから。
──が、そんなローゼン・メイデンの怒りを宥めることなく静かに『魔帝』はこう言い放つ。
「ローゼン君。君は既に成熟しきっている。君はもうこれ以上の成長の見込みはないんだ。その点、アイアンにはまだ成長の見込みがある。だから私は、真価を発揮させるためにもアイアンを選んだんだ。わかるだろう?成長し終えた君ならね」
その言葉を聴いたローゼン・メイデンは反対する戦意を喪失。
納得こそしていないが、理解してしまったのだろう。己の才能の限界と言うものを。
──と、そんなこんなでアイアン・メイデンは『魔帝』の9番弟子になったのだが、そこでも己の才能の名さと言うものを嫌と言う程見せられることになる。
そう、『魔帝』の弟子は皆、揃いも揃って兄のような──いや、兄を易々と超えていくような天才ばかりだったのだ。
1番弟子 『彗星』 ペイシス・ペテルギウス
2番弟子 『青焔』 アンヘラ・グレイトス
3番弟子 『簒奪する高潔な魂』 クルセイド・ブルゴーニュ
4番弟子 『壊』 ヨルア・ガリレオ
5番弟子 『天性の才覚』 カイバー・フィリップ
6番弟子 『狂行突破』 ヴァスロ・バルバロイ
7番弟子 『落雷の鉄槌』 カール・トーマス
8番弟子 『真実の口』 マリアス・ベリー
その一人一人について特筆することは特にはしないが、全員が全員超が付くほどの天才であり、才能に恵まれた人物だったのだ。
中でも、ペイシスとアンヘラ、カイバーの3人は才能に恵まれ過ぎていたと言ってもいいだろう。
天地をひっくり返すような魔法を、ドラコル王国を一瞬で火の海に変えるような魔法を、Sランク魔法を10個同時に発動できるようなセンスを、持っているような3人は、アイアン・メイデンとは比べ物にならない程魔法に強かった。
それに、彼女を苦しめる極めつけとなったのは、彼女がやって来た1年とそこらで新しく『魔帝』の弟子になった10番弟子『鳴動する神の意志』タルカス・クローバーの存在だろう。
自分よりも後に入ってきて自分よりも幼い彼は、『魔帝』の下で修業をして1年が過ぎた頃の、アイアン・メイデンを入って早々コテンパンにした。
その事実は、彼女のプライドを踏みつけにしたのだ。
そんな最弱な彼女は、世界に嫉妬した。
どうして私は、こんなにも才能に恵まれないのか。師匠は伸びしろがある──と言ってくれるが、それは本当なのか。そもそも、『魔帝』自身才能に恵まれているのだから、できない私の気持ちなんてこれっぽっちもわかってくれていないのに。
彼女を打ちのめす絶望は、あまりにも大きかった。
だから彼女は、『魔帝』が取ることになった最後の弟子である11番弟子である『十字架背負い』ティア・グーテンベラが、皆の下にやって来たその日の夜に姿を晦まし、自分の人生を棒に振るうような虐殺事件を起こしたのだった。
だけど、それで気持ちが晴れることはなかった。
それどころか、目の前に現れたのは「『神速』の一番弟子」を名乗る天才。
才能に恵まれている男。
──あぁ、そんなのなら自分も含めて死んでやる。
これは自分自身への鎮魂歌だ。
──。
───。
────。
「──なん、で」
どうして。
ドラコル王国を破壊しかねない隕石が自分たちのいる場所を襲ったはずなのに、隕石に潰されて目の前にいる『親の七陰り』と一緒に自分も死亡したはずなのに、どうしてまだ生きている。
「──良かった、間に合ったみたいだ」
太陽の陽気のように暖かい感覚が、体を包む。自分を抱いているのは、最も妬むべき優勢人種──アレンであった。MPを全て消費して失神していたらしく、空は朱色に染まっている。
「〈鋼鉄の隕石〉は?」
「破壊した。俺達全員で」
アレンのそんな言葉を聴いて、私は周囲を見渡す。そこに落ちていたのは、〈鋼鉄の隕石〉の残骸だと思わしき大量の岩塊と、疲れ果てて倒れている『親の七陰り』のメンバーだった。
目の前に広まっているのは、確かに〈鋼鉄の隕石〉が破壊された事実だった。
だけど、私は信じられなかった。〈鋼鉄の隕石〉は、ただでさえ普通の隕石よりも硬い鋼鉄でできているというのに、どうして破壊しようとなど思ったのだろうか。
それに、破壊しようと思ってもできるようなものじゃない。
「信じられない──って顔をしてるね」
「当たり前じゃない。私の本気の魔法が、こうも簡単に打ち砕かれるなんて」
「簡単に?馬鹿言うな。あの隕石を対処するのが簡単だって言うのなら、一体この世の何が難しいって言うんだよ。師匠の無茶ぶり以上の、人生最大の無理難題だった」
アレンはそう口にして、その2本の腕の中にいる私のことをジッと睨む。そして、数秒の沈黙の後にその視線は柔らかくなって口角が少し上がり──
「──なぁ、仲間になってくれ」
「仲間?」
「あぁ、強い魔法使いが1人欲しいなって思ってたんだ」
「──私は強くない」
「いいや、強い。戦った僕がそう言うんだから君は強い。捕吏に差し渡すのには惜しい存在だ。僕は君を気に入った、君も『親の七陰り』の仲間になれ」
「──はい」
その強い物言いに、私は自分の頬が紅くなるのを感じた。空が朱色に包まれている今、それに気付く人は私以外にいないだろう。
私は、私を認めてくれて必要としてくれる『親の七陰り』に入ることに決めた。
──私の名前はアイアン・メイデン。アイアンってのは可愛くないから、「メイ」と呼んで。
***
メイが仲間に加わった話の余談だ。
メイが『親の七陰り』に加わったものの、捕吏はそれを納得しなかった。
しかし、アレンが捕吏に「僕の仲間を逮捕したら、次は村じゃなくてドラコル王国を滅ぼす」と言う手紙を送ったのと、捕吏のトップとして職務を与えられていたメイの兄であるローゼン・メイデンがその逮捕をしない判断をしたのが合わさって、メイは無罪放免になった。
──が、ソングバード兄弟が逮捕されることになった数週間後、残った『親の七陰り』が王国戦争に参加しドラコル王国を滅ぼさんと戦い始めたのは、この時の伏線回収と言って良いのかはわからない。
──と、余談を終えるとこれにて『親の七陰り』のメンバー全員とアレンとの馴れ初めを語り尽くしたことになるだろう。
メイが仲間に加わった後もアレンの冒険は続き、それなりの実力者になったところでオンヌ平原にて『親の七陰り』の運命を変える天使──または悪魔と出会うことになる。
それは、村田智恵と言う名の勇者だ。
その勇者は、その容姿でアレンのハートを射抜いた。
智恵に一目惚れをしたアレンが、智恵を仲間に引き込むために試行錯誤し暴論を展開するのは、皆が知るべき話だろう。
勇者一行と共に麒麟を討伐したところまではよかった。そこまでは、『親の七陰り』も英雄でいることができた。輝かしい未来を手に入れることができていた。しかし──
──何の因果か、彼ら彼女らは王国戦争で世界に反旗を翻すことになる。
智恵が仲間に加わっていたらその命運は変わっていただろう。『神速』のところへ帰省していなければ結果は変わっていなかっただろう。
だが、全ての歯車が噛み合うように、機械仕掛けの運命は全ての行動に意味を見出していた。
──そして、王国戦争でアレンは智恵に殺されて死亡する。
だが、死にゆく彼は幸せそうだった。
それは愛するものに斬られたからか。否。
それはこの醜い世界と別れを告げられるからか。否、それも否。
──その理由は単純明快。
彼は、最初から不幸の渦中にいなかったのだ。
7人の元となったのも七つの大罪です。
ソングバード兄弟の活躍ももう少し描きたかったけれど、そうプログラミングされていなかったので仕方ない。智恵達が選択したルートが別だったら活躍してる可能性もありました。
ですが、栄を助けるために選んだルートはゲーム内で一番辛いルートだとされてます。
ちなみに、一番過酷なルートは『魔帝』とその弟子・『剣聖』も全部敵対してるし、一番悲しいルートだとドラコル王国が滅亡してます。
↓七つの大罪、それぞれがどれに当たるのかはこちら↓
強欲 アレン・ノブレス・ヴィンセント
傲慢 タビオス・グレゴランス
怠惰 パーノルド・ステューシー
色欲 エレーヌ・ダニエラ・レオミュール
嫉妬 アイアン・メイデン
憤怒 テヘラン・ソングバード
暴食 ルリアナ・ソングバード