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4月7日 その⑦

 

 ***


 俺が、教室に戻る。すると───


「だから、違うって!」

「どこが違うんだよ?小寺さんを殺したのは栄だろ?」

 教室で論争を繰り広げていたのは、紬と裕翔だった。


「栄は本当に何もしてないの!」

 そう怒ってくれているのは紬だった。必死に俺を庇ってくれているようだ。昨日殴られたはずなのに、紬には裕翔に立ち向かえる精神力があった。それほどまでに、仲間思いだったのだ。


 そして、紬の後ろには純介が困ったような顔をしながら紬を抑えようとしている姿が確認できる。


「それは、お前の希望論だろ?」

 どうやら、紬は小寺真由美が死んだことを伝えたところ俺が犯人だという偏り過ぎた解釈をされ、それを必死に否定しているようだった。


「栄は犯人じゃないんだって!本当に勝手に死んだんだって!」

 紬は、顔を真っ赤にしている。俺は、教室に入ることが躊躇われた。ここで、入ってしまえば一躍注目の的だ。昨日も、殴り合って注目の的になったが今日もなってしまっては困る。


 ───朝、智恵との事で注目されたと言われては否定できないのだが。


「栄を庇うように行動していた(お前)に栄について述べる時に信用があると思うか?───って、ご本人様が教室前に立っているじゃねぇか!」

 裕翔が、俺の方を指差す。すると、教室の中にいたほぼ全員が俺の方を見る。


「入ってこいよ、栄───いや、殺人犯か?」

 ニヤニヤしながら、裕翔が俺のことを見る。俺は、仕方なく教室の中に入った。


「それで、栄?小寺さんを殺したってのはマジか?」

「俺は殺してない。禁止行為で死んだんだ」

「へぇ?まぁ、そりゃあ犯人は否定するだろうねぇ?」


「否定じゃない。事実だからそう述べたんだ。殺してなくても訂正はするだろう?」

 俺は、紬の前に立つ。そして、正々堂々裕翔と向き合った。


「それで、どうして俺が犯人だと思うんだ?」

「根拠はたくさんあるよ。まず、オレの予想では栄───君は生徒会だ!」


「───ッ!」

 頓珍漢な予想に俺は思わず驚きの声をあげた。


「おっと、図星か?図星で驚いたか?」

「図星じゃねぇ。どうして、俺が生徒会だと思うんだよ。もしかして、殴られたことへの八つ当たりか?」


「な訳ないだろう?生徒会だと予想する理由は2つある!まずは1つ目。初日にヒントはあった!それは、クエスチョンジェンガだ!」

 初日で行った第1ゲーム『クエスチョンジェンガ』の名前が出てくる。


「何故?」

「クエスチョンジェンガで、全員が生き残ったのは確かに奇跡だと言えるだろう。だが、その奇跡はどうして起こったのか?それは、栄がジェンガのタワーを倒しても死なないことを皆に知らせたから!」

 裕翔は、目をつぶって、右手の人差し指をピンと立てて説明する。


「デスゲームと聞かされていたのだから、ジェンガタワーを倒したら死んでしまうかもしれない。普通の人はそう考えるだろう。だけど、栄は倒した。しかも、ミスを装ってではなくなぎ倒すようにだ!これは、死なないとわかっていたからこそできた行動じゃないのかい?」

「違う!」


「違わないだろう?じゃあ、どうしてなぎ倒したんだよ?理由は?理由はあるのか?」

「───ッ!」


 理由。理由はなんだろうか。皆を納得させられるような理由。生徒会ではないと証明できるような理由。


 俺は、一瞬にして思考が脳内を逡巡する。だが、答えは出てこない。


「どうしたのかな?黙っちゃって?図星で言葉も出ないか?」

「───思いついた...から...」


「え?なんて?」

「思いついたからだよ、ジェンガを倒しても生き残れるんじゃないかって!ほら、康太だって言ってただろう?生き残る方法を思いついたって!それで、俺も思いついたんだ!」


「───じゃあ...康太もグルで生徒会だったってこと?」

「───ッ!」


 俺は、その素っ頓狂過ぎる意見に驚いてしまう。断じて俺は生徒会じゃないし、中村康太とグルで仕組んでいることなんかでもない。


「おいおい、俺を巻き込まないでくれよ...」

 少し困ったような声を出すのは、中村康太だった。彼も、裕翔の被害に現在進行形であっている。


「あぁ、すまない。流石に康太をも生徒会に貶めるのは違かったな。すまない」

 裕翔はそう言うと、半笑いで謝罪する。そして、俺の方を向き直すと睨んできた。


 ───ぞわ。


 体に鳥肌が立つ。昨日、殴られた場所が疼く。恐怖。


 体が、本能的に恐れているのだ。また、殴られるのでは無いかと。しかも、今度はきっと皆仲間になってくれないだろう。今現在疑われているのは俺なのだ。


「それで、思いついただけで自分の命が賭けられると思っているの?オレには到底無理だな。不確実な行為に命を賭けられるとは思えない!」


 言い返せない。俺は言い返せなかった。純介にも、その「優しさ」を若干否定されたのだ。


 ───きっと、デスゲームにおいて俺は異常なのだ。俺の「優しさ」は異端なのだ。


「それにだ。現在、栄は126ポイントも持ってる!これも、マスコット先生達と手を組んでいるからじゃないのか?」

「───ッ!」


 俺は、驚きとともに反論を思いつく。一先ず、この反論をぶつけてみようと思う。良い悪いのどちらに転ぶかはわからないが、言ってみるだけの価値はある。



「まず、生徒会が決まったのは4月の2日だ!クエスチョンジェンガが行われた4月1日は、まだ決定してない!それに、今回の『スクールダウト』だって死亡しないゲームだ!だから、本戦に無理に残る必要なんかないはずだろ?違うか?」

あえて死なないゲームにしたのはこの反論をするためだったり。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] うにゅ? 愛香が見たのはマスコット先生だけ? 謎が深まる、それと裕翔、性格悪すぎ。 こういう奴を敵に回すと厄介ですね。 ここから栄は挽回出来るのか。
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