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人類最強vs龍種最強 その④

 

 ───『人類最強』森宮皇斗の、その二つ名に嘘偽りはない。


 その性能は、人間と言う生物をとっくに超越しているために「人類」という枠で括れるのかは些か怪しいが、両親が心臓に毛の生えたような天才であることを考えると、彼もれっきとした人の子だ。


 そして、そんな『人類最強』という「人類」の範疇に収まっている彼は、『龍種最強』という二つ名を持つ応龍を相手にしては天地が逆立ちをしても勝てない───。


「あぁ、クソ...」

 左腕の欠損。そして、魔法杖の消失。


 手にするものを全て使用し作戦立てる皇斗の頭の中を全て叙述すると、大小合わせて1万を超える文字通りの万策を全て紹介することになるが、それも全ては無駄になる。

 何故なら、皇斗が失ったその二つのものにより全てが崩れていったのだから。


 左腕の欠損は弓矢を放つことを禁じ、魔法杖の欠損はBランク以上の魔法の使用を制限する。

 彼の武器は、実質的に腰に携えた剣の1本になってしまった。

 皇斗は、ドクンドクンと脳に心臓の鼓動を響かせつつ、腕を失った痛みに耐える。


「止血を...」

 HP回復用ポーションで止血を試みる皇斗であったが───


「グルアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 そんな叫び声が聴こえて、体を動かして皇斗の方を向くのは『龍種最強』応龍であった。


 ***


 ───『龍種最強』応龍の、その二つ名に偽りはない。

 その性能は、生物の域を超えているために「龍種」という枠でしか括れない応龍だが、その応龍の中でも攻撃と防御を兼ね備えた完全無欠の存在だと言える。


 そして、そんな『龍種最強』という全ての生物の頂点に君臨している龍は、『人類最強』という二つ名を持つ皇斗を相手にしては天地が逆立ちをしても負けない───。


 応龍は、油断をしない。

 応龍は、慢心をしない。

 応龍は、容赦をしない。

 応龍は、期待をしない。

 応龍は、信用をしない。

 応龍は、同情をしない。

 応龍は、何も救わない。


 ───応龍は、誰にも負けない。


 応龍は最強だ。

 応龍は完全だ。

 応龍は無欠だ。

 応龍は絶対だ。

 応龍は無敵だ。

 応龍は完璧だ。

 応龍は必勝だ。


 ───応龍は、誰にだって勝つのだ。


 どんな神話でも、どんな御伽噺でも、どんな創作物でも応龍は絶対に勝てない化け物だと表現されている。

 だから、どんな輩でも応龍に勝つことは不可能だ。

 たとえ、それが人類史に1人の逸材であるとしても、「人類」じゃ相手にならない。だから───


「───だから、敗北する?くだらん妄想だ。〈転送〉」

 血が間断なく流れ続けて虹が見えそうな皇斗の深紅に染まった傷口だったが、ポーションを飲んだことによって鮮やかな桃色の肉がモリモリと復活し止血される。


 回復に時間をかけている皇斗を応龍は見過ごさないため、応龍は何にも恐怖することなく突進するのだが、皇斗は小賢しくも〈転送〉を使用してその攻撃を回避する。


 本来であれば、簡単に都市へと戻るために使用される〈転送〉で、ゲームの中では戦闘に使われるものではなかっただろう。

 だけど、皇斗はプログラマーの考えなどを気にしない。


 彼は、パットゥに到着したその日にセットして置いた城内都市のエントランスを一望できる崖の上に〈転送〉のポイントを変更しておいたのだ。

 であるからこそ、彼は応龍の突進を回避しつつ応龍の狙える場所に移動する。


「少しは休まるだろうか...」

 そう口にして、皇斗は傷口を埋めた新しい肉に右腕で触れる。触角は存在したが、ブヨブヨと触っていて不快感がある。やはり、左腕があるのとないのとでは話が変わってくる。


「それに、〈破魔矢〉が放てないのは難点だ...」

 もし手元に魔法杖があればSランクの回復魔法でなんとか回復できたのだろうが、悲しいことに魔法杖は応龍によって吹き飛ばされてしまった。応龍の相手をしながら探すのは流石に難しいだろう。


 と、皇斗が息を整えて左腕と魔法杖が無い状況で応龍に勝利する作戦を頭の中で立てている中で、応龍は崖上に移動した皇斗のことに気が付く。


「〈絶断〉がキーにはなるだろうが、〈破魔矢〉を当てたところに剣を当てられるだろうか...」

 左腕の欠損は、皇斗にとっても初めての経験だ。腕がない状態で通常通りに動けるとは思えないし、どれだけの攻撃が応龍に通用するかもわからない。


「だが、やるしかないか」

 皇斗がそう口にして覚悟を決めると同時、その巨大な翼を動かして応龍は空へと舞い上がる。

 応龍の本領は空中だ。ただでさえ空中で身動きがとりずらい皇斗にとっては分が悪い戦場だけど、今更先程の戦場に戻れるとは思っていない。


「ブレスで雪がほとんど溶けているから、落下しても助かりそうにないな...」

 先程まで戦っていた地面を見ると、元の栄養の無さそうな灰色か、ブレスで焦げて黒くなっているかの2択だった。最初にこの崖から飛び降りたときは雪がクッションになってくれたのでダメージが無かったが、今回は落下ダメージが入るのは確実だ。


 気を抜いたら死亡するし、次こそ応龍の攻撃やその体に当たっても死ぬ。

 選択肢は、ノーダメージか志望の2つだ。


「体力1で、相手の得意な空中戦か...面白い」

『人類最強』森宮皇斗は、不敵な笑みを浮かべる。


「グルラァァァァァァ!!!」

 迫り来る応龍が、皇斗のいる場所に特攻して崖崩れを起こすと同時、皇斗はCランク魔法の〈泥土〉を駆使して空中に逃げ、戦闘の激流に身を任せるのであった。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
応龍、ガチで強い! 皇斗でもここまで苦戦するのか。 しかし何処かに穴、というか癖がある筈。 あるいはここは仲間と共闘すべきか。 流石の皇斗も一人じゃ厳しそう……。
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