4月1日 その④
「───デスゲーム?」
教室内に、一瞬の動揺が走る。だが、状況を各々が理解し一瞬で静まる。
ここにいるのは、皆馬鹿ではないのだ。頭の冴えた人物ばかりだ。いかなる状況にも即刻対処できるような人物しか集まっていたなかったのだ。
「はい、そうです。デスゲームです。皆さんは、一年間。この学校を舞台に、自らの命を賭けた殺し合いをしていただきます」
「それは...殴り合いか?」
皆に、席を教えてくれた金髪の少女が、マスコット先生を名乗る人物に問う。
「ノンノンノン。まぁ、殴り合ってもいいですが、皆さんここはピッチリ詰まってるんでしょう?」
マスコット先生は、「ここは」と同じスピードで、自分の頭を人差し指で3回つつく。
「心理戦ですよ。騙し合い。騙し合って、殺し合ってください」
「───自滅を狙うってことですか!」
背の大きな少年が問う。
「まぁ、そうですね。デスゲームのルールをこれから説明しよう!」
───と、マスコット先生が説明を始めようとしたその時だった。
”ガラガラガラ”
「遅れた」
「───ッ!」
中に入ったのは、一人の少女。スラッとした大きな背に、豊満な胸。美貌を持つ、その少女───いや、いくら同年代であろうとも、彼女を「少女」などというあどけなさを残る言葉で表現するのは不適切だろう。その女性に全員の目が釘付けになった。
「森愛香さんですね。遅刻はいけませんよ」
「何?巫山戯た被り物をした輩。妾に口出しするのか?それは、傲慢というのではないか?」
「え、あ」
白板に一番近い、最前列の机───そこには、出席番号13番の少年が座っていた。
その机に腰掛けてしまう。
「で、貴様は誰だ?巫山戯た被り物をした輩。ムカつく被り物、取っ払ってやるぞ」
「森愛香さん、そこはあなたの席ではありませんよ」
「なら、妾を席まで案内しろ、愚物が。2階まで行けと言われて来たのだから、そのくらいの案内は至極真っ当だろう?」
「空いている席の、後ろです」
「そうか、ならばそこに座ってやる」
”タッ”
彼女が、13番の少年の机の上に立ったと思ったら、31番───彼女の机の前まで優雅にジャンプをした。
”タッ”
「ここだな?」
「えぇ、そうです。それと、遅刻はしないように」
「おっと、アホ顔。知らないのか?主人公というものは、遅れてやってくるものだぞ?」
「そうですか...」
「故に、遅れた妾が主人公という意味だ───」
”ガラガラガラ”
「ごめんなさぁい!遅れましたぁ!」
2人目の遅刻犯。そこにいたのは、一人の美少女だった。スラッとした手足に、少し凛々しい目。だけど、全体的には少しフワッとした印象を持つ彼女。
一目だ。一目見て、心がときめいた。
「村田智恵さんですね?遅刻、ダメですよ」
「ふぁい、すいません!」
「噛んだ...」
「噛んだな...」
可愛い。などと、心の中で思ってしまう。尊敬とも、憧れとも違う感情。言葉では到底言い表せないようなこの激情。
「残り1つ、空いている席があなたの席です」
「はーい、わかりました!」
村田智恵さんは、30番の席に座った。
「貴様、何故妾より遅れてくる?」
「寝坊しちゃって...」
「愚物が。寝坊なんぞで妾の第一印象を悪くしよって。殺すぞ?」
「え、えぇ?ごめんなさい!」
森愛香さんと、村田智恵さんのそんな会話が繰り広げられる。
「全員、揃ったところで皆さん静粛にー!」
そう言って、マスコット先生は手を叩く。
「今から、皆さんにデスゲームのルールを説明していきますよ!」
「デスゲーム?」
「えぇ?死んじゃうの?折角帝国大学に行けると思ったのに!」
村田智恵さんは、そんな声をあげる。俺だって、そう叫びたいさ。
正直、よくわかっていないというのが現状だ。漫画やアニメで、デスゲームという言葉は知っていたが、もちろんデスゲームに挑んだ経験はないのであまり理解がない。それは、皆もそうだろう。
だから、今から説明されるルールを聞いて理解せなばならない。生き残るためにも。
「では、ルールの説明行きますよー!」
こうして、マスコット先生はルール説明を開始した。
「まず、デスゲームのクリア条件はぁ、今から卒業するまで───要するに卒業式が行われる3月31日まで生きていることです」
要するに、死ななければいいということだ。これは理解できる。
「そして、皆さんには『禁止行為』が個々に決められています。それを破ったら死んでしまいます!日常生活の中で死ぬ原因は、これ一つです!いいですか?」
「なんだよそれ...ダンガン○ンパみたいだ───」
金髪の少女が、そう言いかけた時だった。少女の口から吐き出されたのは、赤い液体だった。
金髪の少女は、窓際から2列目の最前列。俺は、廊下側の一列目の前から4番目だったのだが、よく見えた。
金髪の少女の口から、突如噴出した赤い液体が。
人間の体内から、出てきた赤い液体は一択しかない。血。血だ。彼女は、突如口から血を吐き出したのだ。
「ぁ...」
「早速、『禁止行為』を犯したみたいですね...例えば『ダから始まりパで終わる7文字の言葉を言ってはいけない』のような」
「ゎ...」
何かを言おうとした、金髪の少女。再度、口から血を吐いて倒れてしまった。
「このように、禁止行為が各々に備わっています。一人一人、違いますね。あ、『悲鳴をあげてはならない』みたいな禁止行為もあるかもしれませんよ?」
人の死というのを、見てしまいデスゲームの怖さを知った。心臓の鼓動が早くなる。
叫びたかった。でも、叫んだら死んでしまうかもしれないという恐怖があった。
死。死。死。
死と隣合わせでこれから1年間生活するのが、容易に理解できた。
「『逃げたら死亡』なんてのも、あるかもしれませんね」
逃げれない。叫べないし、逃げれない。誰も。誰も。誰も。
”ガラガラガラ”
「死体回収班の方が来ましたね。お願いします」
防護服に身を包んだ、人物が数人入ってきた。そして、金髪の少女を担いで運んでいった。
「皆さん、わかりましたか?禁止行為を犯さないで生活してください。禁止行為は、教えません。死と手を繋いだ生活をお楽しんで」
目の前にいる、マスコット先生が悪魔に見えてしまった。いや、悪魔なんだろう。実際に。
やっと、デスゲームらしくなりました。
ルール説明で、これほど騒がないデスゲームはないのでは?
死の原因がわからないので、迂闊な行動もできませんね。
次回、3月2日の12時。