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王国戦争開幕 その③

 

「グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」


 俺達の捕らえられた檻の遥か下から、そんな凶暴な叫び声が聞こえて鉄格子が揺れる。

 俺は思わずビクリと動かしてしまい、プラム姫は辺りをキョロキョロと見回していた。


 ───この牢屋に繋がれて、既に3週間以上が経過していた。


 これだけ長い間檻の中にいると日にちだなんて概念は関係なくなってきており、生活習慣も乱れに乱れていた───と言うわけではない。

 捕らえられているのがプラム姫と、ドラコル王国のお姫様と言うこともあり、俺達は『古龍の王』に十分な食事を与えられて健康だし、俺は俺を助けに来てくれる皆のことを映像で見られたから文句はない。


 昨日、智恵の夫を名乗る『閃光』アレン・ノブレス・ヴィンセントが俺に面会してきて、色々と文句を言った挙句、俺を射殺しようとしたけれど、『古龍の王』がそれを制止したのを覚えているが、特に詳しく語るほどでもない。


 だけど、どうやらここには『古龍の王』や龍種だけでなく、生徒会メンバーの茉裕や、麒麟を一緒に討伐した『親の七陰り(ワーストヒストリー)』の面々がいることは間違いなさそうだった。

 茉裕が俺を殺さないのは、俺を殺してしまうと現実世界に戻る方法が無くなってしまうからだろう。


 勇者一行の中から数人を殺して姿を消してしまえば、勇者一行が勝って『古龍の王』に勝てば俺は救出されるし、勇者一行が全滅したら自分1人で助ければいいことになる。

 勇者一行に加わっている生徒会メンバーにはできない特権と言っていいだろう。


 ───と、そんなことを考えながら皆のことをゲームの動画を見るように眺めている俺だったが、そこにやってきたのは『古龍の王』こと百鬼夜行であった。


「───何の用だ?」

「王

 国

 戦

 争

 の

 開

 幕

 だ」


『古龍の王』ヤコウはそうとだけ口にして、鉄格子を挟んだ反対側から消える。

 先程の叫び声の要因が、パットゥの最下層───いや、正確には地上1階で叫んだ応龍の元だと言うことを、見ている動画で分かっていたし、その報告は不要だった。


 だけど、わざわざ『古龍の王』は律儀に俺達にそう説明しに来てくれたらしい。


「プラム姫、勇者一行は俺達のことをもうすぐ助けに来てくれます」

「───」

「プラム姫?」

 俺が声をかけても、神妙な表情をするだけで返事をしないプラム姫を見て、俺は少し不安になる。


「え、あ、すみません。考え事してて。さっきの声を聴いて少し...」

 プラム姫は俺のことに気が付くと、そう言葉を濁した。だが、下では龍種である応龍が戦っているのだ。

 下で戦っている皆が不安になるのも仕方ないだろう。


「大丈夫ですよ、応龍を相手にしてるのは俺の仲間の中でも一番強い男ですから」

「そうですか...」

 皇斗は、俺達第5回生徒会メンバーの中で紛れもなく最強だ。どんな人物が相手でも、皇斗は負けることはない。


 俺は、確信をもって皇斗と応龍の戦闘をリアルタイムで見届け───


「───って、あれ?」

 見えない。


 先程までは、見ようと思えば俺の目の前にホログラムのようにして映像が投映されたのに、今は何も映らなくなっている。もしかしたら、さっき百鬼夜行が俺から見れる権利を奪ったのかもしれない。


「見れないとなると、途端不安になってくるな...」

 別に、こちらから見えたところで声掛けも手助けもできないのだけれど、それでも見えることでそれなりの安心感はあった。

 今は、祈ることしかできないのだ。プラム姫と共に、皆が助けに来てくれることを祈るしかないのだ。


 頼む、皆。誰も死なずに勝ってくれ───。


 ***


「───今のって」

「パットゥの正門のところに配置した応龍の声だね。勇者一行がやって来たんだ」


 他方、城内都市パットゥの上層では、応龍の声を聴いて勇者一行が来たことを察するメンバー達。


「それじゃ、僕たちも早く移動しよう。勇者一行が来てしまう」

 そう口にするのは、『死に損ないの6人』にも数えられており『閃光』の師匠でもある、ドラコル王国一の弓使い、『神速』カエサル・カントールであった。


 一度は勇者一行と共に過ごしたけれども、元から決まっていた王国戦争の惨禍の為に、今回は勇者一行の敵として立ちはだかる。彼の実力は折り紙付きだ。


「さぁ。今から行われるのは革命だ。ドラコル王国をひっくり返そうではないか」

『神速』がそう口にする。


『古龍の王』と『神速』、そして『羅刹女』の3人が計画したドラコル王国を支配し、世界を奪い取るための戦争───王国戦争は、計画されてから『古龍の王』がヤコウに変わり、『魔帝』と『総主教』の2人が急遽加わり、勇者一行と『剣聖』が敵として立ち塞がるなどと、変更点は多かったが、全て滞りなく進んでいた。


『剣聖』の介入は最初から予見されていたし、勇者一行だって分裂させてしまえば敵ではない。

 最初は、『魔帝』や『総主教』も敵であったけれど、今は『神速』達の方に鞍替えしている。

 このまま勇者一行の討伐に成功すれば、次は隣国であるニーブル帝国を略奪し、地下にあるパドゥ地下公国を征服し、海の果てにあるペラーシュ共和国を侵略し、最後に天空にあるウチョウ連邦を襲撃する。


 その作戦は全てに寸分の狂いはなく、成功する可能性は大きかった。

 それを実行するためにもまずは、勇者一行を潰す。そのために用意した戦力は、以下の通りだ。


『古龍の王』鼬ヶ丘百鬼夜行

『神速』カエサル・カントール

『羅刹女』???

『魔帝』園田茉裕

『総主教』ウェヌス・クラバス・ホーキンス

『砂漠の亡霊』三苗

『龍冠』応龍

『狂気の主』共工

『天衣無縫』鳳凰

『閃光』アレン・ノブレス・ヴィンセント

『失敗作』パーノルド・ステューシー

『暴若武人』タビオス・グレゴランス

『高潔欲』エレーヌ・ダニエラ・レオミュール

『鋼鉄の魔女』アイアン・メイデン



「さて、楽しい戦争になりそうだ」

 勇者一行へ迎え撃つ配置に移動した『神速』は1人ほくそ笑む。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
久しぶりの栄視点がなんか新鮮です。 敵のラインナップも凄いですね。 こりゃ激戦確実だな。 まあ最終決戦だし、それも当然ですね!
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