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魔獣の森 その②

 

 魔獣の森に突入して早くも1時間が経過する。

 鬱蒼とした木々に覆われ、光が届かない暗い木の幹と幹の間の道なき道を、湿った地面と冷たい空気を肌で感じながら通る。


 ───全速力で。


「来てる来てる来てる来てるぅぅぅ!」

「〈世界割り〉ッ!」

「〈縦横無尽〉」

「〈雷炎の楔(タイガー・ウェッジ)〉!!」


 勇者一行21名は、息を切らしながらも根性でその足を動かし続ける。

 脇腹の痛みだって忘れるほどに死に直面している勇者一行は、その足を動かし続けながら迫り来る魔獣を蹴散らし、道を進む。


 魔獣の森は、弱肉強食の世界だ。

 ただ、魔獣の森に存在するのは全てが全て「強食」に値するような生物がいるだけ。1体1体が、討伐できただけで栄誉とされている魔獣が、次から次へとエンカウントしてくるのだ。


 だから勇者一行は、ダッシュでこの森を駆け抜けて魔獣から逃げ惑う。

 足を止めてはならない理由は、もう1つあった。


「───ッ!モグラが、来るぞぉぉ!」

 何かを察した誠が、珍しくそう声を荒げて仲間に危険を知らせる。その言葉の直後───、


「グルアァァァァ」

 そんな言葉にならない───元から、人間の話す言語でない声があげられて、地面に亀裂を作り、出てきたのは巨大な、鼻の潰れたネズミ───ランドラウンドドラゴンモドキ───通称:モグラであった。


 地面を割り、勇者一行を食おうとその身を地上へ顕現させた巨大な生物は、勇者一行の隊列をいとも簡単に分断させる。


「歌穂!」

「わかってるわよ、〈意志揺るがぬ魂の鼓動(アトミックハート)〉!!」


 地面を割ったモグラに対抗する歌穂は、空気を割る。

 放たれた斧による攻撃は、モグラの顔面を真っ二つに割り、そのまま周囲の木々を風圧で薙ぎ倒す。


「───うおりゃああ!」

「今だ、進めめぇぇ!」

 鬱陶しいモグラの討伐に成功した歌穂であったが、1体倒したところで敵の数はほとんど減らない。


「フォレストスコーピオンがすぐそこまで来てる!」

「2時の方向に敵映画3つ!新手の敵!」

「隊列を組みなおしつつ、すぐに進むぞぉ!」


 高ランクの冒険者であっても、死ぬ可能性が十分にある魔獣の森を突っ切る勇者一行は、そのまま死に物狂いで走り続けた。


 上空には怪鳥が、地中には怪獣が、地上には怪物が跋扈する魔獣の森の出口は、まだまだ先である。


 ***


「はぁ...はぁ...生き延びた...」

「水...誰か、水...」


 魔獣の森に突入してから、一体どれだけの時間が経っただろうか。

 数秒ごとに新しい魔獣がやってきて、倒しても倒しても敵が減らずちょっとでも足を止めたら魔獣に丸呑みにされてしまうような地獄を、爆速で走り切った勇者一行は、極寒の地パットゥの近くまで来ていた。

 ここは降雪地帯であるため、魔獣の森にいる魔獣は足を踏み入れない。魔獣の森を抜けた勇者一行には、一先ず安寧が訪れたのだった。


 不眠不休で走り続けて十数時間。勇者一行は雪の上に倒れこみ、動かし続けて熱を帯び今にもショートしそうな体を冷やす。


「息を整えていろ。周囲の監視は余がしておく」

「どうして皇斗は汗一つかいていないんだよ、人間か?お前...」

「───バレてしまったか」

「は!?お前、まさか」

「───冗談だ。余だって汗の1粒くらいかく」

「んだよ、普段言わねぇ冗談を今言うな...」


 疲労困憊の勇者一行であったが、どうやら皇斗と『剣聖』はまだまだ動けるようだった。

 2人共、最前線と最後尾を駆け抜けて、敵と戦いながら駆け抜けていたはずなのに、健吾や智恵・康太達のように死にかけている様子はない。


「兎にも角にも、お疲れ様。よく30時間ぶっ通しで付いてこれたね」

「30時間、ぶっ通し...」

 汗をぬぐいながら、『剣聖』は雪の上に倒れる勇者一行に対してそう声をかける。

 気が付けば、勇者一行は30時間も魔獣の森の中を駆け抜けていたのだ。その森の中での戦闘を1つ1つ振り返るとなると、同じく30時間を、文字数にして約150万文字を浪費することになるだろうから、語るのは伏せておく。


 だが、多くの人物がその魔獣の森の中でレベルを上げて、50を超える人も増えていた。

 勇者一行の中で、一番レベルが高いのは、レベル60の皇斗。次いで、レベル55の康太と愛香であった。


「───と、動けるようになったらこっちに来てくれ。パットゥへ乗り込むのは予定通りの明日にするとして、体を休められそうな岩窟を見つけた」

「後3日は動くのにかかりそうでーす...」

「凍死しちゃう...」

「仕方ない。余と『剣聖』の2人で運ぶことにしよう」


 そう口にして、勇者一行は皇斗と『剣聖』によって岩窟へと運ばれる。

 自力で歩けるほどまで回復したり、背負われることを拒んだ愛香などは自力で岩窟へ移動した。


 魔獣の森で死闘を繰り広げた勇者一行は凶暴な魔獣との前哨戦を終えて、パットゥも目と鼻の先である。


 ───栄救出へ向けての王国戦争は、明日に迫っていた。

魔獣の森・戦績


レベル

秋元梨花 レベル51

阿部健吾 レベル53

宇佐見蒼 レベル53

奥田美緒 レベル50

菊池梨央 レベル48

斉藤紬 レベル47

佐倉美沙 レベル49

竹原美玲 レベル53

橘川陽斗 レベル49

東堂真胡 レベル48

中村康太 レベル55

成瀬蓮也 レベル53

西村誠  レベル51

西森純介 レベル50

細田歌穂 レベル52

村田智恵 レベル52

森愛香  レベル55

森宮皇斗 レベル60

山田稜  レベル49

結城奏汰 レベル51

『剣聖』 レベル99


討伐数

1.森宮皇斗 1036体

2.『剣聖』 811体

3.中村康太 399体

4.細田歌穂 311体

5.森愛香  307体

累計討伐数 6112体

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
モンスターパニック状態ですな。 でも何気にレベルは上がってる。 ラストバトルに向けての調整にもなってそうですね。
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