4月7日 その⑤
第2ゲーム『スクールダウト』予選のルール
1.学校中に散らばった生徒個人の情報が書いてある長方形の紙を探す。
2.その紙に書いてある情報と同じ人に紙を貼れば、貼った人は貼られた人から2ポイントを奪取することができる。
3.その紙に書いてある情報と違う人に紙を貼れば、貼った人は貼られた人へ4ポイント譲渡しなければならない。
4.ゲーム開始時の保有ポイントは一律10ポイントとする。
5.保有するポイントが0になったら、その時点で敗退が決定。
6.ゲーム参加者が6人になった。もしくは、4月8日23時59分59秒が過ぎたらゲーム終了。ゲームの期限が過ぎた時、保有ポイントが多かった人から本戦に勝ち上がる。
7.個人の情報が書いてある紙は、誰にも当てはまらない場合もある。また、生徒1人につき20枚ずつ個人の情報が書かれている紙は用意されている。
8.屁理屈は理屈に入らない。
俺は、もう126ポイントもあるので学校を徘徊する必要もない。
それに、誰に紙を貼られてももう安全圏にいるのだ。俺の個人情報が書かれた紙は、合計で20枚しかない。
それは、スクールダウトのルール7に記載されている。
7.個人の情報が書いてある紙は、誰にも当てはまらない場合もある。また、生徒1人につき20枚ずつ個人の情報が書かれている紙は用意されている。
20枚全て俺に貼られても、奪われるポイントは40。126ポイントある俺から引き算しても86ポイントは余る。
だから、問題はないのだ。
それに、予選に残っている人物もどんどん減っているからポイントが手に入る確率も減ってきている。
現在、6位までに入り込んでいるのは、多い順に俺と、森宮皇斗・森愛香・津田信夫・宇佐見蒼、そして村田智恵と東堂真胡がタイだ。
他の5人は、行動しなければポイントが手に入らないし本戦に上がることもできない。
「ならば、裏目に出る可能性があっても行動しなければならない...か」
もっとも、126ポイントも有る俺は、俺から行動しなければ確実に本戦に勝ち上がれるので行動はしない。
まぁ、動く必要もないし、本戦に行きたいとは思っているからね。
「───問題は、智恵か」
俺は、智恵の事が心配だった。誤解を早く解かなければならなかった。
俺は、下駄箱で靴を履き替えて、智恵のいる寮に向かう。すると───
「おや、池本栄君ではないですか?」
「───ッ!」
そこにいたのは、マスコット先生───と同じ被り物をした同じ背丈の人間。だが、声が違うからマスコット先生ではないことがわかる。姿が同じでも、中身が違うのだ。
「───誰だ、お前は!」
「私ですか?私は補助教師です!ほら、そんなことはどうでもいいでしょう?温水プールに行くのですか?」
補助教師───マスコット先生と同じ被り物をした人物はそう答えた。
「いえ、智恵さんの───チームFの寮に」
「駄目です。放課後になるまで寮には行かせません」
「───どうして」
「まだ授業中ですよ?学校の外に出ていい訳ないじゃないですか?」
「───それは、そうだけど...俺は...」
「そちらの都合なんて関係ありません。校門から出て向かっていいのは温水プールだけです」
「───ッ!」
その、感情も何も感じないような言葉に驚いていしまう。
「あなたに、情は無いんですか!」
俺は問う。
「情なんてあるんですか?」
「───ッ!」
疑問に疑問で返される。だが、それがただの疑問ではないことはわかっていた。これは、反語だった。
この補助教師が言いたいことは要するにこうだ。
「情なんてあるんですか?いや、無い」
先生の中に、情などないのだ。それに、ただ「情が無い」と言うより、反語を使うことで「まだ、情も捨てきれていないのですか?」という嘲笑を向けることもできる。
煽りの基本的テクニック。わかっていても、苛立ちが浮かび上がる。
「わかりました、もういいです」
俺は、諦めて学校の中に戻っていく。
───やることがない。さて、どこに行こうか。
別に、教室に行ってもいい。だが、教室に行ったところでやることがない。図書室に籠もって読書するのもよかったが、きっと今の俺は活字なんて頭の中に入ってこないような気がした。
「しょうがない、学校中を散策している人を探すか...」
俺は、そんな事を言いながら、靴を履き替えてB棟の方に移動する。
「おぉ!そこにいるのは栄やないか!」
そう、声をかけてくれたのは津田信夫。
「栄はポイントぎょうさんあるんに、まだ紙を探すんか?がめついなぁ」
俺はそんな事を言われる。補助教師に煽られた苛立ちがまだ心のなかに残っていた。
「えぇ、栄。無視か?それは、ちょっと酷おないか?」
津田信夫はそんな事を言って、俺の後ろを付いてくる。俺は、無視して階段を登る。
「ちぇ、つまらんやっちゃのう。誰もアンタの相手なんてせぇへんわ。ほな、元気でな」
そう言って、津田信夫はどこかに行った。
「はぁ、安寧も手に入らないのか?」
俺はそんな事を言って、B棟の4階───生徒会室にまで向かった。特に、何かがあるわけでもなかった。
こにいたのは、紬だった。
「あ、栄」
「よぉ、どうしてここに?」
「うーん、特に理由は無いかなぁ...あ!紙を探してはいるよ!」
紬はそう言って、笑いかける。この笑顔を見れば、純介が紬にタジタジしてしまうのもわかるかもしれない。
もっとも、俺が一番大切にしようと思っているのは智恵だが。
「紙はあったの?」
紬は静かに首を振る。
「そうか、じゃあちょっと学校中を周らないか?」
「うん、いいよ!」
俺は紬を連れて、学校を周る。別に、ポイントを取られたって困らないし、取る気もない。
「───紙を探すの、手伝おうか?」
「あ、ありがとう!」
俺は、そんな事を言って、A棟の4階に移動しようとする。すると───
”ダッダッダッダッダッダッ”
前から走ってくるのは、小寺真由美だった。その後ろにいるのは、森愛香であった。
「ははは!お前の短足で逃げども無駄だぞ!」
俺達は道を開けようと端による。と───
「───かは」
突如、小寺真由美は白目を剥き、吐血してその場に倒れる。阿鼻叫喚。
「───おい、大丈夫か?」
倒れた小寺真由美を起こそうと体を揺らす。だが、反応はない。俺は、まさかと思い首筋に触れる。
「───嘘...だろ?」
───小寺真由美は死んでいた。





