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空を揺蕩う金魚の襲来 その④

 

 空を揺蕩う巨大金魚──鯀から放たれる、追尾型魚雷。

 その「魚雷」と言う名に相応しく、その追尾型魚雷は小魚と同じ形をして、まるで意思を持っているかのように勇者一行や『剣聖』のそれぞれに迫っていく。


「──全員、敵認定ってことか!」

 康太はそんなことを口にしながら、剣を振るって追尾型魚雷を真っ二つにする。


「対処しずらいわけじゃないけど、結構面倒くさいわね」

 歌穂はそう口にしながら、斧を振るって追尾型魚雷を薙ぎ倒す。

 20人が一斉に相手をしているから、追尾型魚雷が1人に定まっておらず対処できているが、一斉に20匹を超える追尾型魚雷と戦うのは厳しいだろう。


「それこそ、一匹近付くだけでゲームオーバーだものね」

 武器がメリケンサックの美玲は、追尾型魚雷を一刀両断する術がないので、誰もいない方へ蹴とばして爆発させている。

 美玲に蹴られた衝撃で吹き飛び、空中で黒と赤の2色の爆炎を宙に生み出しているのを見ると、近距離で爆発されたら四肢の1本は失ってしまうだろう。


「1本当たればガードできなくなって爆発の餌食となるわけか」

「そういうこと。無限に生み出される追尾型魚雷を1人で相手し続けるのは厳しいから君達に協力を呼び掛けたんだ」


 そう口にする『剣聖』は、他より多く襲い掛かってくる追尾型魚雷を斬り伏せている。

 きっと、彼は鯀を1人で倒せる可能性を秘めているだろう。


 ───と、その時鯀が生み落とすのは追尾する機能を持っていない魚雷。


 そのまま、重力に従って落下し海に落ち、鼓膜が破れるような轟音と視界を覆いつくす水飛沫を創り出す。


「───これ!これが鬱陶しいのよ!」

 美玲がそう口にしたその時。


「───気を付けろ、追尾型魚雷が迫ってきている!」

「───ッ!」

 地上から愛香の言葉が届き、スカイブーツを履いた全員が警戒する。

 だが、この水飛沫で視界も不明瞭の中で追尾型魚雷を見つけて対処することは至難の業だ。


「───水飛沫が邪魔なせいで余等も矢を放てない!そっちで対処してくれ!」

 水飛沫がある以上、矢は真っ直ぐ飛ばないだろうし真っ直ぐ飛んだとしてもその水飛沫の先に誰がいるのかわからない。だから、弓矢を放つのは危険だった。


「随分、やるじゃねぇか...」

 健吾はそう口にするが、こんなところで負けるような男ではない。


「───〈星屑(スターダスト)星屑(スターダスト)斬り(スラッシュ)〉!」

 健吾が放つのは、広範囲の敵を下がりながら攻撃する技。敵の場所が見えなくとも、これならある程度カバーすることはできるだろう。

 追尾型魚雷は、良くも悪くも非生物だ。どんな攻撃だろうと臆せず突っ込んでくるし、真っ二つにしてしまえば逆転は起きることがなくそのまま地上に落ちてうんともすんとも言わなくなる。


「よし、斬れた感覚!」

 健吾の手には、確実に何か───追尾型魚雷を斬った感覚を感じて覚え剣を振るうのを中断する。


 ───が、それはあまりにも握手であった。


 水飛沫が重力に従って海に吸い込まれるように戻っていくその時、地上に残ったのは歪な影。


「───ッ!まだいたのかよッ!」

 確かに、健吾は追尾型魚雷を1体斬っていた。

 ただ、問題は追尾型魚雷が2体迫ってきていたというだけで───。


「〈向日葵〉!」

 健吾に接近してくる追尾型魚雷に対して、超高速の1発を放つのは、健吾の恋人である美緒。

 追尾型魚雷は見事に射抜かれて、そのまま大海へと落下していく。


「美緒、助かった!ありがとう!」

 健吾が美緒に感謝を口にすると、美緒が小さくサムズアップする。その姿に可愛いな───と思う健吾であったが、今は惚気ている暇はない。


 空を泳ぐ怪物を地上に接近させると、追尾しない魚雷を地上に直接落とされてしまうことになってしまう。そうなれば、地上は火の海になるだろう。


「───それだけは避けないとな」

 健吾はそう口にする。見るに、鯀の皮膚は霊亀のように硬すぎることも、麒麟の首のように柔らかすぎることもなさそうなので、通常の斬撃でも通用するのだ。


 そうなると、お互いに攻撃を当てた方が勝ち───という状態になってくる。

「なら、『剣聖』に一発ドカンと当ててもらうのが最善策かな」


 健吾は、周囲に警戒しながら思考を巡らせてそんな結論に至る。

 きっと、レベル99の『剣聖』であれば、強力な技を放ってくれるだろう。


「僕が大技を放ってとっとと倒してしまえばいい───そういうことだね?」

「そういうことだ」

 健吾のつぶやきを聴いていた『剣聖』が返答をする。


「ワタシも正直、それが一番の勝ち方だと思うわ」

「じゃあ、俺達が『剣聖』の補助をするのが一番だね」

「いや、補助は必要ない」

「え?」

「補助は必要ないから、僕の後ろにいてくれ」


 そんな言葉を聞いて、スカイブーツを履いた7人は『剣聖』の後方へと移動する。


「この技は使う反動が大きくてね。放ったら僕は気を失うだろうからキャッチしてくれ」

 そう前置きをして、『剣聖』は『剣聖』の二つ名を受け継いだものしか振るえない技を行使する。



「───〈剣の(アイソールド・ガラ)(ニュート)〉」


 ───初代『剣聖』アイソールド・ガラニュートと同じ名を冠するその技は、目の前にある全てを巻き込んだ超強力な一撃だ。全てを吹き飛ばすと錯覚するほどの風圧が生まれ、思わず健吾達は腕で顔を隠してしまう。


 追尾型魚雷が集まり肉壁となっても一切泊まること無いその剣は、簡単に追尾型魚雷を、そして鯀の体を美しく一刀両断し──、



「──マズい!」


『剣聖』の失神を稜が支えると同時、康太がその双眸に捉えたのは、顔に覆いかぶさっていたビニール袋が外れて、暴走を開始する鯀の姿であった。


 ───『剣聖』の攻撃により大ダメージが入って尚、鯀は生きている。


 その巨大魚の生命力に感服すると同時、勇者一行には生命の危機が訪れたのであった。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
追尾型魚雷、ヤバすぎ。 今回は流石に大苦戦ですね。 龍種のバトルはそれぞれ独自性が あるのに、倒す要因がちゃんとあるので、 読んでいて飽きませんね♪
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