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再会・離別と邂逅と その⑤

 

「───と、そんなわけで俺達全員が合流できたわけだが。早速皆に伝えたいことがある。栄の居場所が判明した」

「本当!?」


 ドラコル王国の王都プージョンからの長旅を終えた智恵達10人と、先に商業都市アールに到着していた康太達10人は合流することに成功した。

 生徒会メンバーであることが判明している茉裕は、ゲーム開始後すぐに別行動になったし、彼女自信このゲームが終わるまで合流するつもりはない、もしくは奇襲を仕掛けてくることしかないだろう。


 そのため、この場には現在栄を救出しようとしている「勇者」と呼ばれるべき人間が実質的に全員集まっていることになる。

 茉裕が今どこで何をしているのか知らないが、少なくともこれまでの勇者一行の旅路に干渉して来ているわけではなかった。

 邪魔をしなかったのは、まだ栄の居場所が割れておらず、南西の探索など遠回りばかりしていたからかもしれない。栄の居場所がわかった今、どこで攻めてきてもおかしくないのだ。


 栄の居場所が判明したことを康太が話すと、智恵が身を乗り出して食いつく。

 現在、宿の部屋では康太が、先程合流したばかりの10人に対して現状を説明していた。


「あぁ、本当だ。商業都市アールには情報屋ってのがあって、お金を払えば情報を売ってくれる。そこで、俺達は栄の居場所を聴いた。だからその情報の真偽は間違いなく真だ」

 康太は、疑り深い皇斗や奏汰、揚げ足を取ろうと目を光らせている蒼に要らぬ指摘をされないように前置きをする。


「誰も疑わないよ。情報がない今より、嘘でもその場所に行って確認する価値はある。栄はどこにいるの?ねぇ、どこにいるの?」

 智恵はこれまで連れ攫われた恋人である栄のことを暗中模索してきた。だからこそ、何でもいいから情報がほしいのだ。


 きっと、今の智恵なら「黒髪の男性がいた」という情報だけでドラコル王国の西側にあるニーブル帝国や、海を南に渡った先にあるペラーシュ共和国・オンパドゥ湖の底の底にある大穴を入った先に存在するパデゥ地下公国や、1年に1度だけエットゥ大山脈の頂上にかかる虹の橋を通ってのみ行けるようになる天空国家・ウチョウ連邦にだって行けてしまうだろう。

 ちなみに、今登場した4つの国々は全て『RPG 〜剣と魔法と古龍の世界〜』のDLCだ。


「───そんなに焦らなくてもすぐに教えるよ」

 そう口にして、康太はプージョンで購入して、それ以降ずっと愛用している地図を広げる。


「栄がいるのは、ドラコル王国の最北。『極寒の地』パットゥとされているところさ」

「パットゥ...」

「『古龍の王』とプラム姫がいるところか!」

 智恵が、栄のいる場所を反芻する傍ら、稜は聞き覚えのあるその都市に、栄以外に誰がいるのかを当てる。


「そういうこと。栄も今、プラム姫と同様に『古龍の王』に捕まっているようなんだ」

「では、結局このゲームとしてのストーリーの終わりも、第8ゲームとしてのストーリーの終わりも終着点は一緒だった──というわけか」

 康太の発言に対して、皇斗はそんな意見を述べる。


『RPG 〜剣と魔法と古龍の世界〜』も、第8ゲームも『古龍の王』を討伐する──という目的は変わらない。

 だからこそ、康太達が南西を周ったのは半分無駄になったと言えるだろう。


「そうだね。でもまぁ、これまでの旅路が無駄だったとは思わない。龍種の数を減らせていたからね」

「それってつまり?」

「これから俺達はこの商業都市アールの北にあるエール橋を通り、ドラコル王国の北半分に入ろうとしてる。本来のストーリー通りに行くのであれば、エットゥ大山脈を通り、西の方へ移動してからオンパドゥ湖を迂回するって言うかなりの遠回りをして『極寒の地』パットゥに到着する。ゲームなら、ボスを倒すためにいるんだから残る5体───いや、俺達が三苗をスルーしたから4体はその後半戦で登場すると予想できる。でも、俺達はその4体をスルーしてショートカットしてパットゥの方へ行く。でも、マスコット大先生のことだし、倒してない龍種を敵として出してくると思うんだ。『古龍の王』は龍種の頂点に立つとも言われているし、パットゥに招集することもできると思ってる。だから、一体でも多く龍種を減らせておいてよかったってことだ」

「随分と長い説明だったな。皇斗、まとめると?」


「ショートカットして『極寒の地』パットゥに行く場合、残りの龍種が敵として立ちはだかってくる可能性が大きいから、数を減らしておいてよかった───という感じだな」

「サンキュー」

 康太の1分超の説明を、皇斗は一息で説明してしまう。


 ───と、その時。


 ”ピンポーン”


 宿に付随している呼び鈴が鳴る。

 現在、この部屋に集まっていない誰かがこの部屋にやってきたのだろうか。鍵は閉めていないから勝手に入ってきても構わないのに───などと思いながら、康太や智恵・健吾に皇斗・蒼の5人は部屋の玄関の方へ移動する。そして、その扉を開けると───


「───アナタは」


 そこにいたのは、長身の男性。

 クリーム色の髪を持ち、その下には燃え滾るように紅い双眸がある驚くほどに顔立ちの整ったその男性の正体は───


「───お初にお目にかかります、勇者様。僕の名前はマルクス・シュライデン。第34代『剣聖』でございます」

「『剣聖』...」


『剣聖』の二つ名を持つその男性の訪問に驚きが隠せない康太であったが、そんな彼を横目に『剣聖』は言葉を続ける。


「お願いがあります。私と一緒にこの都市を救ってください」


 レベル99の「最強」の訪問と、状況が掴めないお願いを前にして勇者達は返事ができない中で──


「───あったりまえだピョン!都市の1つや2つを救うのくらい、僕達に任せろピョン!」


 1人、自分勝手に承諾を出すのは勇者一行のトリックスター、『十戒破り』の宇佐見蒼であった。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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