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陸塊の棲む頂へ その③

 

 背中にもぬけの殻となった村を背負っていると言っても過言ではない、『蠢動する超大陸(プレートテクトニクス)』霊亀と相対するのは、万全を期しても尚その大きさに驚きが隠せない健吾達10人。


 人々から「まるで山だ」だとか「大きすぎて流石の勇者様でも勝てるとは思えない。でも、勝てるかもしれないのは勇者様だけ」だとか「倒せれば向こう10年の食糧になる」だとか、様々な意見を収集していた健吾達であり、その大きさは重々承知していたのだが、霊亀の大きさはその想像の斜め上を行く。


「───ここまでデカいとは...」

「これを過去に倒そうと思った人がいることが驚きね」


 数える単位が「東京ドーム」になりそうな巨体を目の前に、奏汰と美緒がそんなことを口にする。

 あまりにも大きすぎる体のせいで、霊亀が「これから戦う敵」だという実感が湧いていない。

 これから、霊亀を倒す───ということが理解できていない。だが、それを強制的に理解させてくれるのが皇斗の言葉であった。


「───それで。この巨体をどう倒す?このくらいでかいと、普通の生物と同じだとは思えない。これだけの巨体じゃ、心臓が10個あってもおかしくはない」

 皇斗は、巨大な亀を見ながらそう口にする。

 実際、海の怪物である驩兜(かんとう)には心臓が3つあった。

 現実のイカにも心臓が3つあるので当たり前なことではあるが、その巨体に血を流すためにはそれだけの心臓が必要だっただろう。


「見た感じはリクガメっぽいな。どうやって攻撃する?」

 健吾は、動かさずにジッとしている霊亀を前に攻撃をする方法を考える。だが、あまりに大きすぎて攻撃が通用するとは考えられなかった。


 これほど首を剣で斬るのは不可能に近い。かと言って、弓矢も魔法も通用するとは思えなかった。


「ねぇ。霊亀って私達の事気付いてるのかな?」

「確かに。起きてるかどうかもわからないね」

 智恵の発言に、梨央が同意を示す。

 不動の霊亀は、起きているかどうかの以前に、本当にそれが「生物なのか」という印象を受けてしまうほどだった。

 もしこれが、先人が作った超巨大な岩の彫刻と言われても納得できてしまう。


「───じゃあ、最初の一発であの硬そうな首を斬れちゃえば霊亀を動かさず勝利できるかもしれないことか?」

 智恵の意見を踏まえ、健吾がそんな解釈をする。


「この巨体が暴れ始めたら、攻撃するチャンスなんかないし一発を放ってもいいかもしれないピョン」

「そうだな。それに関しては余も賛成だ。どのくらい霊亀の体にダメージが入るかも確認したいし、行動を行ってもいいだろう」

「───じゃあ、最初はその首を斬るって感じでいいか?」

「「「了解」」」

 健吾の意見に蒼や皇斗も賛成の意を示したので、霊亀の首を斬る作戦を実行することになる。


「───って、この巨体を登るのか?」

「そうなるね」

 奏汰はそう口にしていると、無数のシワがある霊亀の足へと近付く。


「───うん、登れそうだ」

「この足を登るのか」

「もちろんだよ。第一回試験でもあったように、登るのは問題ないだろう?」

「まぁ、問題ないけどよ...」

「あ、ワタシ駄目かも」

「そうか。梨央は握力がほとんどないから登れない」

「ごめん...」

「仕方ない。では、稜と梨央。それと純介と紬の4人は下で待っていろ。他は上に登る。魔導士トリオのことは稜に任せたぞ」

「おう、任せろ」


 稜は皇斗の指示にサムズアップで返事をして、それを確認した6人は霊亀の足を登った。

 その深いシワは、クライミングすることができて、尚且つ触れられていることに霊亀は気付いていないようだった。


「モチーフが亀だから、鈍重なのかな」

「そうかもしれないな」

「もしかしたら、一歩も動かずに倒せちゃうかもよ?」

「そうだったら楽でいいんだがな...」


 そう口にして、15分ほどかけて甲羅の上まで辿り着いた6人。

 その甲羅は、ツルツルしているわけではなくザラザラとしており、少し苔生しているところもあった。


「───さて。問題はどうやって攻撃するかだな」

「できれば、こちらの最大のダメージを出したいピョン」

「なら、オレと智恵の剣と、蒼の斧で攻撃したところに弓矢をぶっ刺す感じでどうだ?」

「賛成ー!」

「あ、僕はどうしよう?」


 そう口にするのは、奏汰であった。メリケンサックと、持ち前の柔道技だけで戦う奏汰であったがこの巨体は流石に投げることはできないようだった。ゲームの世界だとしても、そこまで常識外れなことはできないのだろう。


「そうだなぁ...奏汰はじゃあ指示を飛ばしてくれ」

「わかった。任せて」

「それじゃ、全員位置につけ」

「言われて無くてもわかってるピョン」


 そう口にして、甲羅のギリギリに立つ蒼。このまま、重力に従って落下してその首を斬るつもりなのだろう。

 各々が位置についたのを確認し、奏汰は声を挙げる。


「攻撃開始!」

「「〈表裏一閃〉」」

「「「〈風刃〉」」」

「〈二度見(ドグラ・マグラ)する重力(・グラビティ)〉」


 智恵と健吾の2人は〈表裏一閃〉で、蒼は〈二度見(ドグラ・マグラ)する重力(・グラビティ)〉で、それぞれ重力に従って攻撃し、純介達3人は地面から〈風刃〉で風の刃をぶつける。が───


「───んなッ!」

「硬い!」

「無傷だピョン!?」


 傷一つ付いてない霊亀の首。それと同時───


 ”ドドドドドド”


 大きく低い音を立てて、その巨体は鳴動する。


 それは、死んでいるかと錯覚するほど不動を貫き続けていたその巨大な怪物が、目を覚まして生命として活動を再開することの証明であった。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
デカすぎる。 単位が東京ドームなのも凄い。 こんだけデカいと攻撃するのも楽じゃない。 後、起動したようだけど、 実はめっちゃ早かったりして! 兎に角、苦戦必至なのは間違いない。
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