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陸塊の棲む頂へ その②

 

「先手必勝!〈三日月(クレッセント)斬り(スラッシュ)〉!」


 健吾が真っ先にロックロックゴリラに挑みその剣を振るうけれども、その名の通り岩でできたように硬い───実際、体の表面が岩でできているロックロックゴリラの体に攻撃をいれることはできない。


「───硬ッ!なんだコイツ!」

「グルルルル...」


 決して広くはない山道で、巨体のロックロックゴリラを相手にする智恵達10名。

 麒麟を討伐する時よりも、着実に強くなっている勇者達一行に襲いかかるのは、まるで岩で固めたかのように屈強な筋肉の付いた腕を持つロックロックゴリラ。


「グラァ!」

 わかりやすく「ウホウホ」などと鳴かずに低い唸り声をあげて、ロックロックゴリラはその拳を攻撃してきた健吾の方に振り下ろす。


「───っと!〈打撃吸収〉!」

「サンキュー、稜!」

「お安い御用!」


 健吾の間に入り込み大盾を構えた稜は、ロックロックゴリラの攻撃を受け止める。

 叩かれると、その振動で微弱に大盾が揺れるも、その大盾が壊れそうな様子はない。


「健吾、行こう!」

「おう!」

 稜の大盾に夢中になっているロックロックゴリラの横に周り、智恵と健吾の2人は剣を構える。


「まずは、その巨大腕をぶった切る!」

「私も。その腕をいただいてあげるわ!」


「「〈表裏一閃〉」」


 智恵と健吾の2人が放つのは、麒麟を討伐した後に新しく覚えた技の1つ。

 切り方としては、正面の敵に対して剣を真上から真下へと振り下ろす、もっともシンプルな切り方なのだが、その威力は折り紙付きだ。


「───グラァ!?」

 ロックロックゴリラの両腕が、2人の攻撃でそれぞれ半分ずつ切れるものの、完全な切断とまではいかない。

 2人は、ロックロックゴリラから離れるようにして距離を取った。そして───


「余等の出番のようだな」

「えぇ、そうね」

 智恵達の誇る、2人の弓矢部隊。


 この10人の中で、もっとも冷静な男女2人が───要するに、皇斗と美緒の2人がその弓を放つ。


「〈向日葵〉」

「〈蒼菖蒲(ブルーアイリス)〉」

「───ッ!」


 皇斗と美緒の放つ矢は、それぞれ両腕の傷口に正確無比に突き刺さる。

 ロックロックゴリラは、痛がるようなモーションを見せるけれどもその矢は暴れるほどに深く突き刺さり、抜くことはできない。と、そこに───


「───どんなに大きな体でも、これはゲームだ。現実じゃありえない投げ技だって、ゲーム(ここ)では起こせる」

 奏汰は、ロックロックゴリラに単身で接近して、暴れるロックロックゴリラの腕を掴み、そのまま空中へと飛び出して、ロックロックゴリラを天高い場所から地面へと叩きつける。


「〈世界割り〉」


 ロックロックゴリラが地面に叩きつけられると同時、大きく地面が揺れる。

 そして、ロックロックゴリラが体をピクピクと震わせてから消滅エフェクトを出して死んでいく。


「───勝利」

 そう口にして、奏汰は皆の方を見る。

 通常の魔獣は、龍種と違いトドメをさした人にのみ経験値が入るので奏汰が経験値をもらう。


「───と。ロックロックゴリラを倒したことでレベル34に上がった」

 奏汰は右手で自分の後頭部に触れながらレベルアップの報告をする。


「お、良かったじゃん」

「結構経験値がもらえるキャラみたいだよ」

「それじゃ、見つけたらどんどん倒していく?」

「それもいいかもな」


「つむ達、出る幕無かったね」

「うん、そうだね。ワタシ達が参戦する隙も無く終わっちゃった」

「まぁ、僕達はできる限りMPを残しておいた方が良いし、無駄な戦闘は皆に任せちゃったほうがいいんじゃない?」

「そうだピョン!ちゃんとそれなりにポーションは用意してあるけど万が一に備えて魔法は使わないほうがいいピョン」


 ロックロックゴリラとの戦いを、傍観しているだけだった魔法使いの3人───喋った順番に紬・梨央・純介の3人と、斧使いのロマンチスト───蒼は、そんなことを話す。


「4人共!先に登ろう?」

「うん!智恵ちゃんも一緒に行こ!」

「もちろん」

 戦闘を終えた智恵に呼び止められて、紬達も山道を登っていく。


 ───それからロックロックゴリラともう1度戦闘を挟み、智恵のトドメの一撃で同じくレベルが34まで上がった後に、勇者一行は目的の場所に辿り着いた。


「───見つけた」

 先頭を歩く稜がそう口にして足を止める。そして、そのまま10人は岩の陰に身を隠す。そこにいたのは───


「デカ過ぎんだろ…」

 どんなテニスプレイヤーよりも巨大な体を持つ霊亀と対面した健吾は、そんな感想を口走る。



 ───霊亀を例えるとするのであれば、山そのものであった。


 木の幹よりも太く長い4本の足を持ち、一個の村ができそうな程巨大な甲羅を背負った、顔にラグビーのヘッドギアで顔が隠れている亀。


 霊亀の持つ巨体は、実に鼻の先から尻尾の終わりまでで300m以上続いており、地面から背中に背負った甲羅までは100mはくだらない。

 その笑ってしまうほどに大きな巨体が、今回の勇者一行の敵であった。


「───これが、今回の敵だ」

「今回の敵って...倒せる未来が見えないんだけど」

「やるしかない」


 ───こうして始まる、ドラコル王国最大の生物霊亀(れいき)との戦い。


 その圧倒的質量を前にして、勇者一行は勝利を収めることはできるのか。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
成る程。 ゲームだから出来る技で攻めるのか。 奏汰は賢いですね。 そしてラグビーのヘッドギアで顔が隠れている亀。 ……このセンスには脱帽です。 この発想はなかった、というか初めて観る演出だ。 しかし…
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