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三者三様 その③

 

 ───これまた、康太達11人が商業都市アールに到着したのと同日。


 最初の街プージョンの宿を拠点に、修行を行い経験値を集めているのは智恵達───安倍健吾・宇佐見蒼・奥田美緒・菊池梨央・斉藤紬・西森純介・村田智恵・森宮皇斗・山田稜・結城奏汰の10人であった。

 智恵達10名は、6体にまで減った龍種の中の1体───『蠢動する超大陸(プレートテクトニクス)霊亀(れいき)の討伐のため、全員のレベルが30を超えることを目標にしていた。


 ゲームの世界にやってきて16日目の今日、その目標は稜のレベルが30になることで達成される。


「───って、日にちが空いちゃったしこれからのことを確認したいのだけれど」

「よっしゃ、僕に任せるピョン!」

「『山形が生んだ辛辣な野兎』宇佐見蒼、行けぇ!」


 これからのこと───即ち、霊亀(れいき)との戦いに備えている今、智恵は現状の確認を求める。

 それに応えるように、自信満々に手を挙げるのはすっかりレギュラーに昇格した山形生まれ山形育ちのおばあちゃんっ子、宇佐見蒼であった。


「───前回のあらすじ。時は4月1日、帝国大学附属高校に入学した池本栄は」

「ストーップ!そんな最初からじゃなくていい!」

「ボケが典型的すぎる」

 4月1日から池本栄の歩んできた人生を───「Genius Genesis」を1から振り返ろうとした蒼だったが、稜に止められ皇斗にツッコまれる。


「えええ、こんなに前からじゃなくていいピョン?」

「4月から振り返ったら日が暮れちまうよ!」

「うん。第8ゲームが始まったところからでいいかな」

 すっかり弱いと感じるようになった魔獣しか姿を現さないオンヌ平原の真ん中で、ピクニックみたいに原っぱの上に座りながら、コントのような会話が行われる。


「仕方ない。ここは皇斗きゅんに丸投げするピョン」

「───余か?」

「そうだピョン。皇斗きゅんなら得意だと思うピョン」

 そう口にして、ウルウルした目を輝かせながら上目遣いで皇斗のことを見る蒼。

 皇斗は、そのアピールに心を動かされなかったけれども、友達としてそのお願いを聞いてあげる。


「───別に余がやってもいいのなら構わない。前回のあらすじ」


 前回のあらすじ。

 今から2週間ほど前に、智恵がオンヌ平原で魔獣と戦っていたら、龍種の1体である麒麟が乱入し戦闘になるもアレンという名前の男が助けてくれる。智恵に一目惚れしたアレンは、智恵を手に入れるために、麒麟に最後の一撃を与えたものが智恵を所有するというルールで一方的に勝負を挑んでくる。

 勝負はその出来事の1週間後であったので、それは待っていられないと余等20人は10人ずつの2チームに分かれることにした。

 ここにいる10人ではない康太率いる10人は、南西進出組としてイレンドゥ砂漠から、ムーヌと言うを通って、そのまま南のナール海岸・絶崖アイントゥというような順路で余等との待ち合わせ場所である商業都市アールへと進んだ。最近、世間を賑わせている驩兜(かんとう)の討伐を行ったのは康太達であるから、順調そうだ。

 話を戻して、余等は1週間ほど前にアレン率いる『親の七陰り(ワーストヒストリー)』と共に麒麟を撃破。

 最後の一撃ではイザコザが起こったが、紆余曲折を経て智恵を死守することに成功した。

 そして、全員のレベルが目標の30になった今、明日にでも霊亀(れいき)の討伐に動こうとしている。龍種の一体である霊亀(れいき)を討伐する必要があるのは、待ち合わせ場所である商業都市アールへの最短ルートが、霊亀(れいき)のせいで通れないからだ。


「───と、こんな感じだな」

「流石だピョン」

「皇斗、ありがとう」


「───と、明日からか。緊張するなぁ...」

「大丈夫大丈夫。オレがいればなんとかなるから。それに、稜が守ってくれるだろうし」

「防御なら大盾の俺に任せろ」

 梨央が不安そうなことを口にするけれど、麒麟と戦闘を行った健吾が自信満々にそんなことを口にする。


「───と。明日が本番なら今日は早めに戻ろうか」

「賛成。明日に備えておきたいもの」

「余も賛成だ。休養も必要だろう」

「それじゃ、戻ろっか」

 奏汰の提案に、美緒と皇斗が賛成して、宿に戻ることにする。


「───と、そうだピョン。純介きゅん。紬ちゃん。ちょっと僕とお話があるピョン」

 帰路につく雰囲気になっている中で、蒼は純介・紬のカップルに声を掛ける。


「───どうしたの?」

「話って何?」

「ちょっと僕と、悪巧みしようピョン」


 そう口にすると、蒼は美少年のその顔に似合うゲスな笑みを浮かべて、()()()を提案したのであった。


 ***


 ───王都であるプージョンに戻ってきた智恵達7人。

 そこには、蒼と純介と紬の3人の姿はなかったが、居場所はわかっていたので誰も心配していなかった。


「麒麟を倒してからこれまで、かなり一瞬だったね」

「そうだね。ワタシは麒麟討伐に行ってないから余計に短く感じるよ」

 恋人が攫われている智恵と、両片想いの人はいるけど、まだ告白されていない梨央の2人は言葉を交わす。


 ───明日、2体減って全部で6体になった龍種の中の1体、霊亀(れいき)の討伐のために智恵達10名は挑む。


 前回は、レベル50超えの『親の七陰り(ワーストヒストリー)』がいたが、今回は最高でもレベル39の皇斗だ。

 不安はあるが、智恵はその足を止めない。


 ───だって、愛する栄に1分1秒でも早く再会したいから。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
久しぶりの蒼。 相変わらずウザいがそこが良い。 そして皇斗、あらすじ説明うますぎ! 蒼の悪巧みも気になりますね!
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