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海を走る者、海を壊す者 その⑨

 

『無敗列伝』vs光芒の手腕 勝者:『無敗列伝』アルグレイブ・トゥーロード

 細田歌穂vs沈没の怪腕  勝者:『無事故無違反サイコパス』細田歌穂

 竹原美玲vs蒼海の才腕  勝者:『負けん気』竹原美玲


 これまで、手も足も出ず歯が立たないとされていた龍種の中でも屈指の実力を持つ驩兜(かんとう)に対して、好成績を残し続ける勇者一行。

 どれもこれも、『無敗列伝』が光芒の手腕を斬られてた事による生まれた隙と、弱体化が理由で他の足に勝利できているのだが、それを加味したとしても、ここまで驩兜(かんとう)を相手に白星を手に入れ続けることだけでも褒められるべきであろう。


 過去に驩兜(かんとう)と戦った猛者もたくさんいるが、その多くは海中に叩きつけられて首の骨を折っていたり、海に沈められてしまうものも多かった。

 今回、そんな状況に陥ってないのも最初に魔法を武器に戦うことを選んだ3人が、氷の大地を絶えず魔法で生成し続けているからであるが───


「───そろそろ、MPが切れちゃう...」

 沙紀は、MP不足を訴える頭痛に耐えながらそんなことを口にする。実際、3人のMPはほとんど枯渇寸前であったし、このままでは後1分もせずに魔法が使えなくなるような現状に立たされていた。

 そうなっているのも、遠くで皆と戦っている触腕が、いとも簡単に氷の大地を割ってしまうからで───


「お前ら、ここに俺のありったけのMP回復ポーションを置いておく。好きなだけ飲め」

 そう口にして、『無敗列伝』によって置かれたのは6個のMP回復ポーションであった。

 そのまま、『無敗列伝』は康太のいる方へと移動して行った。

 康太は、2本の触腕を相手しているから、助太刀に入るのだろう。


 3人は、MP回復ポーションを2個ずつ取ってその内の1本を飲む。

 紫色を液体で、飲んでも大丈夫か───などという疑問を抱くこと無く、この状況から生き延びるため、縋るように3人はその中の液体を飲み干し、頭痛の解消と、体の奥底からMPが湧いてくるような感覚を覚えて、氷魔法をかけ続ける。

 その冷たさに手の感覚を忘れかけているけれでも、その温度が3人を諦めさせる理由にはならない。

 その手を地面に付け、氷魔法を使用し続ける。それが、3人が驩兜(かんとう)との戦いに貢献できる最大の方法であった。



 驩兜(かんとう)を倒すためにチームを組んだわけでもないのに、ここまで順調に行っている。

 足を3本も切る───だなんて偉業は、有史以来勇者一行が初だと言えるだろう。


 好転し続ける戦闘であるが、気を抜いてはならない。

 ここまで上手く行っていても相手は龍種であり、首都一つを滅ぼしたという言い伝えだって残っている。

 だから、一瞬の油断が命取りになる。


 愛香が戦った晦冥の扼腕は、闇魔法───要するに暗闇や重力を操る触腕であり、暗いところが大の苦手な愛香はその闇魔法により敗北───




 ***



「───するわけがないだろう、阿呆が」

 傷1つ無く、右手に槍を持ち氷の大地に石突を付けた状態で、海の中に晦冥の扼腕が沈みゆくのを見届ける。


「触腕と戦っているのを永遠に繰り返されても飽きが来よう。この程度、妾の敵ではないのだし全編カットで構わない」

 愛香は、根元からバッサリと切り落とした晦冥の扼腕が沈んだのを確認したたら他の戦場を眺めてそう口にする。


 ほとんど同タイミングで、秋元梨花と電霆の敏腕の戦いが、触腕を避雷針とすることで超強力な雷魔法を押し付けて、使い物にならなくさせる───という手段を取って、梨花の勝利で終わっているのを確認した歌穂は、1人で2本の触腕の相手を余儀なくされている真胡の方へ移動していく。


 三苗と互角の勝負をした愛香にとっては、驩兜(かんとう)の10本ある足の1本程度では、苦戦することはない。


「真胡、手伝ってやる。コイツラの魔法はなんだ?」

「愛香ちゃん!風と氷で、霰を弾丸みたいに飛ばしてくる、気を付けて!」

「───気を付けて?それは、誰に向かっての言葉だ」

「え...」

「そっちこそ気をつけろ。言葉ではなく、足場に」


 その直後、自分が立つ氷の大地に、槍で傷をつけて氷の礫を生み出す。

 そして、それを槍を使って烈風の長腕と堅氷の霊腕の方へと飛ばし始めたのだった。


「愛香ちゃん、まさかッ!」

「そう、そのまさかだ。相手が霰を飛ばすのであれば、こちらもそれに対抗すればいい。先に戦った1本は、つまらん魔法しか持っていなかった。戦うのなら、こうやって激しくないと」


 そう口にする愛香は、烈風の長腕と堅氷の霊腕の超スピードの霰攻撃を弾きながら、足元にある氷の礫を2本の触腕の方へ飛ばしてその肉を削っていく。

 そして、ついには槍技である〈縦横無尽〉を駆使して、2本の触腕をも潰してしまったのだ。


「すごい...流石は愛香ちゃんだ...」

 真胡は、手持ちの大盾で攻撃を防ぐことしかできなかったから、素直に愛香に対して尊敬するような声を掛ける。


「───そっちも終わったか」


 真胡と愛香の2人に声をかけるのは、土塊の鉄腕と戦い〈穿ちの矢〉によって勝利を決めた誠であった。

「もちろんだ。こんな足っぽっちが妾を苦戦させる訳無かろう」

「そうか...」


「後は、あそこの戦場だね...」

 そう口にして真胡が指差すのは、康太と『無敗列伝』の2人が、残る2本の触腕───崩壊の剛腕と猛焔の辣腕の2つと戦っている戦場であった。



 長かった触腕との戦いも、後2本で終了する。

 驩兜(かんとう)の足を全て切り落とすのも、もうすぐだった。

梨花と愛香・真胡と誠の活躍をカットしまったのは申し訳ねぇ...

読みたい人がいれば書いて閑話にしますので言ってくださると嬉しいです


次回、康太と『無敗列伝』の戦いを書き終えたらvs触腕編は終わります。


───終わるのはvs驩兜(かんとう)編じゃない??

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
流石、愛香! 期待を裏切らない活躍&ツンデレ。 そして『無敗列伝』がこのままで終わる訳がない。 きっと色んな意味でやってくれるでしょう。
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