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海を走る者、海を壊す者 その⑤

 

「そっちのチームの魔導士3人に告ぐ!驩兜(かんとう)を無視して、なんでもいいから氷魔法をこの地面にかけ続けろ!」


「え、あ...」

「わかりました!」

『無敗列伝』の指示に従って、勇者の10人の内の3人の魔導士───その中でも、唐突に命令されて驚き体が動かないほうが美沙で、すぐに氷魔法の準備をし始めたのが陽斗であった。


 そして、残る1人───蓮也は、〈世界氷結(アブソリュート・)の理(コンプライアンス)〉を全力で発動したことにより魔力切れで失神してしまっている。


「残念だが、蓮也は失神している。動けそうなのは2人だけだ」

「じゃあ魔力回復用のポーションでも飲ませればいいだろ」

「ポーション?そんなの持っていないぞ?」

「はぁ?」

 愛香がポーションを持っていないことに対して、驚いたような反応見せる『無敗列伝』。

 だが、この世界でポーションを常備しておくのは冒険者として当たり前のことだ。


「ポーション持ってないって、お前...今たまたまだよな?たまたま持ってないだけだよな?」

「違う。この世界に来て一度も買っていないし、なんなら拝んだことすらないぞ」

「よくもまぁそんな仏頂面で言えんな!俺のやるから飲ませろ!」


 そう口にして、『無敗列伝』はMPポーションを取り出して愛香に渡す。愛香はそれを、蓮也に飲ませたのだった。


「ん...あれ...」

 少し咳き込むような姿を見せながら、愛香にMPポーションを飲まされて目を覚ますのは蓮也。


「起きたか、ならば働け。氷魔法をこの氷の大地にかけ続けろ」

「え、でも驩兜(かんとう)は?」

「妾達がなんとかする。貴様はそのための足場を他の2人と作っていればいい。わかったな?」

「───わかった」


 そう口にして、他の2人の方へ移動して氷魔法をかけるべく両手をこの冷たい大地に当てる蓮也。


「まだ、問題は解決してないわ。氷の大地の時間制限が伸びたからって、このクラーケンみたいな巨大イカをなんとかしないと生き延びれはしない...」

 歌穂はそう口にして、驩兜(かんとう)のことを見上げている。その頂点を見るには、首が痛くなるほどまで上を見なければ行けず、この怪物を倒すのは難しいだろう。


「───難しいからこそ、倒しがいがあるってものよ!」

 そう口にして、背負っていた斧を両手で握りいつでもどこからでも攻撃できるような体勢を整えている歌穂。


「───と、中々攻撃が来ないね。待っててくれてるのかな?」

「───いや、そんなことは無さそうだ」

 真胡がそんなことを口にするが、康太がそれを否定する。事実、11人が立つ氷の大地は激しく揺れ動いており───


「───出たッ!」

 氷の大地を囲うように、10本の腕が海の中から姿を現す。きっと、先程まで攻撃されていなかったのは触腕を囲うように伸ばしていたからだろう。


「この触腕、全部を相手にしなきゃいけないのか...」

「そうみたいね。対処しないと、氷が割られちゃうし」

「それじゃ、全員それぞれの腕のところに移動しろ!」

「「「了解!」」」

 最年長である『無敗列伝』が、全員にそう指示をして氷の大地を囲うように伸びている触腕を相手にするように命じる。


 だけど、3人の魔導士達は氷の大地の修復に手一杯であるから、触腕の相手をできるのは8人だけだ。

 だが、その肝心の触腕は合計で10本ある。だから、誰か2人が触腕を2本相手にすることになる。


 誰も話し合うこともなく───いや、話し合う時間もなくそれぞれがそれぞれ、触腕の方へ走っていってしまったので、本来であれば勇者達よりも強い『無敗列伝』が触腕を2本同時に相手するべきだっただろう。


 だが、やはり『無敗列伝』は運がない男。

 彼が走り出した方向の左右2つの触腕にも美玲と梨花の2人が移動しており、それを横取りするわけにはいかなかった。


「そうなると、誰か別の人が2本足を対処しなきゃいけねぇが...」

 そう口にして周囲を見渡す『無敗列伝』。そして、目に入ったのは果敢にも触腕2本を相手取ろうと動く康太と真胡の2人。


「───誰にしても不安だな。とっとと、触腕なぎ倒して助太刀に入るか」

『無敗列伝』は、氷の大地を駆け上がりながらそんなことを口にする。そして、一本の触腕の前に移動したのだった。


「───さァ、勝負だ!その足、切り落としてやるよ」


 ───驩兜(かんとう)との本格的な勝負が、今開始する。


 ***


 驩兜(かんとう)の10本ある触腕を「触腕」とだけ表記しても、どれがどの足かわからなくなるだろう。

 実際、このゲームを生きるNPCだってそれは同じであった。


 だから、驩兜(かんとう)の足にはそれぞれ名前が決められているのである。


 左の第一腕から順に、沈没の怪腕・崩壊の剛腕・猛焔の辣腕・蒼海の才腕・烈風の長腕・電霆の敏腕・土塊の鉄腕・堅氷の霊腕・光芒の手腕・晦冥の扼腕と言う名前が付けられているのだ。


 腕の一本一本に見た目の違いは無いけれど第2腕からの8本は、それぞれ1属性ずつの魔法が放つことが可能なようだった。

 龍種として圧倒的な力を持つ驩兜(かんとう)に、勇者一行と『無敗列伝』は勝利することはできるのか───。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
驩兜の腕、何気に凄いですね。 一本一本に名前があり、 それぞれ属性魔法が撃てるのか。 この状況でこの危機をどう打破するか、楽しみです。
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