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4月6日 その④

数字が合わなかったので、スクールダウトのポイントを微修正しました。

 

 第2ゲーム『スクールダウト』の予選2日目が、先生のかけ声と共にスタートする。


 本日はゲームが開始する前から、早々に7人も脱落している。

 そして、残り14人とかなり人数も減っている。8名脱落すれば、6人が決定するのだ。


 現在ダントツ1位なのは俺で、驚異の126ポイントだ。

 渡邊裕翔との殴り合いで勝利し、70ポイント以上を根こそぎ獲得した。


 賭けで負けた人に、恨み節を言われることはなかったからまだマシだろう。


「俺は...どうしようかな...」

 ゲームが開始し、教室に残っている予選敗退者を見渡す。教卓の前には、マスコット先生がいた。


「どうしました?池本栄君。もう、勝ちがほぼ確定しているからって暇ですって?」

「え、あ、まぁ...そうですけど...」

 予選参加者の13人が教室外にいる今、ポイントを奪われるリスクというものはない。


 ポイントが0になった瞬間、予選敗退となるから不死鳥のように舞い戻る───といった展開もありえないのだ。


 そして、俺がこのままポイントを保持し続けていれば脱落になることはない。だから、ポイントを集めたり賭け事に参加したりせずにただ安静にしていればいいのだ。


 マスコット先生は、俺に興味を失ったのか、白板に何かを映し出した。入学式の時のように映像が映ったのだ。


「参加者全員のポイントを投影しておきますね。敗退者も情報がわかれば楽しいでしょうし」


 1秋元梨花  6pt

 4池本栄  126pt

 6宇佐見蒼  14pt

 9菊池梨央 12pt

 10小寺真由美 2pt 

 11斉藤紬  10pt

 18津田信夫 24pt

 19東堂真胡  6pt

 22西村誠  10pt

 24橋本遥   6pt

 30村田智恵 14pt

 31森愛香  32pt

 32森宮皇斗 36pt

 37綿野沙紀  2pt


 画面には、この14人の名前が映し出された。


「知っての通り、1位は池本栄君ですね。ぶっちぎりでつまりませんね、はい」

 先生に睨まれる。


「は、はは...」

 気まずくなった俺は、教室を出てB棟の1階にある保健室に移動した。


 そこには、紬と誠・渡邊裕翔がいた。3人はそれぞれ違うベッドの上にいた。


「大丈夫か、紬?」

「うん...大丈夫そう...だよ...」

 紬はそう言うと、苦しそうに微笑む。


「無理はしなくていいんだからな?」

「うん...わかってるよ...今日は休むつもり...」


「───どうして、殴られるのがわかっていてまで喧嘩を止めたんだ?」

「どうしてって...殴り合うのはよくない...ことだからだよ...」

「───そうか...そうだな。愚問だった」


「栄、やっぱりここか...」

 俺がそう言うと、入ってきたのは純介だった。


「どうしたの?」

「栄が教室を出ていったから僕も付いてきたんだよ。こそばゆかったしね」

「あ、じゅんじゅん...大丈夫だった?」


「それはこっちの台詞だよ!僕のほうが心配したんだから!」

 純介は、紬の手を握る。


「紬を殴るような奴が許せなかった...でも、こんな僕じゃ弱かったから何もできなかった...栄、ありがとう。紬の仇を討ってくれて」


「当たり前だ。純介や紬・誠を殴った人が許せなかった」

「───それと栄...ごめんな。栄の気持ちが少し()()()()()()()()()()()よ。栄の優しさがわかった。そんな気がしてる」

「そうか、わかってくれて嬉しいよ」


 4月3日の午前1時ほどにした会話。俺は、それを思い出していた。


「んじゃ、2人はアツアツのようだから席を外すね」

「ちょ、ちょっとぉ...」

 純介はそんなだらしない声を出していた。2人はアツアツだし、気を使ってあげよう。


 そして、俺は誠の方に行く。

「───栄か」

「よくわかったね」


「こんな狭い保健室だ。声がダダ漏れだったぞ」

 誠はそう呟く。その表情は、無であった。


「誠はどうして、殴るのを止めに入ったんだ?」

「それが正しい行いではないと思ったから。それ以上でもそれ以下でもない。ただ、己の行動に後悔はないよ。それは絶対だ。自分への裏切りなんかでは断じて無い」

「そうか...誠がそう思うならそうなんじゃないかな」


 いつも冷静沈着な誠。彼は決して間違ったような行動はしない。全てを論理(ロジック)に基づいて行動しているのだ。だが、それにより己が傷つく傷つかないは関係ないらしい。


「だが、栄なんかとは同じ種類ではない。俺は、死なないと思ったから行動しただけだ。クエスチョンジェンガのように命がかかっている状況ならば、止めはしなかっただろう...」

 誠は、淡々とそう呟く。


「俺への戒めか?」

「違う。称賛だ。文字通り命懸けの行動に称賛しているのさ。俺には到底できない...流石だよ」

 誠はそう言った。その顔は、笑っていなかった。


「今日一日は休むこととする。おやすみ」

「え、あ、おやすみ───ってもう寝てる...」


 会話をする相手もいなくなったので、俺は保健室の外に出る。



 その日は、その後秋元梨花と綿野沙紀が脱落して終了した。


 俺からポイントを狙う人はいなかったし、俺がポイントを獲得しようと画策することもなかった。




 ───人が死なないゲームで、人が死ぬのは珍しいことではないと明日、俺らは知ることとなる。

残り参加者12人!

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 裕翔、お前はやり過ぎたんだよ。 だからこうなるのは必然だったのさ。 しかし栄は優しいというか甘い。 それが後々に響かないか、心配だ……。
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