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麒麟討伐最前線 その⑨

 

 蒼がアレンとタビオスの2人を煽っているのと同刻。

 後ろ足を蹴られ、思うように動くことができない麒麟に対して攻撃を行うのは健吾と智恵、そしてエレーヌであった。


「〈星屑(スターダスト)斬り(スラッシュ)〉!」

「〈三日月(クレッセント)斬り(スラッシュ)〉!」

「───〈絶断〉」


 健吾が〈星屑(スターダスト)斬り(スラッシュ)〉を行い、麒麟の仮面に攻撃を当てつつ気を引いたところを、智恵が〈三日月(クレッセント)斬り(スラッシュ)〉で右の前足に攻撃を加える。


 そして、エレーヌが〈絶断〉を使用し、完全に麒麟の後ろ足を切り落とした。

 〈絶断〉は、剣を横一文字に振るうだけのシンプルなものであるが、その威力は非常に強力なものである。

 大型の魔獣───魔獣の中でも最強格である龍種の1体である麒麟であるから、後ろ足を切り落とす───という被害で終わっているが、もしこれが普通の人間であったとすれば上半身と下半身はバラバラになっていたことだろう。


「ぬヌぬヌー!」

「うおッ!」

 後ろ足を斬られて、バランスを崩す麒麟。ない脚を動かすようにして、股関節を動かして抵抗しようとするものも上手く行かない。

 健吾は、後方に下がり麒麟の伸びる首を避けた。その首は、健吾なんかには目もくれずにエレーヌの方へ伸びていく。


「───来たか」

 エレーヌは、いつもからは想像できないような真面目な表情をして、紅蓮の髪を翻しながら両手剣を握り直す。が、そこに───


「〈火矢〉」

 麒麟の顔を狙って放たれるのは、皇斗による火矢。純介のDランクの火魔法により火が付けられて、放たれた矢が、麒麟の側頭部に刺さるものの、その火が燃え移ることはなかった。


「ぬヌぬー!」

「効果なし───か」

 皇斗はそう口にして、再度弓を引く。が───


「───健吾、智恵!そこから離れろ!」

「───え?」

「全員潰れて死ね。〈鋼鉄の巨人(ギガント・インパクト)〉」

 皇斗が、すぐに指示を出したと同時、『鋼鉄の魔女』アイアン・メイデンは、1度目は失敗した〈鋼鉄の巨人(ギガント・インパクト)〉を再度使用する。


「パースパスパス。私の毒で弱り、足を斬られている状態であれば押しつぶすのも容易パス。この勝負、思ったよりも早く終わったパスね」

 足を斬られているため、逃げようとしても逃げられない麒麟は、首をだけを〈鋼鉄の巨人(ギガント・インパクト)〉の範囲外に伸ばしたものの、胴体は押し潰されてしまう。


 空中に現れた鋼鉄でできた巨大な腕は、そのまま麒麟のことを押しつぶしたのだった。

「危ない...俺達を殺したら負けとかいうルール無視かよ...」

 健吾は、そんなことを口にして、なんとか〈鋼鉄の巨人(ギガント・インパクト)〉の範囲外逃げ延びたことに安堵する。それは、智恵も同じであった。


「潰せたのは下等生物め。劣等人種は蜘蛛の子みたいに散って逃げたか」

 メイはそんなことを口にして、嘆息を付く。そして、〈鋼鉄の巨人(ギガント・インパクト)〉が霧消すると、そこに残っていたのは潰れて鮮血に染まっていた地面だけであった。


「トドメが...」

「いや、まだだ」

「ぬヌぬヌー」

 そんな声をあげて、まるで蛇のように首を伸ばして地面を這って移動していたのは馬のような胴体を捨てた麒麟の姿であった。


 おかめの仮面を付けた頭と、伸縮自在の首だけの状態で───いや、麒麟のお尻の部分には、丸く大きなものが付いていた。


「───心臓」

 健吾は、ドクンドクンと一定のリズムを刻みながら動くそれを見て、それが心臓であることを理解する。

 麒麟の体は、頭・首・心臓の3つだけ───という、随分と簡略化された形になっても尚生きているのだ。


「───これが、麒麟の最終形態か...」

 蒼と話していたはずのアレンが、麒麟の方を見に戻ってきたのかそんなことを口にする。そして───


「ここまでして生きているのなら、狙うのはやはり心臓だろうな」

 そう口にして、アレンは弓を引く。そして───


「〈夢幻の蒼穹(エンドレス・アトラス)〉」

 アレンが放つ1本に付き従うように、空から大量の弓矢が飛んでくる。そして、心臓に突き刺さる───


「───ッ!?矢が通用しない?」

 大量の弓矢が、麒麟の心臓の周囲にドサドサと降り注ぐものの、その全てが突き刺さることはない。


「では、私のナイフが突き刺すパス!」

 そう口にして、ナイフを投擲するパーノルド。だが、そのナイフは肉に食い込まずに落ちてしまう。


「んなッ!ナイフも刺さらないパス!」

「どうやら、首と同様硬いものは通らないみたいだな...」

「そうだね」

 皇斗と純介の2人は、見ることによって事実を確認する。


「でも、刃物が通らないんじゃどうやって勝てばいいの?」

「さぁな...」


 ゲームのボスとして、きっと麒麟が一番最初に立ちはだかる敵になるだろう。

「最初の1体くらい楽々倒せてくれてもいいんだが...流石は最強がいくら集っても倒せない最強種か...」

「───と、お二人様。失礼するピョーン」


 皇斗と純介の2人の間に入ってきたのは、散々アレンとタビオスの2人を煽った蒼であった。

「どうした?蒼」

「前回の戦闘から考えてたんだけど、僕に一つ作戦があるピョン」

「作戦?」

「うん。ピョンピョンピョンなんだけど...」

「───試してみる価値はありそうだな。それを智恵と健吾にも共有してくれ」

「了解だピョン!」


 そう口にして、ピョーンと2人のいた岩の上から降りて智恵と健吾の2人の方へ移動する蒼。

 蒼が見据えた勝ち筋。


 アレンよりも先に勝利し、智恵をアレンに奪われない筋道を手に入れることはできるのか───。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
麒麟、相変わらず戦いにくい。 そしてここで蒼の作戦。 これは意外な者が勝利の方程式を立てそうな予感。
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