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麒麟討伐最前線 その④

 

 翌日午前9時。


「それじゃ、行ってくる」

「応。健吾、頑張れ」

「もちろん!」


「智恵ちゃん、帰ってきてね!」

「もちろん、アレンなんかには負けないよ」


 健吾と蒼・純介・智恵・皇斗の5人が装備を固めて宿を出発するので、今回居残り組の5人───美緒・梨央・紬・稜・奏汰の5人はお見送りをしていた。


「蒼も、ちゃんと頑張るんだよ?」

「わかってるピョン!僕は選ばれなかった奏汰きゅんとは違って選ばれたから、ちゃあんと活躍してくるピョン」

「あのなぁ...」

 きっと、蒼が周囲の人物を煽るのは日常茶飯事なのだろう。奏汰は、大した怒りも見せずにやれやれと言わんばかりに、その首を振った。


「───安心しろ。蒼が脱兎のごとく逃走を図っても余が戦闘に連れ戻す」

「蒼の保護者役を頼むよ」

「僕は奏汰きゅんのことを家族だなんて思ったことはないピョーンだ」

 蒼は、奏汰に対してあっかんべーをするけれども、奏汰も皇斗も気にしている素振りは見せない。

 蒼を無視したほうが話が進みやすいことに気が付いたのだろう。


「それじゃ、行こう。アレン達に早とちりされて帰られちゃ困るし」

 智恵がそう口にして、先陣を切って歩く。思えば、麒麟討伐に選ばれた5人のメンバー唯一の紅一点であるが、一番勇敢なのはきっと智恵だろう。

 恋人である栄が誘拐され、ナヨナヨしているのではなく、自ら率先して動いているからこそ、他の皆も付いてきてくれる。


「───皆、勝とう。アレンなんかじゃ、私と栄は切り裂けないって、証明してやるんだ」

 智恵のそんな宣言。その瞳に、曇は何一つとしていなかった。


 ───負けるなんかこれっぽっちも思っていない瞳をしていた。


 ***


 プージョンの街からそのままオンヌ平原に出て、そのまま西へ直進したところにあるピンナム高地。

 レベル15から20前後が適正レベルとなっているピンナム高地には、レベル50が束になっても倒せないとされている龍種の1角・麒麟(きりん)が住んでいるとされており、今回はその討伐に挑むのだった。


 そんなピンナム高地に到着したのは、宿を出てから約3時間。

 時計の針が両方真上を指した時間に、智恵達5人はアレンとの待ち合わせ場であり、麒麟との決闘の場でもあるピンナム高地へと足を運ぶ。


「───まだ、来てないみたいだな」

「そうだね。少し待とうか───」

「待っていたよ、チエ。愛してるよ、会いたかった」


 智恵達が、待とうとしたその時、バックハグをするかのようにして後方から智恵を抱きしめようとしたのはアレンであった。

 智恵は、背中にやって来た不快感を直感で感じ取って、咄嗟に前方に飛んで避ける。


「おいおい、折角の再会なのにハグもさせてくれないのかい?いけずだなぁ」

「私はハグをしたくないもの。少なくともアナタとは」

「ははは、僕も嫌われたもんだね。いや、嫌よ嫌よも好きのうち───ってところかな?」

「嫌で嫌で仕方がないのよ。それだけが確か」

「───そうか。でもいいよ。僕は絶対にチエを振り向かせる。チエの彼氏以上にカッコいいってことを思わせてやるさ『【(「《ほら、こんな風にね》」)】』」

「私は虚栄を張らない人が好きなの。どれだけカッコつけても無駄よ」

「───あっそ」


 アレンと智恵は言い合うけれど、どうやら智恵の方が一枚上手だったようだ。

「───付いてきて。僕の仲間が、残りの4人はもう先行してる。『閃光』以外が先行してる。麒麟の住処まで行くよ」


 アレンはそう口にすると、その銀髪を翻して中へと歩いていく。智恵ではなく健吾を先頭にして歩いた。


「───良いやつか嫌なやつかわからないピョンね...」

「ポーションの買い占めをするようなやつだよ。いいやつだとは僕は思わないな」

 蒼と純介が後方でそんなことを喋っているのを、皇斗はただ黙って聞いていた。


「───そうだ、自己紹介をしてくれないかい?チエ以外の名前を覚える気は無いけど、一応聴いておいた方がいいだろうからね」

「覚える気が無いんじゃ、オレ達が名乗ったところで無駄じゃねぇか」

「早く自己紹介をしてくれないかい?」

「───ッチ、健吾だよ」


 名前を覚える気どころか、会話をするつもりさえ無さそうなアレンを相手にするだけ無駄だと察した健吾は、舌打ちをしてから自分の名前を名乗る。


「皇斗だ」

「蒼だピョーン」

「純介です」

「あんまり可愛くない名前だね。君達にピッタリだ」


 息をするように失礼なことを口にするアレンに、一同は苛立ちを見せる。

 そして、無言で歩くこと15分。ついに一行は、麒麟の住処の近くまで到着したのだった。


「待たせてすまない。到着したよ。4人共、出ておいで」


「遅いぜ、『閃光』さんよぉ?」

 と、背中に大きな斧を背負った筋骨隆々とした大男が。


「パースパスパスパス。仕方ないパスよ、アレンの変態趣味は治んねぇパス」

 と、目の縁を緑色に塗り長い舌を口から出した黒髪でヒョロヒョロの男が。


「ワタシには欲情しないのか?なぁ、ワタシに欲情はしてくれないのかぁ!?」

 と、大きな鎧に身を包んだ紅蓮の髪を持つ剣士の女性が。


「静かにしてください。同じ女性として恥ずかしいです。劣等人種」

 と、黒くてつばの広い三角帽子を被ったアレンと同じ銀髪の髪を持つ女性が。


 それぞれ、そんなことを口にしながら出てくる。

「お、おぉ...」


 健吾が、そのキャラの濃さでビックリしている中で、アレンはこう口にする。


「どうせ死ぬ君達に紹介しても無駄であることは承知の上で紹介するよ。これが僕の所属する『親の七陰り(ワーストヒストリー)』のメンバーさ」

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
『親の七陰り』。 気になるワードですね。 面子も濃いキャラばかり! これは只では済まない予感!
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