表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

591/746

冒険の始まり その④

 

 ───始まりの街 プージョン。


 ドラコル王国の王城があり、第一首都として機能している王国随一の大都市。

 100万を超える人工を抱えるプージョンには活気に満ちており、今日も多くの冒険者達が、まだ見ぬお宝を求めて旅に出ていた。


 そんな人に溢れたドラコル王国の中を探索しに足を運ぶのは、地球から来た異世界人───もとい、ゲームであるとP(プレイヤー)C(キャラクター)などと呼ばれる第5回デスゲーム参加者。


「───それで、俺達は街で聞き込みをすればいいのか?」

 そう虚空に問いかけるのは健吾。周囲には恋人である美緒や稜・純介に紬、智恵と梨央がいるけれども、誰もその問いかけに答えない。


 健吾は無視をされている───というわけでも、これは健吾の独り言だ───というわけでもない。

 これは無視されているわけでも、独り言だというわけでもない。


 ───要するに、周囲にいる6人以外に、虚空には何かいるのだ。


「はい、そうです」

 そう返事をして、姿を顕現させるのは羊の姿をしたマスコットのような存在。ファンタジーに表現するのであれば、妖精───が正しいだろうか。


「本来のゲームであれば、そのまま旅を始めるのですが、これはデスゲームの第8ゲームとして利用されているもの。ゲーム版とは仕様が違います。よって、NP(ノンプレイヤー)C(キャラクター)への話し合いが必要です」


 その羊の姿をした妖精は、健吾の前をフワフワと浮きながらそんなことを答える。

 誰も、この羊の姿には驚いていなかった。


 ───だって、見慣れていたのだ。


 4月1日に学校に来てから、ずっとスマホの画面にいるのがこの「コン」と呼ばれるコンシェルジュの「コン」であった。AIが使われているのか、話せば返事をするし、歌も歌える。結構、上手い。


 そんなコンが、ゲームの世界には登場したのだ。それが、守護聖獣と表現すればいいのか、守護霊と表現すればいいのか、幽波紋(スタンド)と表現したらいいのかはわからないが、こうしてゲームのいろはや設定を教えてくれるのだ。


「私は戦闘どころか、荷物持ちにすらなれません。ゲームのヘルプのような存在ですので、よろしくお願いします」

 そんなことを口にして、自由行動を始めた7人の前に1人1匹ずつ───と言った形で、唐突に姿を現したときこそビックリしたが、それでも数秒後にはスマホで見慣れた「コン」であると知って、もう既に打ち解けていた。


「誰に話しかければいい───とかはあるんだ?」

「どなたに何を聞いてもらっても構いません。知っているかどうかは別として───ですけれどね」

 コンは、淡々とそう口にする。


「───と、そうだな。適当な人にでも話しかけてみるか」

「そうだね」

「あ、じゃあ俺が行こうか?」

「稜、頼んだ!」


 稜はそう口にすると、適当に歩いている人に声を掛ける。


「すいませーん」

「は、はい。どうかしましたか?」

「プラム姫のこと───知ってますか?」

「もちろん。可愛そうだよね、『古龍の王』に誘拐されたみたいで」

「知ってるなら、詳しく聴かせてほしいです!」


「プラム姫は国王陛下の娘で、この国唯一の姫様だ。だけど、1年くらい前に『古龍の王』に誘拐されたみたいで...何度か挙兵しているみたいだけど、全部駄目だったみたいでね。今は、冒険者に『プラム姫の救出』という依頼を出して大金を掲げているらしいよ。ま、僕は戦えそうにないから行かないけどね」

「ありがとうございます!それで、その...『古龍の王』について教えてもらっても?」

「いいけど...君達何にも知らないね。田舎から来た冒険者なのかい?」

「まぁ...そんな感じですね」

「幼馴染7人で、こうしてここまで」


 稜は、自分達が「転移者」であることを隠すことを選んだ。きっと、話がこじれることを避けたかったのだろう。咄嗟に、美緒もそれに反応して的確なフォローを入れた。


「そっか。死なないように頑張ってね。それで、『古龍の王』の話だったね。僕も詳しくは知らないんだけど『古龍の王』は、龍種の頂点に立つ最強の人物だ。どんな顔かは知らない。だけど、ヤコウだとも呼ばれているらしい」

「ヤコウ...」

 国王陛下も呼んでいた、その名前を稜は反芻するように呟く。


「それで、龍種は全部で8体いるらしいよ。───僕が話せるのは、このくらいかな。ごめんね、情報が少なくて」

「いえいえ、ありがとうございます!こっちは何も知らない田舎者でしたから」

「役に立てたのなら何よりだよ。もう話はこれで終わりかな?」

「はい」

「それじゃあね」


 そう口にすると、話を教えてくれたお兄さんはどこかに歩いていいった。


「龍種は全部で8体───か」

「ゲームならきっと、全部倒すんだろうな」

「随分とメタ的な推理だけど...そうなると思うわ」

「8体か...全員で協力すると1体当たり何人だ?」

「21人いるから、だいたい1体当たり2.6人ね」

「うわ、マジか...名前から聞いて強そうだが、1人2体は最低でも戦う必要がありそうだな...」


 そんなことを話しながら、情報収集を続ける稜や健吾達7名。

 ファンタジー世界のような作り込まれた町並みを見て回り、色々とゲーム内の世界についての情報を手に入れたところで夕方が来たので、待ち合わせ場所である王城前へと戻っていったのであった。

読んでて「第8ゲーム、長くなりそうだな...」って思った?


奇遇だな、俺も書いてて思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨城蝶尾様が作ってくださいました。
hpx9a4r797mubp5h8ts3s8sdlk8_18vk_tn_go_1gqpt.gif
― 新着の感想 ―
コン、妙な既視感が(笑 なんかハンターのGIを思い出しますね。 でも読み手でなく、書き手となると、 こういうゲーム世界の描写って大変そう。 後、自分も必ず長くなると思います!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ